衆議院解散に便乗した大阪府知事選と大阪市長選は仕掛けた吉村洋文知事(日本維新の会代表)の思惑通り吉村氏本人と横山英幸市長が再選され「大阪都構想」の是非を問う3度目の住民投票の足掛かりを得たと吉村氏は主張する。
だが準備もないまま始まった知事選では約41万票も無効票が出た。同日に行なわれた衆院選では大阪の小選挙区で9年ぶりに維新候補が落選し、党勢も頭打ちになった。
来春の統一地方選に合わせた住民投票を…
投開票が行なわれた2月8日夜、吉村氏は会見で、再選で「都構想に挑戦することには一定の信任を得た」と述べ、都構想の制度案をつくる法定協議会を設置するよう議会に求めると表明した。
都構想とは⼤阪市を4つか5つに割って東京23区のような特別区に再編するものだ。
「2015年と20年に住⺠投票が行なわれ、いずれも否決されました。それをまたやる考えです。来春の統一地方選に合わせた住民投票を維新は考えているようです」(政界関係者)
その住民投票へ向けた制度作りの是非を問うというのが、今回のダブル再選挙の大義だと吉村氏は説明してきた。
「高市早苗首相が衆院解散の検討を指示したと1月9日夜に報じられた4日後には吉村氏はダブル選をやると周辺に伝えました。連立政権を組む高市氏から解散の意志を聞いていて今回の選挙を思いついた可能性があります。
維新は所属議員の“国保逃れ”の問題がどれだけ拡大するか依然としてわからない状況にあります。ダブル選はこの問題から目をそらさせ、衆院選でも維新に有利に働くともみたのでしょう。
さらに大阪では今、大阪市を周辺自治体と合併させてより権限の強い『特別市』にしたほうが行政コストは下がるのではないかとの声も出始めています。都構想とは真逆のこの考えが住民の目に留まる前に都構想実現の機運づくりを図ったとみられます」(地元記者)
世論調査ではダブル選挙に「納得できない」との声が64%
準備期間も選挙期間も短かった今回の衆院選は身体障害者や海外居住者の投票に支障をきたし、投票権が侵害されたとの声も出ているが、その衆院選に乗りかかった大阪ダブル選の惨状はさらにひどい。
「1月14日に話が持ち上がった府知事選は22日には告示というスケジュールで、立候補予定者に対する説明会も開かれませんでした。
候補者ポスターの掲示板も資材や場所の手配が間に合わず、大阪市では衆院選の運営まであおりをくらい、衆院選の掲示板は過去の国政選挙時に約2千か所設けられたのに対し、今回はその三分の一以下に減らされました」(大阪府関係者)
それだけではない。
「公示日にボランティアさんに割り振って掲示板にポスターを張りに行ってもらったんですけど、どこにも掲示板がなかったんです」と大阪市内の衆院選立候補者の秘書は激怒する。
大阪市内では掲示板の設営が1月22日の知事選告示どころか27日の衆院選公示にも間に合わず、多くの区では期日前投票所に指定された1、2か所の区施設にしか掲示板がない状態が選挙戦開始後も続いた。
最後の北区で予定された掲示板が建てられたのは1月31日になってから。その時点で知事選の期間は半分以上終わっていた。
「知事・市長選をやったおかげで有権者は衆議院議員選挙の候補者を知る機会まで制約されたんです。前職が圧倒的に有利になり公正な選挙とは言えない」と前出の秘書の怒りは収まらない。
こうして行なわれたダブル選。他の主要政党は「大義がない」として候補者擁立を見送ったが、知事選には吉村氏以外に2人、大阪市長選には横山氏以外に4人がそれぞれ立候補し、開催費用は約28億円かかると試算されてきた。
この支出をどう考えるのか聞かれた吉村氏は、衆院選と同日に行なうことで12億円を削減できると胸を張った。
だが、選挙期間中の2月上旬に関西テレビが大阪府民に行なった世論調査ではダブル選挙に「納得できない」との声が64%を占めた。
「都構想は“勝つまでジャンケン”。ダブル選挙は“勝つときだけジャンケン”。そら自分がやりたい時に好きに選挙をやれば勝てます。もう無茶苦茶ですわ。
28億円も使うのなら、大阪・関西万博のパビリオン建設が遅れているから助けてくれと呼び掛けた吉村さんの求めに応じて工事に参加し、その代金を払ってもらえなくなって困窮している業者さんを救済するほうが先だという声も出ています。発注者が行政でないとしても心情的にはわかります」(大阪市政関係者)

