1月に行なわれたシェイクダウンテストの段階から、その独創的なスタイリングで注目を集めているアストンマーティン・ホンダAMR26。設計を主導したエイドリアン・ニューウェイは、“伸びしろ”のあるマシンにすることを意識したという。
5日間の日程のうち各チーム3日間参加することができたバルセロナテストでは、テスト4日目の終盤にようやくコースインし、1日と少ししか走ることができなかったアストンマーティン。ニューウェイの加入時期や新風洞を使い始めた時期が昨年春であったため、ライバルと比べて数ヵ月単位で動き出しが遅れ、かなりタイトなスケジュールになったとニューウェイは説明している。
そんな中で姿を現したAMR26は、サイドポンツーンやエンジンカウル、サスペンションをはじめとする各所で独自のアイデアが散りばめられており、天才ニューウェイここにありといった風情でライバルからも注目を集めている。ただしニューウェイは、ニューマシンはボディワークなどシーズン中に変更可能な部分においては開発の余地が多く残されていると説明する。
アストンマーティンが公開したインタビューの中でニューウェイは、チームは開幕戦からすぐに競争力を発揮できるのかという問いに対してこう答えている。
「我々としては、開発のポテンシャルを十分に秘めたマシンを作ろうと試みた」
「性能範囲の中で最適化されている一方で、伸びしろがあまり残されていないマシンになるのは避けたかった。我々はその逆をやろうとしたんだ。つまり基礎的な部分に集中して、ウイングやボディワークといったシーズン中に変更できる部分は開発の余地を残そうとした」
またニューウェイは、2022年から2025年にかけてのグラウンドエフェクトカーがドライバーにとって非常に乗りづらいものになっていて、アストンマーティンのマシンもその典型例であったと指摘。新規則となった2026年のマシンは、ドライバーのフェルナンド・アロンソとランス・ストロールが「一貫して高いレベルのパフォーマンスを引き出せるマシン」を目指して開発してきたと語った。
“伸びしろ”を重視して作られたというAMR26の空力開発を司るのが、シルバーストンにあるチームの巨大ファクトリーに新設された風洞だ。この風洞はアメリカのテクノロジー企業『CoreWeave』の名前が入り、『CoreWeave AI.R トンネル』と呼ばれている。
ニューウェイは、昨年4月から本格稼働を始めたこの風洞がF1界でも最高クラスであると称賛する。
「CoreWeave AI.R トンネルは、まさに最先端そのものだ。F1という用途においては、おそらく世界最高の風洞と言えるのではないだろうか」
「非常に洗練されていて、完全に我々仕様に建設され、そこにCoreWeaveの専門知識が織り込まれている。我々にとっての“ゲームチェンジャー”(革命的なもの)になる存在だ」
「空力はF1において最大のパフォーマンス差別化要因だ。そのための主要な研究ツールがこの風洞だ。まさに必要不可欠なものであり、我々は今まさにそこから得られる恩恵を享受しているところだ」
またCoreWeaveがどういった点で技術貢献しているのかについても、ニューウェイは説明した。
「風洞の運用支援というのもその一部だし、計測の支援もそうだ」
「例えばPIV(粒子画像流速測定法)というものがある。これは空気中に粒子を散布し、そこにレーザーを照射することで流れの特性を測定し、気流を可視化する手法だ。これには非常に複雑な事後解析を必要とする」
「CoreWeaveの計算能力と最先端のAIソフトウェアが風洞に組み込まれていることで、その気流を解析し、操作し、さらにCFD(コンピュータによる流体解析)など他のツールと連動させる能力が強化されている」

