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「お前は何も分かっていない」14位に転落した三笘所属ブライトン、“ゴタゴタ続き”の宿敵とのダービーにも敗れて32歳指揮官に大ブーイング…擁護した番記者にも批判が殺到【現地発】

「お前は何も分かっていない」14位に転落した三笘所属ブライトン、“ゴタゴタ続き”の宿敵とのダービーにも敗れて32歳指揮官に大ブーイング…擁護した番記者にも批判が殺到【現地発】


 2月8日、アメックススタジアムで行われたクリスタル・パレス戦は、単なるダービーマッチ以上の意味を帯びる90分となった。試合終了後に響いた激しいブーイングと、指揮官に向けられた痛烈なチャント。それは一敗の結果以上に、ブライトンを取り巻く空気の変化を如実に映し出していた。

 日本では馴染みが薄いかもしれないが、両クラブの対戦は「M23ダービー」と呼ばれる因縁のカードだ。キックオフ前のスタジアムには、ライバル対決特有の緊張感と高揚感が入り混じり、ただならぬ雰囲気が漂っていた。

 両チームともリーグ戦では苦しい時期を過ごしていた。ブライトンは直近11試合でわずか1勝。クリスタル・パレスも12月7日以降、9試合にわたって白星から遠ざかっている。低迷同士の対決という構図は、特にホームのブライトンサポーターに「ここで勝たなければ」という期待を抱かせるには十分だった。

 実際、スタジアムへ向かう道中の電車内では、「ゴタゴタ続きのパレス相手なら勝てるはずだ」と話すブライトンファンの声も聞かれた。というのも、クリスタル・パレスには1月中旬からネガティブなニュースが相次いでいたからだ。

 オリバー・グラスナー監督が契約延長を行わない意向を示し、主将のマーク・ゲイはマンチェスター・シティーへ移籍。さらに、エースストライカーのジャン=フィリップ・マテタがACミランへの移籍を直訴する事態まで起きていた(結果的にはメディカルの問題で残留)。

 外から見れば、ブライトンが優位に立つ材料は揃っているように思えた。
 
 しかし、試合が始まると、その見立ては90分かけて否定されていく。ブライトンはボールを保持しながらも決定的な場面をほとんど作れず、攻撃は単調なまま推移した。一方のクリスタル・パレスは、ブロックを固めた守備から鋭いカウンターを繰り出し、試合の流れを掌握していった。

 結果は0-1。スコア以上に、内容面での差が際立つ敗戦だった。コレクティブで組織的なパレスに対し、ブライトンはチームとしての狙いや連動性を十分に示すことができなかった。

 左ウイングで先発フル出場した三笘薫も、攻撃陣全体が停滞する中で見せ場を作れずに終わった。個の力で局面を打開する以前に、チームとして相手を揺さぶる形がほとんど見られなかったのが実情といえた。

 試合終盤、スタンドの空気は明らかに変わった。残り5~10分ほどになると、「You don’t know what you are doing(お前は何も分かっていない)」というチャントが一部のサポーターから聞こえ始める。やがてそれは、「You are getting sacked in the morning(明日の朝、お前はクビになる)」という、より直接的な言葉へと変化していった。

 ファイナルホイッスルが鳴ると、大ブーイングがスタジアムを包みこむ。通常、こうした批判はレフェリーや相手チームに向けられることが多い。しかし、この日の怒りの矛先は明確に、自軍のファビアン・ヒュルツェラー監督へと向けられていた。

 1月下旬のフルアム戦、エバートン戦でもブーイングは起きていたが、これほど露骨で強い非難が、就任2年目の32歳の若き指揮官に浴びせられたのは初めてだった。
 
 試合後の記者会見は重苦しい空気に包まれた。「ファンのリアクションをどう受け止めるか」と問われたヒュルツェラー監督は、「責任は私にある」と語り、「結果を出せなければ非難されるのはフットボールの監督として当然だ」と言葉を続けた。
 
 数字だけを見れば、ブライトンの状況は致命的とは言えない。11月末に5位まで浮上して以降は14位まで後退したものの、6位リバプールとの勝点差は「8」、8位エバートンとの差も「6」にすぎない。今季のプレミアリーグが混戦であることを考えれば、2~3連勝で景色が変わる可能性は十分に残されている。

 それでも、スタンドの反応が示していたのは、「順位」や「勝点」だけではない不満だった。
 
 パレス戦後、『ジ・アスレティック』のブライトン担当記者アンディ・ネイラーは、ブーイングを行ったファンに対し、「上位にいることを当然視し、期待しすぎている。エンタイトルメント(自己特権意識)の表れだ」と論じている。

 これに対し、ファンからは強い反発が起きた。「目的意識を感じさせないサッカーを見せられている」「戦術が見えない」「選手起用の意図が分からない」「エキサイティングなサッカーを求めることが、なぜエンタイトルメントなのか」といった声が相次いだ。

 浮かび上がるのは、結果以上に「どんなサッカーを目指しているのか」というビジョンへの不満である。

 9日のBBC(英国放送協会)の討論番組「Monday Night Football」でも、「ヒュルツェラー体制下のブライトンのアイデンティティとは何か」というテーマが議論された。その中で、元イングランド代表のクリス・サットン氏は、「彼の指揮下で明確に成長した選手が一人でもいるのか」と疑問を投げかけている。
 
 かつてのブライトンは、選手育成と成長の物語を武器にしてきた。マルク・ククレジャ、モイセス・カイセド、ベン・ホワイト、レアンドロ・トロサール、アレクシス・マカリステル。彼らは飛躍を遂げ、ビッグクラブへと羽ばたいていった。

 しかし現在、カルロス・バレバやジャック・ヒンシェルウッドといった期待株は停滞している印象が否めず、エバン・ファーガソン(現時点ではレンタル移籍)やフリオ・エンシソはすでにチームを去っている。チームの停滞と個の成長の停滞は、無関係ではないだろう。

 パレス戦後、ブライトンの選手たちは誰一人として取材に応じることなくスタジアムを後にした。その背中には敗戦以上の重さが漂っていた。

 11日には、敵地でリーグ3位のアストン・ビラと対戦する。厳しい相手であることは間違いない。しかし、だからこそ問われるのは結果だけではない。チームとして何を目指し、何を積み上げようとしているのか。その輪郭を示すことができるかどうかだ。

 M23ダービーでスタンドから突きつけられた声は、単なる不満ではないのではないだろうか。ブライトンが次のステージへ進むために、避けては通れない問いそのものだったような気がしてならない。

取材・文●松澤浩三

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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