
一時は5位も14位に後退。とにかく戦術がハマらないブライトン。小さなミスより大きな骨幹に目を向けるべきだ【現地発】
三笘薫が所属するブライトンが、不振に喘いでいる。
国内リーグでは直近12試合で1勝6分け5敗。2月8日に行なわれたクリスタル・パレス戦も奮わず、0-1で敗れた。わずか1勝という低空飛行が響き、一時は5位につけていた順位も、現在は14位まで後退している。
「M23ダービー」と呼ばれる宿敵との一戦、しかも12月7日以来、国内リーグで未勝利という大スランプ中のパレスを相手に、ホームで黒星を喫した。この結果を受け、試合後にはブライトンの一部サポーターからブーイングが起きた。地元メディアによれば、ファビアン・ヒュルツェラー監督の手腕に批判的なサポーターが出始めているという。
今回のパレス戦で目立ったのは、ヒュルツェラー監督が採用した「奇策」とも言える戦術だった。基本フォーメーションは4-2-3-1。だが相手の攻撃時に形を大きく変え、パレスの3-4-2-1の布陣に対抗した。
パレスの3-4-2-1は、攻撃時に両ウイングバックが前線までせり出す。CFと2人のアンカー、さらに2人のウイングバックが加わり、前線には合計5人が並んだ。対するブライトンの最終ラインは4人。1人足りないため、ドイツ人指揮官は対抗策を講じた。
戦術上のキーマンは、17歳のMFハリー・ハウエルだった。「17歳294日」での国内リーグ先発はクラブ史上最年少。豊富な運動量が求められる、重要なタスクを託された。
ハウエル4-2-3-1の右MFとして先発したが、相手ボール時になると、相手左ウイングバックのタイリック・ミッチェルの攻撃参加についていき、最終ラインで守備に加わった。その際、ブライトンの最終ラインは、ハウエルに押し出されるようにして左方向にそのままスライド。結果として、守備時のフォーメーションは5-2-3に変形した。
なお逆サイド、相手の右ウイングバックに対しては、自軍の左SBマクシム・デ・カイペルが対応した。その前方に控える三笘は、前線の左サイドに残ったままで、守備のタスクはある程度、免除されていた。
ここまでの説明でも十分に複雑だが、話はそれだけにとどまらない。
ハウエルが空けた前線の右サイドには、トップ下のジョルジニオ・リュテールが流れて補填。一方、マイボールになれば、若いハウエルが右サイドを駆け上がり、ウイングのように振る舞う。呼応するように、今度はリュテールが持ち場のトップ下に戻った。守備時と、攻撃時。一連の布陣変更を、試合中に何度も何度も繰り返した。
しかし、である。「ブライトンの戦術は機能したか?」と問われると、首を横に振らざるをえない。パレスの攻撃力を一定程度、抑えることはできたが、自軍の攻撃が停滞するという課題を抱えたのである。両刃の剣とも言えるが、今回の試合に関して言えば、マイナス面の方がより強く表われた。
そして三笘は突破からクロスを上げてチャンスを作るなど奮闘したが、チームとして華麗な機能美の中で躍動していたとは言い難い。選手ひとりの力では、どうしても限界があるように思えた。
ヒュルツェラー監督の指導法を大きく分類すれば、「リアクション型」だ。相手の出方や試合展開に応じ、戦術や布陣を毎試合変える。次の試合までの1週間を、対戦相手に合わせた戦術練習に充てるのも特徴だ。
この点で言えば、いわゆる「アクション型」のロベルト・デ・ゼルビ前監督とは対照的と言える。イタリア人監督は自分のサッカースタイルに徹底してこだわり、特に後方部からのビルドアップに絶対の自信を持っていた。
もちろんヒュルツェラー監督も、緻密な戦術で勝利を手繰り寄せた試合もある。しかし最近は、とにかく戦術がハマらない。パレス戦では、試合を通してチームの攻撃が停滞。さらに後半には、最終ラインの対応ミス──つまり、ルイス・ダンクのクリアミスと、持ち場にステイすべきだったフェルディ・カドゥオールの判断ミスから失点した。
追いかける展開となり、試合終盤には三笘を右サイドに回す策も講じられたが、効果は見られず、采配そのものに大きな疑問符がついた。
また1月24日のフルアム戦では、本職がCBのオリビエ・ボスカーリを左SBで起用する奇策に出たが、このフランス人DFは肝心の守備でミスを犯し、失点に関与。敗戦(1-2)の主因となった。三笘が風邪で欠場したアーセナル戦(12月27日)では突然3バックを採用したが、こちらも大きな効果は得られず、1-2で敗れている。
試合ごとに姿とアプローチを変えながらも、結果が伴わないという負のスパイラルに、現在のブライトンは陥っている。
プレミアリーグでは戦術が高度化・複雑化しており、ヒュルツェラー監督のアプローチも、その潮流に沿ったものだ。アストン・ビラを3位に押し上げているウナイ・エメリ監督も、同じリアクション型に分類できる。だがこのスペイン人指揮官の場合は「ハイライン」「選手の的確なポジショニング」といった明確なプレー原則がある。選手間の共通理解も深く、それが躍進を支える強固な土台となっている。
ところが「ヒュルツェラー体制の骨幹は何か?」と問われると、こうしたプレー原則があまり見えてこない。守備を疎かにしない。現時点ではそれぐらいしか思い浮かばない。
試合後、ドイツ人指揮官は「失点前は試合の流れがこちらに傾いていたが、小さなミスが勝敗を分けた。監督として結果に責任を負う必要がある」と述べた。だが小さなミスよりも、大きな骨幹に目を向けるべきではないかと感じた。
もちろん指揮官の仕事は、ひとつの勝利で評価をガラリと変えることができる。プレミアリーグ史上最年少の31歳でブライトンの監督に就任し、今月26日に33歳の誕生日を迎えるヒュルツェラー。経験が足りないと言ってしまえばそれまでだが、1勝6分け5敗という現状は間違いなく正念場である。
ここからの軌道修正に期待したい。
取材・文●田嶋コウスケ
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