●自動倉庫の導入で保管スペースを約3分の2に圧縮
最後の工程が、製品組み立て工程における組立式の立体自動倉庫システム「ラピュタASRS」の導入と、パームインの基幹デバイスであるリニアモーターの新自動機組立機とU字型のパームインシェーバー組立工程だ。
順を追ってみていこう。ラピュタASRSの導入で、仕掛在庫の置き場の効率化と、作業の効率化を実現した。以前は在庫の置き場を入庫、保管、出庫の三つのエリアで平置きしていた。増産体制を敷くときの仕掛在庫の対応が課題となっていた。
立体的な空間を有効に使えるラピュタASRSは入庫、保管、出庫を自動で同時に行える。具体的にはロボットが部品を入れるケースの下に入ってケースを持ち上げて自動搬送する。約1700カ所あるスペースのうちの1カ所を指示して入庫・保管・出庫する。これらピッキング指示を自動化したことで、作業の効率化と人的ミスを大幅に削減した。
刃は約20品番、成型部品は約60品番ある。一つのシェーバーは外刃や内刃、リニアモーターなどブロック単位では15~20からつくられる。電子部品などを含むと桁違いの数に及ぶ。これらの仕掛在庫を、ラピュタASRSがさばいていく。
自動倉庫の導入により、天井高を最大限にいかす立体的な保管が可能になった。実に、従来の約3分の2の面積に圧縮、約150平方メートルのスペースを創出した。そのスペースに生産設備を拡充して、生産効率を上げるのだ。
ラピュタASRSの導入では、グループ会社のパナソニック コネクトとの連携も見逃せない。自動倉庫というハードを導入するだけでなく、人とロボットが協調するシステム面での連携や、ロボット制御プラットフォームとの連動、さらに経営全体の上位システムであるERPとの連携など統合的な連携が欠かせない。組織の壁を越えた全体のシステム連携には、パナソニック コネクトの知見が反映されている。
●人とロボットの協働にもチャレンジ
見学会では、今後導入していく人とロボットの協働作業のデモを披露した。自律走行搬送ロボット(AMR=Autonomous Mobile Robot)が人や物を避けながら部品の入ったケースを到着ステーションまで運ぶ。到着ステーションの部品を、ラピュタASRS用のケースにロボットで移載する。
デモでは、ビニール袋に入った部品を破ったり、落としたりすることなくスムーズに移し替えていた。シェーバーで使われる部品やその荷姿は千差万別。上部に搭載しているカメラが、荷姿や位置を把握しながらピックアップして移載する。移載したケースは、ラピュタASRSの保管場所へ自動搬送されていく。
次に、リニアモーターの新自動機組立機では、多品種の組み立てに対応した新規設備を導入した。従来は自動機生産3品番とセルライン生産3品番の合わせ技で組み立てていたが、今ではすべて自動機生産で7品番を組み立てている。生産能力は1割アップし、品種切り替えの時間は従来より8割も短縮した。
最後に、パームインシェーバー独自の組立ラインだ。グリップ式シェーバーはオーソドックスな一直線のI字ライン(23工程)だが、パームインでは、新たに人と協働するロボットを3台導入したU字ライン(19工程)を採用。導入効果から先に言うと、工程数は20%削減、従業員一人当たりの生産性は125%向上、ライン面積は30%削減という大きな効果を得た。
U字ラインの流れはこうだ。まず半完成品の部品を供給する手段に協働ロボットを活用。ロボットが取り出した後は、半田づけ設備で基板に部品を半田づけする。その後、自動電流検査で人とロボットが協働して実施する。検査工程では部品の取り出しと、検査機への投入をロボットが自動で行う。
検査でOKだったものが次工程に流れ、人による外観や性能の検査を実施。完成品として出来上がったものを梱包する際は、作業支援カメラを活用する。取扱説明書やポーチなど漏れがなく入っているかをカメラでチェックする。箱詰めする際は、万が一抜け漏れがあっても検知できるように、すべてのパーツが入っていることを重量で確認した上で出荷となる。
シェーバーのイメージを覆してユーザーに驚きと感動を与え、所有欲を刺激するパームインは、新しい需要の創造に成功して大ヒットを飛ばしている。そのモノづくりを支える彦根工場でも、匠の技術を継承するためのAIの活用や、人とロボットによる協働など新しい取り組みにチャレンジしつづけている。70年に及ぶモノづくりの現場における知見と、新たに挑戦しつづける姿勢が、パームインという斬新な製品を生み出した土壌になっているのだろう。(BCN・細田 立圭志)

