
朝食を甘い菓子パンやドーナツで手軽に済ませる方は、多いかもしれません。
しかし兵庫県立大学の最新研究によると、こうした高脂肪・高糖質の朝食は、仕事や勉強に必要な「脳の働き」を、むしろ鈍らせてしまう可能性があることが分かってきました。
朝食の内容が、脳の覚醒状態や認知機能にどのような影響を及ぼすのかを詳しく見ていきます。
研究の詳細は2025年11月10日付で学術誌『Food and Humanity』に掲載されました。
目次
- 朝食が切り替える「脳と体のモード」
- 甘い朝食で低下する「計画力」
朝食が切り替える「脳と体のモード」
私たちの体は、自律神経によって無意識のうちに調整されています。
活動に向かうときに優位になるのが「交感神経」で、心拍数を高め、脳を覚醒状態に導きます。
一方、「副交感神経」は体を落ち着かせ、休息や消化を促す働きを担っています。
研究チームは、朝食の内容がこの自律神経のバランスに影響するのではないかと考えました。
実験では、女子大学生にエネルギー量が同じ二種類の朝食を摂取してもらい、食後の生理反応と認知機能を比較しました。
一つはご飯や魚を中心としたバランスの取れた和食、もう一つはドーナツと甘味飲料からなる高脂肪・高糖質の朝食です。
その結果、和食を食べた後は体温や心拍数が上昇し、体が活動モードに切り替わる反応が確認されました。
これは交感神経が活性化したことを示しています。
一方で、甘い朝食を摂取した場合、体はあまり活性化せず、副交感神経が優位な「休息と消化」の状態に傾いていました。
甘い朝食で低下する「計画力」
この生理的な違いは、脳の働きにも影響していました。
参加者は食後に認知テストを受けましたが、高脂肪・高糖質の朝食を食べた後では、複数のルールを切り替えながら処理する「タスク切り替え能力」が低下していたのです。
この能力は、仕事の段取りを考えたり、状況の変化に対応したりするうえで重要な認知機能です。
主観的な感覚にも違いがありました。
和食を食べた後は「活力が高い」と感じる人が多かったのに対し、甘い朝食の後では「眠気」を訴える傾向が強まりました。
糖分による即効性のエネルギー補給が、必ずしも脳の覚醒や集中力には結びつかないことが示唆されます。
研究者らは、炭水化物の種類やタンパク質量の違いが関係している可能性を指摘しています。
ご飯に含まれる多糖類は消化が比較的ゆるやかで、タンパク質は代謝時に熱を生みやすい栄養素です。
こうした要素が、体温上昇や覚醒感の維持に寄与したと考えられます。
この研究は、「朝食は食べれば何でも同じではない」ことを改めて提示する結果です。
高脂肪・高糖質の朝食は、体を一時的にリラックスさせる一方で、仕事や勉強に必要な認知機能を十分に引き出せない可能性があります。
朝のパフォーマンスを高めたいなら、カロリー量だけでなく、朝食の中身にも目を向ける必要がありそうです。
参考文献
A high-sugar breakfast may trigger a “rest and digest” state that dampens cognitive focus
https://www.psypost.org/a-high-sugar-breakfast-may-trigger-a-rest-and-digest-state-that-dampens-cognitive-focus/
元論文
High-fat, high-sugar breakfast worsen morning mood, cognitive performance, and cardiac sympathetic nervous system activity in young women
https://doi.org/10.1016/j.foohum.2025.100900
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

