
アメリカの研究チームが発表した最新の研究によると、日常的に読書や執筆、外国語学習などの知的活動に取り組んできた人は、そうでない人に比べて、アルツハイマー病の発症リスクが最大で約40%低い可能性があることが示されました。
認知症は2050年までに世界で1億5000万人以上に増えると予測されている深刻な疾患です。
その中でも最も多いのがアルツハイマー病です。
今回の研究は、日常の「読み書き習慣」がそのリスクにどう関わるのかを検証したものです。
目次
- 生涯の「知的刺激」がカギだった
- 発症リスクが約38%低く、発症も5年以上遅れる
生涯の「知的刺激」がカギだった
研究は、シカゴのラッシュ大学医療センターの研究チームによって行われました。
研究開始時に認知症を発症していなかった平均80歳の1939人を、平均8年間追跡しています。
参加者は、自分の人生を3つの時期に分けて振り返りました。
まず18歳以前の「早期」。読み聞かせの頻度や読書習慣、自宅に新聞や地図帳があったか、5年以上の外国語学習経験があるかなどが評価されました。
次に中年期。40歳時点の所得、辞書や雑誌購読、図書館カードの有無、博物館や図書館を訪れる頻度など、学習環境の豊かさが調べられました。
そして高齢期。読書や執筆、ゲームの頻度、年金などの収入状況が評価対象となりました。
これらを総合した「生涯の知的刺激スコア」をもとに、最も高い上位10%と最も低い下位10%を比較したのです。
発症リスクが約38%低く、発症も5年以上遅れる
追跡期間中、551人がアルツハイマー病を発症し、719人が軽度認知障害を発症しました。
生涯の知的刺激が最も高い群では、アルツハイマー病を発症した人は21%でした。一方、最も低い群では34%が発症していました。
年齢や性別、教育歴などを統計的に調整した結果、知的刺激が高い人はアルツハイマー病のリスクが38%低く、軽度認知障害のリスクも36%低いことが示されました。
さらに注目すべきは発症年齢です。
知的刺激が最も高い群では、アルツハイマー病の平均発症年齢は94歳でした。最も低い群の88歳と比べて、5年以上遅れていたのです。
軽度認知障害でも同様に、85歳対78歳と、約7年の差が確認されました。
つまり、知的刺激は「発症を完全に防ぐ」わけではないものの、「発症を遅らせる」可能性が示されたのです。
今日の一冊が未来を変えるかもしれない
研究者らは、高齢期の認知機能は「生涯にわたる知的に豊かな環境への曝露に強く影響される」と述べています。
図書館や早期教育への投資が重要だという提言もなされています。
ただし、この研究は因果関係を証明したものではありません。若年期や中年期の経験は高齢になってから自己申告されたものであり、記憶の正確さに限界がある点も指摘されています。
それでも、読書や執筆といった習慣が、将来の認知機能と関連しているという事実は心強いものです。
もし本棚に積んだままの一冊があるなら、今日ページをめくることは、未来の自分への投資になるかもしれません。
静かな読書の時間が、あなたの脳を何年も若く保つ可能性があるのです。
参考文献
Reading and writing can lower dementia risk by almost 40%, study finds
https://www.theguardian.com/society/2026/feb/11/reading-writing-lower-dementia-risk-study-finds
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

