「まさに累々たる屍。歴史的大敗だ」
中道改革連合の衆院選大敗に、その源流となる旧民主党OBは茫然とつぶやいた。今回の選挙結果を政治アナリストはこう分析する。
「最近の選挙民は、政治家も党も実によく見ている。複雑で緊迫した世界情勢の中、経済、外交の真剣勝負をどの党がやるのか吟味。その第一候補に自民が選ばれた形です」
そしてこのアナリストは、それを象徴する選挙を区挙げた。ひとつは北海道帯広市を中心とした、北海道11区だ。自民新人・中川紘一氏が中道の前職・石川香織氏と事実上の一騎打ちで初当選している。
地元選挙関係者によれば、前半戦は石川氏がリードしていた。理由は前職である上、夫は元衆院議員の石川知裕氏。落選などで政界を離れたが、復帰を果たそうともがいていた。だが昨年、大腸ガンにより、52歳の若さで急逝。この総選挙は「弔い合戦」として、同情票が期待された。
それと比較して紘一氏は、北海道農水産業育成に辣腕をふるい、地元で絶大な信頼を得ていた中川一郎元農水相の孫。だが落下傘候補と目され、当初は敬遠する動きがあった。
11区はかつて一郎氏の長男の昭一氏が後継となった。昭一氏は農水相、財務相と出世階段を駆け上がり、将来の総理候補と期待された。
だが2009年の財務相時、G7で体調不調となり「もうろう会見」でつまずいて落選。その後、56歳で急逝した。昭一氏の後継には郁子夫人が立ち、当選。しかしその郁子氏が同僚議員との「路チュー」スキャンダルで大混乱となった。知裕氏に代わって出馬した香織夫人に3連敗。2024年に郁子氏が不出馬宣言をして今回、昭一氏の弟の子息である紘一氏の出馬となった。
それにしても自民新人はなぜ、前職に勝てたのか。先の政治アナリストによればこうだ。
ひとつは郁子夫人が候補時は自民支持の婦人層がスキャンダルを嫌ったが、紘一氏で婦人層が戻ったという点。ふたつめは北海道農業の元締め「ホクレン」会長が紘一氏の後援会長になり、農協に発破をかけて農政連が血眼になった。三つめは、日本の畑作作物の一大拠点である十勝の農産物を日本国内外に送る大動脈、高規格高速道計画に国の予算がつかず、地元は焦っていた。予算をスムーズにつけるには野党より与党議員が必要、という機運が高まった。
選挙区の自民幹部が言う。
「そこにかつての一郎氏を彷彿させる、180センチ近くある北海のヒグマのような紘一氏が登場。早稲田の雄弁会あがりで演説が熱くうまい。しかも35歳と若い。そこに高市ブームが重なった」
一方で、こうも指摘した。
「特に選挙民の間で不評だったのは、香織氏が選挙戦終盤で知裕氏の遺影を掲げ、お涙頂戴策に出たこと。遺族の気持ちは分かるが、今の選挙とは微妙にズレる。北海道民は目と鼻の先、ロシアという国の動きに敏感だ。ウクライナ問題もあり、政治は国を守り経済をどうやってくれるか、有権者は冷静に見ている」
さて、もうひとつの選挙区は、中道の岡田克也元外相が敗れた三重3区だ。選挙アナリストが言う。
「岡田さんが敗れた自民党の石原正敬氏には前回、ダブルどころか8万票も差をつけた。高市早苗首相の台湾問題『存立危機事態』答弁を引き出したことには批判もあったが、岡田氏本人はそんな自分を功労者と見て自信があったのではないか」
岡田氏もしかりだが、とりわけ野田佳彦共同代表の選挙戦略の誤りと「読み違い」が中道の大敗を招いたといえる。
(田村建光)

