大病が発覚し大手術を行なっても、それを克服して元気いっぱいに活動する人は少なくない。彼、彼女たちはなぜ見事なカムバックを果たしたのか。その秘訣は“食”にあった。手術後に食した感動の味、“術後メシ”にスポットを当て、食と健康について考える当連載。お笑いタレントでYouTuberの宮迫博之氏も、がんで胃の3分の2を切除しながら、思い出深い、ある術後メシに救われた。〈前後編の前編〉
6年ぶりの人間ドックで初期がんと診断され…
今でこそチャンネル登録者数122万人を抱える人気YouTuberとして、日々、さまざまな企画に挑戦している宮迫さんだが、それも健康な体があってこそ。じつは彼は生存率が極めて低く、完治が非常に困難と言われる「スキルス胃がん」を患うも、“3つの幸運”が重なったことで生還していたのだ。
「はじまりは2012年11月上旬だったと思います。雨でドラマの撮影が2日間飛んでしまった。すごく忙しかったなかで急に連休ができて、何もすることがなかったんで人間ドックを受けてみることにしたんです」(宮迫さん。以下同)
当時42歳。人間ドックにはその6年ほど前に「ぐるぐるナインティナイン」の企画で受診し、健康そのものと診断されて以来だった。何か違和感など前兆はあったのだろうか。
「まったくないです。ただ、年齢も年齢でしたしね。それで、マネージャーに人間ドックの予約をしてもらったんですけど、手違いで胃カメラではなくバリウム検査になっていて……。
知識としてバリウムでは細かいことまでわからないことを知ってたんで、『胃カメラをやる気満々で来てるんです。最後まで待ちますから、なんとか受けさせてください』とお願いしました。そうしたら、その日のクリニックはとても混んでたんですが、ある先生が『アメトーーク!』のファンで、休憩なしで対応してくれることになったんです」
診断結果は書類で届くはずだったが、病院に呼び出されて明かされた病名は初期の胃がん。ただ、初期のため内視鏡で簡単に取り除けるという話だった。
人間ドックを受けたクリニックに紹介してもらった病院に向かっている途中、宮迫さんはふとあることを思い出す。
「『セカンドオピニオンが大事って聞いたな』と。それで、知り合いのお医者さんに電話で事情を説明したら、手術を受けようとしている病院はベッドが空いてないとオペが1~2ヶ月先延ばしになるということでした。
ドラマの撮影もあるし、それは困るからとその知人から別の先生を紹介してもらいました。それでその先生に胃の写真を見せたら、『これ、本当に初期がんって言われました?』とすごく表情が険しくなって……」
再検査をして、後日、医者から「“いいお話”と“悪いお話”、2つありますが、どちらから聞きますか?」と告げられる。
3つの幸運が救った宮迫の命
まず“悪い話”を選択した宮迫さんに下された診断結果は初期がんではなく、「スキルス胃がん」だった。非常に危険なタイプのがんで、もちろん内視鏡で取れるようなものではない。
「“スキルス胃がん=死”というイメージだったんで、頭の中が真っ白になりました。椅子に座っているのに、世界が歪んで倒れそうになるくらい気が動転したのを覚えてます」
しかし、医師は続ける。
「『ただ、スキルス胃がんはこんなに早く見つかることはまずありません』と。僕の胃の写真には胃潰瘍の影があって、その中心につまようじの先でつけたような赤い点がありました。それがスキルス胃がんだったんです。
先生いわく、この段階でスキルス胃がんが見つかることはまずないということでした」
“サイレントキラー”の異名を持つスキルス胃がんは、表面に広がっていく通常の胃がんとは異なり、見つけづらい上にすさまじいスピードで胃の内部に進行していくのが特徴。発見時にはすでにリンパ節に転移していることが少なくなく、そうなると寛解は絶望的。宮迫さんのスキルス胃がんは幸いなことにまだごく初期段階だった。
「すぐに取りましょうということで、2週間もかからずオペができました。ただ、当初は胃の3分の1を摘出の予定だったのが、やはりスキルスは転移が怖いということで3分の2を摘出することになった。
術後も不安でしたよ。転移してたら終わり、最悪のケースが頭によぎってそれまでなかなか眠れない日々だったんでね。数日後の病理検査で再発なしという結果が出て、妻とふたりでホッとして気が抜けました」
ドラマの撮影が雨で中止にならなかったら、胃カメラにこだわらずバリウム検査のみで帰っていたら、セカンドオピニオンを受けていなかったら……3つの偶然のうち、ひとつでも欠けていたら…?
「たぶん半年で死んでたでしょうね。ただのラッキーですけど、そのラッキーには感謝してもしきれません」
とはいえ、術後は胃の3分の2を失っている状態。復食への道は簡単なものではなかった。

