【何者でもない、惑う女たちー小説ー】
【戸塚の女・塚本優梨愛29歳#2】

(写真:iStock)
奈江は、かつての遊び友達で恋敵の優梨愛の新居を訪れる。誰もが振り向く華のある優梨愛だったが、結婚と出産を経て所帯じみていた。結婚相手も凡人、新居も郊外。奈江は育児に奮闘する彼女を見て優越感をおぼえるのだった。【前回はこちら】
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UberEatsが「贅沢」って?
優梨愛が寝室からリビングに戻ってきたのは30分後だった。
「ベビちゃん、お昼寝しちゃったから、しばらくはのんびりお喋り出来るよ」
彼女はすぐにタブレットを目の前に立ち上げ、赤ちゃん見守りアプリを開いた。どこがのんびりなのだろうか、と奈江は心の中でツッコむ。
「ねえねえ、お昼食べてきてないよね。せっかくだし、贅沢しない?」
優梨愛は奈江の横に座ってUberEatsのアプリ画面を見せた。
「ピザとポテト、あと、ケンタッキーも頼んじゃおう」
贅沢の価値観に驚きつつも、ワクワクしているところに水を差すのも気が引けた。せめてもの気遣いで奈江は同じようなテンションで盛り上がるふりをしてあげた。
「う、うん。おいしそうだね」
聞けば、今は外食どころかテイクアウトや宅配が貴重な機会だという。価格もあるが、それ以前に、赤ちゃん中心の健康的な食生活だからだとか。ジャンクフード自体食べる機会はほぼないらしい。
