2025年シーズンのF1は、歴史を見返しても稀に見る激戦。全チームがポイントを争える、そんな状況になっている。しかしその中でもアルピーヌは苦戦。明らかに後方に沈んでいる。
アルピーヌが直面する苦境は、直近2戦で特に顕著に。イタリアGPではフランコ・コラピントとピエール・ガスリーが予選18番手と19番手に沈み、続くアゼルバイジャンGPでも16番手と19番手だった。
いずれのグランプリでも、アルピーヌはレースで順当にポジションを上げることができず。イタリアではガスリー16位、コラピント17位。アゼルバイジャンでは、完走したマシンの中での下位2台となる18位と19位だった。
ここまでの低迷は、44年にもわたるチームの歴史(トールマン、ベネトン、ロータスF1含む)最低のもの。リタイアを除けば、2戦連続で2台がトップ15圏外でフィニッシュしたのは、前例のないことである。
「何ヵ月も前から分かっていたことだから、驚くことでもないよ」
ガスリーはイタリアGPの予選後、アルピーヌの苦戦についてそう語った。
「現状は受け入れている。バクー(アゼルバイジャンGP)も厳しいレースになるだろうし、シンガポールも厳しいはずだ。年末まで厳しい状況が続くことは分かっている」
日曜日の決勝レース後にも、ガスリーはこう語っていた。
「おそらく今年の残りの期間は、同じスピーチと回答が続くと思う。でも少なくとも、自分たちができる範囲で、最善を尽くすことに集中しなければいけないね」
いったいアルピーヌの今季マシンA525の何が問題なのであろうか? 明確な答えのひとつが、パワーユニット(PU)のパフォーマンス不足である。
イタリアGPの予選でアルピーヌが記録した最高速は、345.7km/hだった。これは全チーム中最も遅く、最も速かったザウバー(フェラーリPUユーザー)は355.9km/h、2番目に遅かったマクラーレン(メルセデスPU)でさえ345.8km/hであった。決勝でも、アルピーヌの最高速は340.3km/h。最速はウイリアムズ(メルセデスPU)の364.1km/hで、アルピーヌに最も近かったのは350.9km/hのメルセデスであった。
アルピーヌが抱える、様々な問題
F1の最高速は、PUのパフォーマンス差よりも空力設定によって決まる部分が大きい。さらにDRSやスリップストリームを使えば、最高速は当然のごとく伸びるが、アルピーヌは決勝で数回DRSを使っていた。それでもなお他との差があまりにも大きいことから、PUの性能差があらわれているのではないかと邪推してしまう。
アゼルバイジャンGPでのアルピーヌの最高速は予選3番目、決勝5番目と一見するとイタリアGPよりも良い状況のように思われるが、10チーム全体の差も少なかった。
またコラピントはモンツァのストレートで、ブレーキングポイントに達する前に、PUの電気エネルギーが枯渇してしまう(クリッピングと呼ばれる現象)が見られると指摘した。
「これについては、僕らはどうすることもできない」
そうコラピントはイタリアGPの予選後にそう語った。
「ダウンフォースを削りすぎてしまうと、コーナーでスライドしすぎてしまう。何もでできない。これは難しい状況だし、一部のサーキットでは他のサーキットよりも苦労するだろうと分かっている」
とはいえ、アルピーヌが直面している問題は、パワーの面だけではない。
「モンツァのように、コーナーが6つ(シケインなどの複合コーナーをひとつとして計算しているようだ)しかないようなサーキットは、僕らにとって簡単ではない。どこに欠陥があるのかは分かっている。公平に言えば、それはシャシーとエンジンの両方の問題であり、どちらか一方に責任があるということではない」
そうガスリーは主張した。
「シャシーに関しても、改善すべき点がある」
「あらゆる領域に問題がある。現時点ではトップ10を争える位置にはいないのは分かっている」
A525で苦労していること
ガスリーは、アゼルバイジャンではコースの段差に苦労したと語り、コラピントは低速コーナーでのマシンの動きが不安定であることを嘆いた。
「このマシンは動きを予測するのが難しくて、ドライブするのは決して簡単ではない」
コラピントはアゼルバイジャンGP後にそう語った。
「そうなると、他のチームよりも限界まで攻め、リスクを負わなきゃいけないんだ」
アルピーヌのパフォーマンスが低迷しているのは、A525に投入されたアップデートが限られているからという側面も当然あるだろう。スペインGP以降、アルピーヌは3度にわたってアップデートを投入したが、そのほとんどがサーキット特性に合わせてダウンフォースを削るなどしたもの。マシンのパフォーマンスを底上げするようなモノは投入されていない。つまりチームは、今季のポジションを上げることには、あまり積極的ではないのだ。
「チームと協力して、短期的な改善策を探ることが重要だ。しかし19番手から、いきなり0.5秒もペースアップすることを目指すつもりはない」
ガスリーはアゼルバイジャンGPの際にそう認めた。
「レースでの勝利を目指していたとしても、あるいは18番グリッドになることを目指して戦っているとしても、最終的には同じように全力を尽くさなければいけない」
「チームが目指しているのは、マシンが変わることではない。全員が同じ目標を目指して一致していると思う」
2025年は”捨て”て、2026年に集中?
ただコラピントは、ガスリーよりは強気な見通しを示している。曰く、いくつかのグランプリでは入賞も争えるはずだと期待しているのだ。特に今後のアメリカGPとメキシコシティGPでは、好結果が期待できるとコラピントは話す。
さてアルピーヌがA525にアップデートを積極的に投入していない理由は、言うまでもなく2026年からF1で施行される新レギュレーションへの対応に注力しているからだ。
現在のF1は予算と空力開発に上限が設定されており、その中で現行マシンのアップデートと新マシンの開発を行なわねばならない。今季は現行レギュレーションの最終年ということもあり、例年以上に翌年マシンの開発に、各チームとも大きくリソースを割いている。
しかもアルピーヌは、2026年から自社(ルノー)製PUではなく、メルセデスのカスタマーPUを使うことになっている。これもアルピーヌにとっては、希望の種と言えるかもしれない。さらに現状では、コンストラクターズランキング9番手のハースに、24ポイント差をつけられた最下位。今季無理に足掻くだけのメリットはあまりないかもしれない。
ガスリーはこう語っていた。
「来年以降、競争力のあるマシンを実際に提供するために必要な要素は、全てチームに揃っていると思う」
「来年はチーム全体が、より良い結果を目指して戦えるように、準備を整えている」
チームのエクゼクティブ・アドバイザーを務めるフラビオ・ブリアトーレは、来シーズンに向けて焦点を絞っていると公言した。
「2026年型のマシンには、多大な努力を注いだ」
そうブリアトーレは語った。
「しかしルールの解釈は容易ではない。シーズン開始から今に至るまで、何の進歩も遂げられなかったというミスを犯したのかもしれない。そしてそのツケを支払うことになった。さらに今はコンマ2〜3秒の間に10台とか15台が入る激戦だ。パワー、つまりPUに大きなハンデがあるのは承知している。今年のことは忘れて、2026年には満足できるシーズンを送りたいと思う」
2026年には表彰台を目指せるか? そう尋ねられたブリアトーレは、次のように語った。
「その通りだ。もしその目標が達成できなければ、私は仕事を変える必要があるだろうね」
アルピーヌはこれまで度々、長期的な目標を掲げてきた。しかしそれが実現したことは一度もない。今回の目標が単なる希望的観測に終わるのか、あるいは十分に達成できるものなのか……それは神のみぞ知る。

