
俳優の川口春奈が、2月10日に31歳の誕生日を迎えた。2007年、12歳で雑誌モデルとして芸能界入りし、着実にステップアップして人気俳優に。その活躍ぶりと魅力を近年の出演作からひもとく。(以下、出演作品のネタバレを含みます)
■YouTubeチャンネルやバラエティーでの自然体な素顔も人気
1995年2月10日生まれの川口。2007年にローティーン向けの雑誌「ニコラ」のオーディションでグランプリを獲得し、芸能界のキャリアをスタートさせた。出身地である長崎から東京に通いながらモデル業をこなし、やがて上京、俳優へと活躍の幅を広げた。
そのキャリアを振り返ると、2020年に大きな変化があった。チャンネル登録者数196万人(2026年2月9日現在)にまで成長したYouTubeチャンネル「はーちゃんねる」の開設や、バラエティー番組「ニンゲン観察バラエティ モニタリング」(TBS系)にレギュラーとして加入し、俳優以外の“顔”を幅広い世代に知られるようになった年である。
これらのフィールドでは変顔もいとわず、豪快な食べっぷりや飾らない本音をのぞかせることも。それにより「サバサバしている」「自然体」「親しみやすい」という好感度抜群のイメージが定着していくことになった。
■大河ドラマ初出演で乱世にいる女性を力強く体現
一方、同年は本業でも自他ともに認めるターニングポイントになった作品がある。大河ドラマ「麒麟がくる」(NHK総合)への出演だ。演じたのは、長谷川博己演じる主人公・明智光秀のいとこであり、幼なじみの帰蝶。
大河ドラマ初出演、さらに時代劇も初めてという中で挑んだ大きな役どころ。だが、実は代役での抜てきだった。大河ドラマは放送前年の初夏ごろから撮影が始まることも多いが、川口の出演が決まったと発表されたのは放送まで2カ月もない11月下旬。12月初旬に撮影を開始した。帰蝶は史料があまりなく、謎に包まれた人物ともいえるが、それでも彼女が生きた時代について、また時代劇特有の所作についても、十分に学ぶ時間がなく演じることが大変であろうことは想像に難くない。
視聴者に注目される中、川口の帰蝶が初登場したのは第1話の終盤。わずかな時間だったが、SNSには「ぴったり」という声があふれた。川口は、ずっと光秀に恋心を抱いていたが、光秀の主君となる織田信長に嫁ぐという複雑な境遇の帰蝶を、時に繊細に時に力強く表現。戦国の世を、最前線の近くにいた女性として生き抜いた。

■代表作「silent」では、「自分でも見たことのない表情」に
その後、「着飾る恋には理由があって」(2021年、TBS系)でインテリアメーカーの広報担当であり、SNSフォロワー数10万人を誇るインフルエンサーという現代的な主人公を演じ、ヒロインの姉役を務めた2022年度前期連続テレビ小説「ちむどんどん」(2022年、NHK総合ほか)では朝ドラに初出演。朝ドラは、故郷・長崎を舞台にした2022年度後期連続テレビ小説「舞いあがれ!」(2022-2023年)にもサプライズ出演した。
そして、朝ドラ2作の間に主演したドラマ「silent」(2022年、フジテレビ系)は、ロケ地が聖地巡礼される大ヒットとなった。
川口の役は、高校3年生のときに目黒蓮演じる佐倉想と両思いになるも、大学進学の時期に突然別れを告げられる青羽紬。実は、想は耳が聞こえなくなる病を発症したことで別れを決意したのだが、それを明かすことなく、8年後に2人は再会する。
音のない世界で生きている元恋人へ募る思い。川口は主人公の葛藤を、いくつもの涙と表情で表現し、視聴者の心を揺さぶった。同作で「第114回ザテレビジョンドラマアカデミー賞」にて主演女優賞に輝いた川口は、「もともと私は『こう見せよう』という計算ができないタイプで本当に感じたままに演じるので、現場で初めて、役として切なかったり、悲しかったりという表情になるんです。このドラマではこれまで自分でも見たことのない表情をしていて、振り幅が広くなったと感じることが多々ありました」と、コメントしている。
■声優初挑戦の「マイ・エレメント」での表現力
「感じたままに演じる」。それはバラエティーなどでも見られる「自然体」に通じ、自然体であることにより、役にリアルさが生まれ、見る者の共感を呼ぶ。
そんな中、声だけで演じた2023年公開のディズニー&ピクサー映画「マイ・エレメント」(ディズニープラスで見放題配信中)でも確かな表現力が感じられた。火・水・土・風というエレメントの世界を擬人化して描いた物語で、川口は主人公である火のエレメント・エンバーの日本版声優を担当。火は、気持ちがアツくなってしまうと激しく燃えるため他のエレメントから避けられがちで、エンバー自身も短気で癇癪(かんしゃく)持ちだけど、賢くて、家族思いな女の子というキャラクターだ。
父が営む雑貨店を継がなければと思っていたが、自由な心を持つ水の青年・ウェイド(日本版声優:玉森裕太)との出会いで新たな可能性を考え始めて葛藤が生まれる。その感情の揺らぎを、火という特性が伝わってくるアツさとともに、よく通る声に乗せた。
ただ感じたままに演じればできるというものでもないだろう。キャリアを重ねて培ってきた表現力もあってこそ。初めての声優挑戦だったが、感じたことを表現できる芯のある強さが川口の大きな武器だ。
2025年の年末は、柴咲コウ主演のABEMAオリジナルドラマ「スキャンダルイブ」での芸能週刊誌記者役が話題に。社会派サスペンスで新たな一面を見せてくれた。
31歳、川口は自然体でありつつ、ますます輝いていくに違いない。
◆文=ザテレビジョンシネマ部

