三谷幸喜が脚本と演出を手掛ける舞台「いのこりぐみ」(IMM THEATER)を先日、観劇した。出演者は小栗旬、菊地凛子、平岩紙、相島一之の4人だ。あらすじはこうだ。
舞台となるのは小学校の教室。放課後、二人の教師(小栗、相島)が面談のために残っていた。そこにやってきたのが、ある児童の母親(菊地)。たびたび学校にクレームを入れる、いわゆるモンスターペアレントだ。
息子が担任に嫌われているから、その担任(平岩)を代えてほしいと主張する。そこに当の担任教師が現れて、教師たちは母親と担任から詳細を聞き取り、どうにか解決への糸口を探そうとするのだが…。
相島と平岩に関しては「さすが」の舞台俳優ぶりだったし、今回が初の舞台となる菊地は、若干の気負いを感じるクドさはあったものの、物語におけるキャラクターをうまく再現していた。
そして小栗。私は普段、ドラマや映画での演技から、世間が褒めるほど「うまい」と感じたことがない。今回、初めて舞台俳優としての彼を見たのだが、話し方も動きも「いつもの小栗旬」で、やはりそこまで絶賛されるような役者だとは感じなかった。
もっとも、同じように「いつもの」と表現される「キムタク」と比べたら、鼻につく変なクセはないし、物語の流れや他の役者の演技を邪魔するようなこともなく、台詞も聞き取りやすかったが…。つまり、思ったほどは悪くなかった、ということだ。
そんな4人の会話でのみ繰り広げられる物語は、三谷お得意のワンシチュエーション・コメディー。腹を抱えて笑うほどではないし、急なミュージカル展開もない。ネタバレになるといけないので軽く触れる程度にとどめるが、ありがちな「学校側VSモンスターペアレント」だと思っていたら終盤、その様相が変わってくる。ちょっとミステリーの要素を含んだ展開は、なんとなく予想がついた。
セットは小学校の教室を模した黒板、教壇、学習机と椅子がいくつかある程度。何か大がかりな場面転換があるわけではないし、上演時間は1時間45分と、非常にこぢんまりとしたもの。これでチケット代は1万2000円。一概に比べてはいけないが、昨年、私を爆笑と感動の渦に巻き込んだ「劇団☆新感線45周年興行・秋冬公演『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』」が1万6000円だったのが破格に思えるほど。4000円しか違わないにもかかわらず、なんとも食い足りなかった。
いや、別に「つまらなかった」というわけではない。過去にはもっとつまらない舞台を、いくつも見たことがある。それらに比べれば、普通に楽しかった。ただ、あくまで「普通に」。つまり、こちらの期待が大きすぎたのだ。
三谷作品のファンである自分からしたら、ドラマ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(フジテレビ系)が大コケし、「オワコン」みたいに言われるのが残念でならなかった。だから今回の観劇は「やっぱり三谷幸喜はこういうことをやったら凄い」と思わせてくれるだろうと、そしてその感動をここに記せるだろうと、勝手に胸を膨らませていたのが、いけなかっただけだ。
ちなみに、舞台のタイトル「いのこりぐみ」は、まだ小学生の三谷の息子さんが考えたそうだ。案外、これがいちばんセンスがあったかもしれない。
(堀江南/テレビソムリエ)

