
「特別な薬や厳しい生活改善をしなくても、簡単な脳トレで認知症のリスクを下げられるとしたら?」
そんな期待を抱かせる研究結果が、約20年にわたる追跡調査から報告されました。
高齢者を対象にした米ジョンズ・ホプキンズ大学(JHU)の大規模調査で、簡単な脳トレを継続した人は、認知症と診断されるリスクが約25%低かったというのです。
脳トレゲームは意味のある遊びかもしれません。
研究の詳細は2026年2月9日付で学術誌『Alzheimer’s and Dementia: Translational Research & Clinical Research』に掲載されています。
目次
- 20年追跡で分かった「効いた脳トレ」とは何か
- 実際に何をする脳トレなのか、なぜ注意が必要か
20年追跡で分かった「効いた脳トレ」とは何か
この研究は、1990年代後半に始まった「ACTIVE試験」と呼ばれる試験に基づいています。
対象は65歳以上の高齢者で、参加者は無作為に4つのグループに分けられました。
3つは異なる種類の認知トレーニングを行う群で、内容は①記憶力、②推論力、③処理速度を鍛えるものです。
残る1つは、特別な訓練を行わない対照群でした。
トレーニングは最初に、1回約1時間を週2回、5〜6週間行われました。
その後、一部の参加者には1年後と3年後に「ブースター」と呼ばれる追加トレーニングも実施されています。
総トレーニング時間は、すべて合わせても24時間未満です。
20年間の追跡で、医療保険(メディケア)の診断記録をもとに認知症の発症状況を調べたところ、処理速度トレーニングを受け、さらにブースターにも参加した人だけが、認知症リスクの有意な低下を示しました。
その発症リスクの低下幅が約25%だったのです。
記憶トレーニングや推論トレーニングでは、統計的に意味のある差は見られませんでした。
実際に何をする脳トレなのか、なぜ注意が必要か
では、「処理速度トレーニング」とはどのような脳トレなのでしょうか。
研究で使われた課題は、パソコン画面上のさまざまな位置に一瞬表示される車や道路標識などの刺激を、できるだけ素早く正確にクリックするというものです。
刺激の表示時間や難易度は、参加者の成績に応じて自動的に調整されます。
いわば「反応の速さ」と「視野の広さ」を同時に鍛える課題です。
研究者自身も、なぜこの脳トレだけが効果を示したのかは断定していません。
ただ、こうした課題が脳内の情報処理や注意に関わるネットワーク、つまり「脳のつながり」に影響した可能性があると議論しています。
一方で、この結果を過大評価すべきではない点も明確です。
効果が確認されたのはこの特定の課題を、決められた形で実施した場合に限られます。
市販の脳トレゲーム全般に同じ効果があると示されたわけではありません。
また、診断は医療記録に基づくもので、すべての認知症ケースを完全に捉えているとは限らないという限界もあります。
それでも注目すべき理由
それでもこの研究が注目されるのは、無作為化比較試験という信頼性の高い方法で、20年という非常に長期の追跡を行った点にあります。
「たったこれだけで認知症を防げる」と言える段階ではありませんが、将来の予防法を考えるうえで重要なヒントを与えているのは確かです。
参考文献
Simple Brain Exercise Cuts Dementia Risk by 25%, Study Claims
https://www.sciencealert.com/simple-brain-exercise-cuts-dementia-risk-by-25-study-claims
元論文
Impact of cognitive training on claims-based diagnosed dementia over 20 years: evidence from the ACTIVE study
https://doi.org/10.1002/trc2.70197
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

