大会会場における役割分担
テクニカルコーチは、自分が担当している選手を中心に技術を指導するが、大会現場ではチーム全体で連携し、情報共有しながら瞬時にベストの判断をしていく。
モーグルのテレビ中継をみると、大会現場でスタートエリアとゴールエリアに立っていることを視認できる。その役割分担はどうなっているのだろうか?
「通常練習や公式練習のときは、ゴールエリアから見ています。コーチがスタートに立つのは大会が始まってからですね。常に選手とふれあい、スタートを切るまでの気持ちの持っていき方をベストなかたちにできるようサポートします。
普段からその選手を指導しているコーチが、スタート時に横にいたほうが、選手は安心できます。いまの体制ですと、スタートにいるのは島谷コーチと遠藤コーチです。
また、大会で送り出すまでのプロセスを見ることで、普段の練習では、大会でのスタート時をイメージしたメニューを組み立てることができます。『あのとき、スタートラインでこうだったから、練習でもこういう心構えでいこう』といったアドバイスができるわけです」

ただし、ヤンネ・ラハテラコーチはやり方が違う。
「ヤンネだけはすこし違っていて、『俺はスタートに立たなくてもわかるんだ』と言いながら、ゴールエリアから全体を見て戦略を考えています。普段は自分が直接見ていない選手も含めて、的確なアドバイスを送る。それがヤンネのスタイルですね」
スタートとゴールとでは得られる情報が異なる。それを共有して瞬時に適切に判断することが最良の結果を生む。
「私も現場に行ったときもそうするのですが、ゴールエリアでいろいろな選手の滑りをみて、ジャッジの点の出し方をチェックする。そして、『今日はこういう傾向だ』、『この選手はこういう点を出している』とか、そうした情報をスタートのコーチに送ります。
ヤンネは直接、堀島と『決勝でどういう滑りをする』とか、『次はこうしよう』と話をする。それを上の遠藤コーチに共有し、確認すると、遠藤コーチはエアも見られるので、『飛ぶ方向はこうしよう』とか、『スピードがこうだったから抑えていこう』と微調整して送り出します。このように、いまはコーチ内での連携はとてもうまくいっています」
エア台の横にコーチがいる体制に
バラバラのようでいて、いざという時はチームとして一体になって戦う。これが実現できる日本チームは強くなるのが必然ともいえる。
さらに今シーズンより、現場のフォーメーションが強化されている。
「スタートエリア、ゴールエリアだけではなく、2つのエア台の近くにそれぞれ専属のコーチがいるのが理想です。至近距離でエアをチェックできれば、より適切なアドバイスを送れますからね。
ただ、他の国でも予算などの問題でそこまでできていない場合が多いんです。そんななか、日本は今シーズンからエアの指導が得意な、谷口コーチ、舘田コーチをエア台のそばに立たせる体制を組むことができるようになりました」
城コーチが現場を離れても、スタート、第一エア、第二エア、ゴールと4つの関所にコーチが立つフル体制を敷けることで、総合的な指導体制は確実にアップするのだ。
