商業施設ではなく、公園のような場所
「バブル崩壊後でスキー人口も減っていくなか、湯沢や野沢に挟まれたこの場所にスキー場を作っても、人が大勢来ないことはわかっていました。でも、それが目的ではなかった。村の人が“自分たちのスキー場”として楽しめれば、それでよかったんです」
そう語るのは、朝晩の除雪を日課とする栄村の観光係長であり、栄村スキークラブ会長の石塚雄樹さんだ。

来場者数は徐々に増えていったものの、コロナ禍で利用者が激減し、一時は存続の危機に直面。そこで改めてスキー場の魅力を見つめ直し、外部の意見も取り入れながら始めたのが、「平日極力非圧雪」という取り組みだった。その意味を、実際に滑りながら教えてもらう。

「平日極力非圧雪」
対象は上級コースと一部の中級コース。降雪後、あえて踏まない。ただし全面を非圧雪にするのではなく、コースの幅や斜度、積雪量に応じて踏み方を細かく変える。上下で分けるだけでなく、左右で分けることもあり、1mほどの段差で圧雪と非圧雪が共存する独特の景色が広がる。ディープなパウダーを味わい、圧雪側に出て一息つく。無理なく楽しめる設計だ。そうした点は、パウダーに挑戦してみたい人にとっても最適。

一方で、スピーディーなカービングバーンも健在。溶けて固まった硬い下地はなく、適度な湿度でエッジがしっかり噛み、膝にもやさしい。昼頃には圧雪と非圧雪の境目が分からなくなるほど雪は柔らかく、“クリーミー”な感触のスムースターンに、自然と表情が緩む。

大切な農地と自然を守るという考えのもと、ゲレンデはコンパクトに設計されているが、コースバリエーションは豊富だ。
ゲレンデ上部のツリーランエリアは、コースからのアクセスも良地形に富んでいて、木々の間隔もちょうどいい。

麓からリフト1本で楽しめる全長約2,500mの「かもしかコース」では、新潟県から北アルプスまで見渡す、このエリアでは貴重な開放的な眺望が広がる。左右には雪帽子など、自然がつくり出した雪の造形美が点在。

コース名も親しみやすく整理されている。かつての「B」や「D」といった聞き間違えやすい名称は改められ、しらかば林に囲まれた「しらかばコース」、夏には蛇が出るという「まむしコース」など、情景が浮かぶ名前だ。
なかでも印象的なのが「オリオンコース」。圧雪車のライトが故障し、方向を見失った際、夜空に浮かぶオリオン座を頼りに下山したというエピソードから名付けられた、どこかロマンを感じさせるコースだ。

