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小松礼雄とグロージャンにとって大きな学びとなった、2012年の鈴鹿……「彼をうまく助けることができなかった」

小松礼雄とグロージャンにとって大きな学びとなった、2012年の鈴鹿……「彼をうまく助けることができなかった」

ロマン・グロージャンのF1キャリアにおいて転機となったのは、2012年の日本GPだったと、現ハースF1のチーム代表である小松礼雄が語った。当時ロータスのドライバーだったグロージャンはこのレースでスタート直後にレッドブルのマーク・ウェーバーと接触。このウェーバーとレース後にあった出来事が大きかったという。

 グロージャンは同年のベルギーGPで、スタート直後のターン1に向けたブレーキングをミス。多重クラッシュを引き起こし、翌戦イタリアGPの出場停止処分を受けた。

 シンガポールGPで戦列復帰したグロージャンは7位入賞。続く日本GPの予選では5番手と好位置につけた。

 この時点でシーズンは残り6戦。ウェーバーはランキング5番手だったものの、タイトル獲得の可能性は薄れつつあった。しかし日本GPではフロントロウを獲得し、大逆転タイトルに望みをつなぐ、そんなレースにしようと意気込んでいた。


 にもかかわらずウェーバーはスタートに失敗し、ザウバーの小林可夢偉らに先行されてしまう。そしてその後、ターン2でグロージャンに追突されてスピンし、最後尾まで転落。最終的には9位まで挽回したものの、望んでいた結果とは大きくかけ離れたものになってしまった。

 グロージャンはこの接触の責任を問われて、10秒のストップ&ゴー・ペナルティを受け、最終的に19位に終わった。

 ウェーバーはこの鈴鹿の件、そしてベルギーGPの一件を受けて、グロージャンのことを「1周目の狂人」と罵倒。再び出場停止にすべきだと主張した。

 当時グロージャンのレースエンジニアを務めていたのは、現在ハースF1のチーム代表を務める小松礼雄だった。その小松は、グロージャンが抱えていた苦悩に十分に対応することができなかったと認める。

「彼(グロージャン)の性格のある側面について、踏み込むことを避けてしまっていました」

 小松代表はイギリスのポッドキャスト番組「ハイパフォーマンス・ポッドキャスト」に出演した際、そう語った。

「私は、どう対処すべきか、どうやれば彼を助けられるのか、分からなかったんです」

「マーク・ウェーバーがレース後にロマンの部屋にやってきて、パネルとかそういうありとあらゆるモノを殴ったり、蹴り飛ばして、そして怒り散らして出ていった。するとロマンは床に崩れ落ち、泣き崩れたんです」

「もし私がロマンだったら、たとえ自分に非があったとしても、誰かが自分の部屋にやってきて、パネルやらそういうモノを蹴り倒していたら、その人物を追い出すだろうと思います。でも、彼にはそんなことできないんです」

「でもあの感情的な状況では、彼を助ける最善の方法が分からなかったんです。というか、正面から向き合わなかったんです」

■グロージャンを助けられなかった

 当時グロージャンに何を言ったのかと尋ねられると、小松代表はこう語った。

「それが問題なんです。何か、意味のあることを、彼に提供できなかったんです。私にもっと人生経験があれば、もっと違う方法で対処できたと思います。彼が抱えていたどんな問題も、一緒に乗り越えられたはずです。そうすれば、状況は大きく変わったかもしれないです。今ならどうすればいいか分かりますが、当時はどうしてもそれができなかったんです」

「でも数年前に、インテルラゴスでロマンに会った時に、こう言ったんです。『あの時、僕には人生経験が足りなかったから、君を助けられなかった。あと5年人生経験があればよかったんだ……そうすれば違う方法で、君をあのどん底から救いだすために、君と一緒にそのための道のりを歩むことができただろう。鈴鹿だけじゃなく、他にも色々な出来事があったから』と」

「でもロマンは僕にこう言ったんだ。『アヤオ、僕たちは一緒に育ったよね? だからアヤオに、あの時5年人生経験を積んで欲しかったなんて思わないよ。何も変えたくない』とね。彼は素晴らしい人ですよ」

「それでも、もっと何かができたらよかったのにと思います」

 当時のグロージャンは、スポーツ心理学者のサポートを受け始めたばかりの頃だった。そのサポートは確実に功を奏し、それが彼のレースに向けたアプローチと、精神状態を大きく改善させたようだ。

 グロージャンは翌年、6回の表彰台を獲得。2016年からは新興チームのハースに移籍し、小松を誘い入れた。そこからも小松とハースの関係は継続していくことになった。

 しかしグロージャンは2020年のバーレーンGPで大クラッシュし、炎に包まれた。これが結果的に、ふたりが一緒にF1を戦った最後のレースとなった。

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