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海外F1記者の視点|アストンマーティンとホンダは、期待感を抑えようとしている……!? その背景にある、ニューウェイの目論見

海外F1記者の視点|アストンマーティンとホンダは、期待感を抑えようとしている……!? その背景にある、ニューウェイの目論見

「エクゼクティブ・チェアマンとして、この瞬間を誇りに思う。なぜならこのチームを定義づけるのは、サーキットで起きることだけではないからだ。F1は勇気を要求し、並外れたモノを築き上げ、揺るぎない野心を持ち続ける者に報いる」

 アストンマーティンF1チームのエクゼクティブ・チェアマンであるローレンス・ストロールは、月曜日の夜にサウジアラビアで行なわれたシーズン発表会でそう語った。彼はチームオーナーとして、アストンマーティンF1の新たな時代について語ったのだ。ホンダとのワークス契約、今季マシンAMR26がエイドリアン・ニューウェイが手がけた同チーム最初のF1マシンであることを考えれば、それも当然であろう。新しいファクトリーと風洞も完成し、本格稼働をスタート……将来の成功に向けて、必要な要素はすべて整ったように見える。

 ストロールはさらに、今後も勝利のために必要なツールを供給すると強調。またニューウェイも、アストンマーティンはF1で最高の施設を手にしていると自信を見せる。

「この施設は他に類を見ないモノだ。ローレンスのビジョンとこの建物への投資によって、我々は間違いなくF1最高の施設を手に入れた。これは非常に大きな財産だ」

 ニューウェイはそう語った。

 しかしながら月曜日にサウジアラビアから発信されたメッセージは、その期待感とは少し異なるモノであった。アストンマーティンは主に、シーズン開幕に向けた期待感をコントロールしようとしているように見えた。ニューウェイやふたりのドライバーの発言も、同じようなモノだった。

 彼らが主張しているのは、開幕戦でのチームの立ち位置は重要ではなく、それよりもその後の開発が進捗することの方が大切……そう言っているようだ。

「今年の特徴は、新しいレギュレーションとパワーユニットの複雑さにより、誰にとっても開発のスピードが非常に早くなることだ」

 フェルナンド・アロンソはそう語った。

「だから、バーレーンでのテストや最初の数レースについては、あまり気にしていない。チャンピオンシップやシーズンの良し悪しは、シーズン前半よりも後半の方がより重要になると考えているからだ」

「だから我々にとって重要なのは、バーレーンでのテストを、マシンをしっかりと理解した上で終えること。そしてそこから、7戦目、10戦目、12戦目などをじっくりと考え、明確な開発の道筋を見据えていくんだ」

 一方でランス・ストロールは、開幕戦でジョージ・ラッセル(メルセデス)が30秒もの差をつけて勝つだろうと冗談を言った。ただ、本音の部分もあっただろう。

■ホンダの状況は?

 アストンマーティンは、長期的な戦いになることを覚悟している。その背景には、一体何かあるのか?

 まず第一に、新たにパワーユニットパートナーとなるホンダとの関係性が挙げられる。ホンダはこの数ヵ月、非常に慎重な姿勢をとっている。まあこれは、日本人の気質と言うこともできなくはないだろう。しかし同時に、レッドブルと連携していた時期とは多少異なることも事実だ。

 ホンダは2021年限りで、F1からは一旦撤退した。その後もホンダ・レーシング(HRC)を介してレッドブル・グループにパワーユニットを供給してきたが、2021年に一度撤退した際に、担当していた多くのエンジニアが、他の研究開発部門に移動している。2026年からF1復帰が決まったことで、ゼロからではないものの、プロジェクトを再構築する必要があった。

 また、開発拠点が日本にあるということは、メリットにもデメリットにもなる。

 HRCの渡辺康治社長はアストンマーティンの発表会で、こう語った。

「我々のエンジニアは、シルバーストン(アストンマーティンのファクトリー)へ頻繁に通っています。またアストンマーティンのエンジニアたちも、日本の我々のファクトリーで一生懸命働いています」

「距離は、それほど大変なことではありません。飛行機代だけは、他の欧州のメーカーに比べて少しデメリットになるかもしれませんけどね」

 さらに渡辺社長は、次のように続けた。

「時差は、時には我々にとって有利に働くことがあります。日本で仕事が終わった時にシルバーストンに質問を送っておくと、翌朝には回答が届いているということがあります。いわば、24時間開発が続けられるということができるでしょう」

 また、圧縮比の”抜け穴”問題については、まだ論争が続いており、解決の糸口が見えていない。その結果次第で、ホンダにまつわる状況も大きく変わるだろう。また、もしパフォーマンスが劣っていても、それを補うためのADUOという救済システムがある。

「もちろん、まだあんまり情報はないよ」

 そうアロンソはホンダの現状について語った。

「皆さんが知っている情報、つまりホンダが、少し遅れていると言っていたということしか知らない」

「しかしこれは長期的な戦いだ。たとえ少し遅れてスタートしたとしても、追いつくための時間は十分にあると確信している。シーズン後半が、前半よりも重要になると思う」

■ニューウェイの、開発の余地を残したコンセプト

 興味深いことに、この考え方はニューウェイのデザインにも反映されている。新しい風洞の完成を待ったこと、そしてニューウェイがアストンマーティンに加入したのが3月だったため、AMR26の開発に着手するのは、他チームよりも遅かったという。まあ、ニューウェイがアストンマーティンに加入する前、ガーデニング休暇を過ごしていた期間にも、AMR26のコンセプトを考えていたようだが。

 バルセロナで行なわれたシェイクダウンテストに登場したAMR26のデザインは、一見したところ非常にアグレッシブで、大いに注目を集めた。しかしニューウェイは、これもまだほんの第一歩に過ぎないと語る。

「今年は大幅に開発が進むだろう」

 そうニューウェイは語った。

「多くのチーム、ある程度は我々も含め、バルセロナでのテストを走ったマシンと、開幕戦で実際にレースに出場するマシンは、かなり違うモノになるだろうと思う。このペースは、シーズンを通じて続くはずだ」

 まさにこれこそ、ニューウェイのアプローチにおいて極めて重要だった点だ。何よりも彼は、開発の余地を残したコンセプトを考案したかった。基本的な要素を完璧に整えておけば、その後は1シーズンかけて、ボディワークなど他の要素を調整していけばいい。

「我々は開発の余地が十分にあるマシンを作ろうと試みた」

 そうニューウェイは語った。

「避けたいのは、限られた時間で最適化してしまうことで、開発の余地がほどんど残っていないマシンを作ることだった。我々はその逆を目指したんだ。だからこそ、基本要素に徹底的にこだわり、そこに力を注いだ。ウイングやボディワークなど、シーズン中に変更できる要素には、開発の余地があると考えているからだ」

 ニューウェイがここで言う”基本”とは、全体的なコンセプトと前後のサスペンションのことを指しているはずだ。ライバルチームはニューウェイのその想像力に感銘を受け、特にマシンのリヤエンドのデザインを「極限」だと評価する。

「まずはクルマ全体のパッケージングから始まる。ホイールベースの上で車体をどこにおくか、主要な重量物をどこに置くかということだ」

 そうニューウェイは語る。

「そして前後のサスペンションへと繋がっていく。前後のサスペンションは、気流の領域の制御において、それぞれ非常に重要な役割を果たす」

 ニューウェイがAMR26の基礎を正しく理解していれば、それは少なくとも強固なモノとなり、シーズンを通じて大きく発展していくはずだ。発表会で「開発」という言葉が多用された理由、そしてチーム内で開幕戦でベストなパフォーマンスを発揮するよりも、シーズン後半での躍進を目指すことを重要視している理由も、それで説明がつく。

 さて、アストンマーティンAMR26の真価・進化はいかなるモノになるだろうか?

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