●転倒・回転・流水試験を徹底
では、パームインの心臓部である彦根工場で、初公開された試験工程を見ていこう。まず最初は、転倒試験工程。パームインは手に収まるほど小さいため、落としたり転がったりしたときの堅牢性や耐久性が求められる。デザインはいいけど、すぐに壊れてしまうことはあってはならないのだ。
工程では、パームインを載せた左右のテーブルが上下に動きながら、パームインを回転させたり、落としたりする。従来のシェーバーより格段に小さい本体に、部品や小さな基板を詰め込んでいるが、過酷な環境下でもシェーバーとしての高性能を維持しなければならない。
次は、パームイン以外の製品で実施するスイング寿命試験。独自技術である「密着5Dヘッド」という、ヘッド部が360°全方位に傾き自在に動くリニアモーターのサスペンションの寿命を試験する工程だ。ヘッド部を上下に動かすだけでなく、独自の方向にも動かしながら試験する。
試験工程の最後が、パームイン以外の製品で実施する流水試験。流水試験機に複数台のシェーバーを入れて、あらゆる方向から水を噴射させて試験する。1981年に世界初の防水シェーバーを発売したパナソニックのこだわりの試験だ。
●匠の技を継承するためにAIでディープラーニング
次の公開ポイントは、匠の技を要する「外刃開孔検査」。刃穴の開き具合や変形・欠けなどの不具合を、この道20年の熟練工が触感や目視で確認する検査だ。その精度は、数マイクロミリの欠陥を瞬時に見つけ出すほど。この基準をクリアした熟練工が、次から次へと流れてくる外刃の全数を検査している。最高品質の刃だけを製品化するというこだわりがある。
初公開では、新しい取り組みとして、匠の技術を継承するために、熟練工の目視でチェックする経験値を、AIでディープラーニングさせている工程を披露した。「全自動ディープラーニング画像検査装置」という装置にAIと高解像度の4Kカメラ7台を設置し、1枚の刃にある「ひげを切る面」と「肌に触れる面」の不良品を選別する。
具体的には、7台のカメラでとらえた7系統の光学系の高画質画像を、前処理と後処理に分ける「ハイブリッド判定処理」をする。前処理では、サイズや破れなど比較的簡単で高速に判定できるものでOK/NGを判定する。このとき、OK/NGを識別できずに「不明」となったものは、後処理の複雑で低速のディープラーニングによる判定に移行する。微細な傷やバラつきを見ながらOK/NGを判定する。最後に1カ所でもNG判定なら、除外となる。
実は、全数を後処理のディープラーニングで判定する手法も考えられるが、その場合、処理時間が遅くなる上、設備投資も高額になる。ハイブリッド判定処理は、コストと生産性を考えた上での現状での最適解というわけだ。
もっとも、技術が進歩すれば全数のディープラーニング判定も可能になるだろう。これまでも、光の特性を高速処理する画像検査技術の向上や光学機器、通信速度の向上、AIの発展など日進月歩で進化するテクノロジーにより、「不可能」とされていたことを可能にさせているからだ。
膨大で複雑かつ微細な匠の技による判定をAIに学習させることで、検査効率は50%向上したという。

