
「仮面ライダーガッチャード」(2023~2024年テレビ朝日系)の主演で注目を集め、着実に俳優としての階段を駆け上がっている本島純政。2025年はエリートサラリーマンから癖の強いオタク役までさまざまな役どころに挑戦し、表現の幅を大きく広げた一年となった。そんな彼が出演する最新作は、ゆりやんレトリィバァが初監督を務めた映画「禍禍女」(2月6日〈金〉公開)。自身のパブリックイメージを裏切るキャラクターをどのように作り上げたのか、その制作エピソードをじっくりと聞いた。さらに、初舞台となった『光が死んだ夏』での葛藤と成長、21歳を迎えた現在の心境についても等身大の言葉で語ってもらった。
■自分なりに拓哉のバックボーンを考えて落とし込むようにしました
――映画「禍禍女」の撮影は、2024年夏頃だったとお聞きしました。
そうなんです。「仮面ライダーガッチャード」が終わって、ドラマ「未成年〜未熟な俺たちは不器用に進行中〜」の撮影が始まる前でした。オーディションで選んでいただいた役になります。
――台本を読んだ感想はいかがでしたか?
ゆりやん監督の恋愛体験がホラーに落とし込まれた作品で、そういうジャンルを演じること自体がまず楽しみだなと思いました。「仮面ライダー」では明るくて真っすぐな役でしたが、「禍禍女」で僕が演じる高校生・阿久津拓哉はその真逆というか。性格が結構どぎつい感じで、これはチャレンジングな役になるなと感じました。
――拓哉は、恵まれた容姿を持つだけでなく、サッカーも得意なモテモテ男子です。
はい。ただ、映画を見てもらったら分かるのですが…“なかなかの役”なんです。ゆりやん監督からはシンプルに「ひどい男であってほしい」と言われました(笑)。あと、現場で何度か言われたのは「もっと落ち着いて、“間を”とって芝居していいよ」ということです。その“間”から生まれる恐怖があるから、それを大切にしてほしいと。現場では、ただ単に“間”を空けるのではなく、その間に拓哉が何を考えているのかも自分なりに想像しながら演じていました。
――一足先に作品を拝見して、その“間”が効果を発揮するシーンが強烈に頭に焼き付いています。ネタバレになるので詳細は控えますが、とにかく驚きました(笑)。
分かります。あのシーンですよね(笑)。パパッとやるよりも、ゆっくり、ぐわ~っと時間をかけることで、見る人にも染み渡るものがあるといいなと。「仮面ライダー」では“自分の気持ちをいかに出すか”を主に意識していたので、今回のような“見る人を意識して芝居する”感覚は新鮮でした。このシーンを見る方がどう思うか――それを客観的に見る目ももっと鍛えないといけないなと思いました。
――拓哉のギャップを、絶妙に表現されていたと思います。
ありがとうございます。ギャップはかなり意識した部分だったので、そこが際立っていたならうれしいです。

――“ひどい男”が滲み出るセリフは、表現に悩むこともありましたか?
最初は正直、“なぜこんなひどいことを言うんだろう?”と理解できませんでした。ただ、僕は今回に限らず、その役がどうしてそういう性格になったのかという背景を考えるようにしていて。拓哉なら、ずっとチヤホヤされる環境で育ったから調子に乗ってしまっている部分もあるのかなとか、実は家庭環境があまり良くなくて、そのストレスを発散したいがために…とかいろいろ想像しました。そういう言葉が出てくる背景がきっとあるはずなので、ただの“嫌なヤツ”で終わらせるのではなく、自分なりに拓哉のバックボーンを考えて落とし込むようにしました。
――これはもちろん褒め言葉ですが、“嫌なヤツ”感が満載でした。本島さんの公式コメントに「イメージを裏切れるキャラクターになっているんじゃないか」という言葉がありましたが、まさにその通りだなと。
ありがとうございます。自分でも、結構裏切れたんじゃないかなと思っています。監督やスタッフの皆さんの支えがあって、今までにない自分を出せた気がします。拓哉という役は、ビックリする人もいるかもしれませんが、お芝居としては本当に楽しくて。日常生活では絶対に言わないようなセリフを言えるのも俳優の仕事ならではだなと改めて思いますし、彼がなぜこういう性格になったのかというのを“理解しようとする”ことで少しは納得できる部分も出てくるんです。“こういう背景があってこんなことを言っているのなら、ちょっと寂しい人間かもしれない”とか。一人のキャラクターを掘り下げることで、その人の心がより見えてきたり、自分の視野が広がっていく感覚が楽しいなと思います。

■ただ真似をするのではなく感情をしっかり乗せて、舞台でしか届けられないものを表現できたらと思っています

――一方で、サッカーでカッコよくシュートを決めるなど爽やかなシーンもあります。
僕はサッカー経験がなくて、今回のために地元の公園でめっちゃ練習しました。1人だとパス回しとかができないので、中学時代の同級生に「今からサッカー練習手伝ってくれない?」と連絡したら6、7人が来てくれたんです。時間が経つとさらに人が増えて、軽い同窓会みたいになっていました(笑)。楽しかったです。サッカー部だった友達に動きを教えてもらったりもしましたが、ゴールパフォーマンスだけは自分で考えました。“決めて当たり前”感を出したかったので。拓哉の余裕みたいなものが出ていたらうれしいです。
――先ほど「オーディションでつかんだ役」とお話されていましたが、印象に残っていることはありますか?
オーディションでは、台本のシーンを実際に演じました。オーディション会場にゆりやん監督もいらっしゃって、緊張しました(笑)
――普段、オーディションの前は入念に準備をしていくタイプですか?
はい、めちゃくちゃ準備します。「禍禍女」のときは事務所でマネージャーさんと台本の読み合わせをして、かなりダメ出しをもらい、メンタルがボロボロになりました(笑)。でもヘコんでいる場合じゃないので、気持ちを立て直して、“絶対に役を取らなきゃ!”という気合いで臨みました。
――読み合わせは、いつもマネージャーさんと?
はい。お願いすると必ず付き合ってくれるんです。どんなに忙しくても時間を作ってくれて、事務所の会議室やスペースも準備してくださって。オーディション当日の服装や髪型に迷ったら、「どっちがいいですか?」と写真を送って意見をもらったり、いろいろなアドバイスをもらっています。
――ちなみに、オーディションは緊張するタイプですか?
最初はしますね。でも一度その役に入ってしまえば意外と大丈夫です。
――記事が公開される頃には終了していますが、現在は初の舞台『光が死んだ夏』の稽古真っ最中だそうですね。
2025年は幅広いジャンルの映像作品に出演させていただき、いろんなお芝居が経験できたと思うんですけど、この年末にものすごく大きな壁にぶつかっています。これまで映像作品しか経験がなかったので、舞台ならではの発声や見せ方を一つひとつ体に叩き込んでいる感覚です。

――演じるのは、三重県のとある集落に住む高校生の辻中佳紀。セリフも多いそうですね。
台本一冊分のセリフを覚えること自体がまずハードでした。気合いで何とか乗り越えたのですが、そこからが本番で。立ち位置を覚えたり、セリフに感情を乗せたり、詰めていくことが無限にあって、精神的には今かなりギリギリです(笑)。
――映像とはまた違う役の深め方で、難しさと同時に手応えもありそうですね。
そうですね。家に置いてある原作漫画は、読み込みすぎて結構ボロボロです(笑)。重要なシーンには付箋を貼っています。やっぱり、意識するのは原作ファンの方の存在なんです。物語のターニングポイントや印象的な場面は、できるだけ忠実に演じたい。でも、ただ真似をするのではなく感情をしっかり乗せて、舞台でしか届けられないものを表現できたらと思っています。
――全ての動作を体に入れた上で、表現するのは二段階の難しさがありそうです。
感情や感覚を伝えるのは本当に難しいです。たまに、役じゃない感情…“本島”が出てきちゃうときがあるんです。特に感情がグッと入るシーンや緊迫したシーンで。そういうときは一旦冷静になって、落ち着くことが大事だなと思います。
――顔を出しかけた“本島純政”を、自分の中にしまうというか。
舞台が初めてなので、表現できていないと感じて無理に大きくやろうとすると、逆に“本島”が出てきてしまうんです。だからこそ、役をしっかり落とし込んで、落ち着いて演じる、という稽古を繰り返しやっていくしかないなって。
――周りはそれを当たり前にできている方々ですしね。
はい。自分だけできていないのは、とてつもなく苦しくて。僕はセリフと方言でいっぱいいっぱいなのに、皆さんは既にそれ以上のことをやっているんですよね。アドリブが来たら一応、応えられはしますが、僕のそれは役として成立しているのか…というのも考えてしまう。映像でのアドリブは多少は経験がありますが、舞台の場合は本当に未知。とにかく稽古映像を見返して考えて、分からないことは聞く。それしかないと思っています。
――奮闘ぶりが伝わってきます。ここを乗り越えた先には、新たな景色が待っていそうですね。
必死に食らいついて、終わったときに「やり切った」と言いたいです。そのために、今は頑張るのみです。

■“やっぱりお芝居が好きなんだな”と感じることも多かったです

――2026年1月に21歳の誕生日迎えますが、20歳はどんな一年でしたか?
実年齢よりも上のエリートサラリーマンだったり、少しクセの強いオタクの役だったり、今までやったことのない役をたくさん演じさせてもらいました。“自分にない自分”を発掘する作業が多くて、自分と向き合う時間がすごく増えた一年でした。
――20歳から21歳になる心境はいかがですか?
うーん、特にないかも(笑)。19から20になるときはありましたけど。単純に責任感が強くなった感じで、いろんな場面での振る舞い方を見直したり、将来について考えるようになった気はします。
――将来というのは、このお仕事の延長線上で?
はい。もっと気を引き締めて、一日一日を大切にしないと時間はあっという間に過ぎるなって。毎日を無駄にせず、充実させていきたいですね。全然、一日寝ちゃう日もあるんですけど(笑)。
――2025年が怒涛だった分、余計にそう感じるのかもしれませんね。
本当に早かったです。一年前に撮影した写真を見て、“もう一年経ったの?”と驚きますし、体感的には1ヵ月前くらいにも感じます(笑)。ありがたいことに作品数も多くて、10年分ぐらいの経験が一年に詰め込まれた感覚でした。ものすごく濃かったです。
――傍から見ていても、まさに勢いに乗っている印象です。
いやいや! 全然。毎日必死です。
――チャンスを確実にものにしているように見えます。
作品ごとに“爪痕を残さなきゃ”と思うタイプなので、気負い過ぎた芝居になってしまうこともあるんです。まだまだバランスは難しいですが、いかに自信を持って役を全うできるか、そして楽しめるかというのが大事なんだなと思います。それと…始まってしまえば意外と怖くないんだというのも発見でした。
――というと?
始まる前が一番不安なんです。でも、いざ始まれば楽しんでいる自分がいて。“やっぱりお芝居が好きなんだな”と感じることも多かったです。
――その揺るぎない根っこがあるから、今回の舞台しかり、いろいろな壁に挑めるのでしょうね。
今で言うと、舞台稽古で自分の成長を感じられて毎日の充実感がすごいんです。早朝に起きて台本を見直したら稽古へ行き、終わったらジムで体を動かしたり、ハンサムライブの練習をやって…と、全てを終えて帰宅したときの達成感がハンパないです。そんなふうに一日一日を大切に過ごして、21歳にしかできない新しい経験やチャンスを丁寧に積み重ねていきたいし、俳優としてもっともっと成長して、いい作品に手続けられるようにしたいです。

撮影=樽木優美子/取材・文=川倉由起子/スタイリスト=津野真吾(impiger)/ヘア&メーク=菅野綾香/プロップスタイリスト=石井くみこ

