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『ばけばけ』ヘブンの日本語は史実より「上手くなりすぎ」? 息子も分からなかった「ヘルンさん言葉」とは

『ばけばけ』ヘブンの日本語は史実より「上手くなりすぎ」? 息子も分からなかった「ヘルンさん言葉」とは


『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)

【画像】え…っ! 夫婦で立って並ぶと「なんか小っちゃくてかわいい」 コチラが小泉八雲さん(ギリシャ出身)と小泉セツさん(日本人)の身長差です

息子も聞き取れなかったハーンの日本語

 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と、妻・小泉セツをモデルにした物語です。

 第19週90話の最後では「レフカタ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」が妻の「松野トキ(演:高石あかり)」に松江を離れることを提案しました。いよいよ松江を離れ、次の赴任地である熊本へ向かうようです。

 松江に滞在している間に、ヘブンの日本語はかなり上達しています。84話では、浜辺で偶然出会った「庄田多吉(演:濱正悟)」に「日本語もお上手なんだ」と感心される場面がありました。ヘブンも、「エイゴヨリ、ニホンゴノトクイナ、セイヨウジンデス」というジョークを飛ばしています。

 88話では、英語が全く分からないトキの父「司之介(演:岡部たかし)」と母「フミ(演:池脇千鶴)」とも、問題なくコミュニケーションをとっていました。それぐらい、ヘブンの日本語が上達したということでしょう。

 ただ、史実ではハーンは日本語をほとんど話すことができませんでした。自身の研究に打ち込むため、早々に日本語学習を諦め、日本語資料を読む必要があるときは他人に英訳してもらっていたそうです。セツも英語を理解できなかったため、夫婦のコミュニケーションは困難だったと思われます。

 当初、ハーンは辞書を見ながら片言の日本語でセツに話しかけていたそうですが、やがてふたりは独特な「ヘルンさん言葉」という特別な言葉で意思疎通をするようになりました。ヘルンとは、松江でのハーンの愛称です。

「ヘルンさん言葉」とは、日本語の単語と慣用句に、活用しない形容詞を加え、助詞を抜いて、語順は英語と日本語をミックスしたものだったそうです。たとえば、「テンキコトバナイ」は、「天気は申し分なくよろしい」という意味になります。

 短い文章なら分かりそうですが、もっと長い文章になると、とたんに意味が分かりにくくなります。『ばけばけ』のサブタイトルはすべて「ヘルンさん言葉」風ですが、かなりわかりやすくアレンジされています。

 ハーンとセツの次男にあたる稲垣巌は「父八雲を語る」というエッセイのなかで、ハーンの死の1、2年前ぐらいからようやく「ヘルンさん言葉」を聞き分けることができるようになったと語っていました。それぐらい難しかったのでしょう。

 ハーンはアメリカのニューオーリンズに滞在中に「クレオール語」という言葉を好んでいました。意思疎通ができない人同士が自然に作り上げていく独特の言語で、複数の言語が混じって生まれるものです。さまざまな文化が混じるニューオーリンズの地でクレオール文化に接したハーンは、クレオール語のことわざ辞典やレシピ集を執筆しています。「ヘルンさん言葉」を編み出したときも、クレオール語が頭にあったはずです。

『ばけばけ』のなかでヘブンの日本語が上達しているのは、ヘブンとトキや第三者とのコミュニケーションをスムーズにして、視聴者のストレスを軽減するためでしょう。「ヘルンさん言葉」を使うと字幕だらけになってしまいますが、朝の忙しい時間帯に字幕ばかり追っているわけにはいきません。

 お互いの言葉が分からないヘブンとトキが、少しずつ歩み寄ってコミュニケーションがとれるようになっていく様子は、実にいい塩梅で描かれていたと思います。『ばけばけ』は、そのような部分の工夫も光っているドラマなのです。

参考:『妖怪に焦がれた男 小泉八雲 全解剖』(宝島社)

配信元: マグミクス

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