ミラノ・コルティナ五輪は大会中盤を迎え、世界中のアスリートたちの熱気が満ちている。その中で、日本のファンが最も動向を注視しているのが、スノーボード男子ハーフパイプの絶対王者・平野歩夢だ。
4年前、北京五輪で人類史上最高難度の技を成功させ、悲願の金メダルを手にした男。
しかし今大会、彼はかつてない逆境の中にいる。
1月17日の衝撃事故と復帰までの道のり
開幕を目前に控えた1月中旬、スイスで行われたワールドカップ。推定8メートルの高さから空へ舞い上がった平野は、着地でバランスを崩し、氷のように硬い雪面へ叩きつけられた。衝撃で板は真っ二つに折れ、平野は自力で立ち上がることすらできなかった。
診断は「鼻骨および骨盤の複数箇所骨折」。日常生活に戻るだけでも時間を要する重傷であり、五輪連覇というシナリオは暗転した。
それでも平野は、雪上に戻る道を選んだ。全日本スキー連盟は「骨のズレはない」と説明するが、着地の衝撃を骨盤がどこまで耐えられるかは未知数なものの、彼は再びスタート台に立つ覚悟を固めた。
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日本の冬季五輪に刻まれた“奇跡の再起”
日本の冬季五輪には、怪我や重圧を乗り越えた“伝説の瞬間”がいくつもある。
1998年長野五輪では、スキージャンプの原田雅彦が前回大会の失敗という重い十字架を背負いながら大ジャンプを成功させ、歓喜の涙を流した。
2018年平昌五輪では、羽生結弦が右足首の重傷からわずか1カ月の練習で復帰し、金メダルを獲得。痛み止めを服用しながらの演技は、スポーツの枠を超えた“奇跡”として語り継がれている。
そして2026年。平野歩夢が挑むのは、まさにその系譜に連なる「再起の物語」だ。
