
「ずっと頭にあります」ベルギー2位クラブで20歳日本人FWが日進月歩の大進化!“ラッキー”の一言では済ませられない真の凄み【現地発】
PSVの名将ペーター・ボスは「連敗しないこと。それが強豪チームの条件だ」と語る。その言葉を信じるならば、現在ベルギーリーグ2位に付けるシント=トロイデン(STVV)は強豪チームの名に値する。前節、シャルルロワに0対2の零封負けを喫した彼らは2月6日、ウェステルロー相手に4対0の快勝を収めた。
この試合でMF山本理仁がキャリア初のマルチゴールを決めた。10分、MF伊藤涼太郎の蹴ったCKをDF谷口彰悟がニアで合わせ、その裏でフリーだった山本がシュートを決めてSTVVが先制。2対0で迎えた39分には、相手GKのキックミスをFW後藤啓介が拾って山本に繋げ、ダメ押しゴールを蹴り込んだ。
テクニシャンのイメージだった山本は今季、『闘うMF』に大変貌。攻守に渡って幅広く奮闘しながら、90分間フルに戦うスタミナも付けた。さらにウェステルロー戦ではゴールシーン以外でも積極果敢にシュートを放ち、一段階、レベルアップした姿を見せつけた。
「なんか僕のところにボールが来ることが多かったので、正直、ハットトリックできたかと思ってます。だけどまあ、2点で良しとします(笑)」
なぜか自分のところにボールが来たという言葉とは裏腹に、ピッチの上では意欲的にボックス内に走ってゴールに関わろうとする山本の姿があった。
「そうですね。分析で『クロス(の処理)は相手のウイークポイント』だと分かったので、しっかり(相手ボックス内に)入っていくことを意識してました」
過去シーズン1ゴール・1アシストが最高だった山本は、今季すでに4ゴール・5アシスト。シーズンの深まりとともにキャリアハイを更新中だ。
後藤は82分、GKとの1対1を冷静に左足で決め、チームの4点目を記録した。一度はオフサイドの判定で認められなかったゴール。それでもオフサイドに細心の注意を払った走り込みが決め手となって、VAR判定でゴールになった。
「ちょっと先に出ちゃってオフサイドになりがちな場面でした。10番(MFセバウイ)が自分を向いた瞬間、『絶対、俺に出す』と思ったので一瞬止まってから(オフサイドになる可能性を減らして)、ラインの横を走る感じで自分のスペースを作り、スペースを作ったことでシュートコースもできた。あとは流し込むだけでした」
今季前半戦、後藤は「オフサイドを取られがちだったので、反省しないといけない」と言っていた。
「それはずっと頭にあります。それで自分自身、5点を失っているので。そういうのに気をつけたのが結果に繋がりました」
山本が決めた3-0のゴールは、後藤が相手GKに詰めたところ、ミスキックを誘発してから生まれた。
「あれはラッキーというか。あんな足下に(相手GKから)ボールが来るとは思ってなかった。その後の反応を早くできて、しっかり(山本にボールを出せた)。あそこでエゴを出して撃つこともできましたが、理仁くんがフリーでしたし、勝利のためにいい選択ができたと思います」
確かにラッキーだったかもしれない。しかし献身的に相手GKとDFにプレッシャーをかけ続ける今季の後藤の姿を見ていると、ラッキーの一言で済ますわけにはいかない。後藤がゴール間近まで詰めていたからこそ、相手GKのミスキックがクリティカルなものになった。
前節のシャルルロワ戦ではベルギーメディアが「STVVは怒っても構わない」と報じたほど、40分にFWアルブノール・ムヤが退場したシーンは国内で物議を醸した。その悔しい思いから1週間。しっかりSTVVは連敗を阻止した。アウェー席を埋めたSTVVサポーターに思いを馳せながら後藤は語る。
「サポーターがアップ前からアウェー席を埋めました。選手だけでなく、クラブ、ファン&サポーターが全員、同じことを思っている。それが今の強さの秘訣です。良いサッカーをしていたのに前節、ああいう納得いかない結果になったのは、僕自身悔しかった。悔しすぎて2日くらい眠れませんでした。あの負けからしっかり4点取れたこと、そして前半戦でウェステルローに0対3でやられていたので、しっかりその借りを返せたのは大きかった」
前半戦の0対3。負傷明けのDF谷口のコンディションはあの日、まだ戻り切っておらず、FW坂本一彩に技ありのアシストを許してしまった。あれから約5か月、伊藤の蹴ったCKを2度、ヘッドで後ろに流し、山本の先制弾とMFアブドライェ・シサコの2-0弾に大きく関与。55分には坂本のドリブルを完璧なスライディングで止め切った。
そのほかにも、味方のチャンスに繋がるようなパス。巨漢FWに当たられて体勢を崩しそうになりながらも踏ん張ってデュエルに勝ち切る強さ。圧巻の空中戦など、さまざまな好シーンを披露した。そんな谷口のことをワウター・フランケン監督は試合後、絶賛した。
「今日の谷口彰悟は最高。オン・ザ・ボールの落ち着き、局面の打開策、ひときわ光る守備力。現地点でベルギーリーグ最高のセンターバックだと、わたしは思う」
レギュラーシーズン24節を終え2位のSTVV。後藤に「優勝争いを楽しめてるか?」と尋ねた。
「楽しいです。だけど自分たちはチャレンジャー。この時期大事なのは、いかにプレーオフ1に入った時に、勝点差を広げることができるか。そのために一戦一戦、全力で闘う。前節勝っていれば6連勝になっていたはず。シャルルロワ戦は負けましたけれど、内容的に勝ったと思っているので6連勝中だと思って、10連勝ぐらいいきたいですね!」
シャルルロワ戦の負けは一歩後退。そして今回のウェステルロー戦で勝って2歩前進。STVVの成長をそうとらえていいのだろうか? 「いえ!」と後藤はキッパリ続けて言い切った。
「俺たちは1試合1試合、前に進んでます。下がることはない。その結果が今日の“4対0”ですので!」
取材・文●中田 徹
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