味よりも「物語」が先。常識破りの“逆算”モノづくり
現在チーフブランディングオフィサーに就任している北村さんですが、2016年の中途入社時には広報として入社しています。のちにオンライン事業の責任者を経て現在のポジションに就任しますが、広報としての経験は現在のBAKEのブランディングにも影響を与えているのだそう。
「それまでBAKEでは『圧倒的に美味しいチーズタルトがある→どうやって売ろう』という考え方だったのが、近年は『こういう体験を提供したい』から逆算してブランドをつくっています。
広報出身だからできた「伝わる」コンセプト設計
たとえば2025年12月から新たに立ち上げたブランド『TeaDrop.』なら、コロナ禍を経ておうち時間を豊かにするためにルームフレグランスの人気が高まってきたことがブランドのきっかけ。特に紅茶の香りに注目が集まっていたこと、男女を問わず万人受けする香りということもあり、お菓子にしたら面白そうだなと考えました。そこからどんな商品なら紅茶の香りが一番伝わるだろう、どういう箱のデザインなら手土産としてご満足いただけるのか、と一般的なお菓子の作り方とは逆の手順で考えていきました」(北村さん)

じゅわっと紅茶の滴るような味わいが広がる『TeaDrop.』のティードロップケーキ
これまでとは逆の手順でブランドを作り上げていくことになり、開発担当やデザイン担当など各部署が混乱してしまいそうですが、北村さんは「目線を合わせながら全員でつくることを意識している」と話します。
「それぞれの部署の立場で見え方が異なりますから、ブランドを作り上げる過程では何度も話し合って『こんなコンセプトはどう?』『こんな要素を加えたらどう?』と意見を出し合います。『しろいし洋菓子店』でいえば、SNS担当者がマンションや住人の構想を出してくれました。その方がSNSの更新がしやすいと感じたからだそうです。
パッケージデザインもインハウスのデザイナーが担当しています。化粧品のパッケージデザインをしていた方など様々なバックグラウンドのデザイナーが在籍しているので、面白い発想でお菓子を捉えてくれています。関わっている社員全員が当事者意識を持ってブランドを作り上げていると感じますね」(北村さん)
「1人のアイデアなんてたかが知れているし面白いものはできませんから」と話す北村さん。複数人が携わることで何度も脱線しそうになったりブランドの軸がブレそうになったりするといいますが、「その膨らませている時間がすごく大事だし、それがBAKEのブランドの作り方」と断言します。
あえて「効率」を捨てる。BAKE流・ヒットの美学
他メーカーとは逆プロセスのブランドの作り方に加え、BAKEでは「お客様の期待値を超える、そのために味に妥協しない」ことを重視しています。
8割の人が「美味しい」と感じる味の正解
そのための味覚の基準となるのが「8割主義」という考え方です。
「美味しさは人によっても好みがあり異なるものだと思いますが、もともと“1ブランド1プロダクト”を採用していたこともあって、お客様に味が受け入れられないとブランドを維持できない危機感は常にありました。そこでBAKEでは『8割主義』という考え方を大切にしてきました。これは10人いたら8割の方が知っている美味しいと感じる商材で勝負をしようというものです。『チーズタルト』とか『アップルパイ』とかは味をイメージしやすいですよね。BAKEがブランドを作るときに主要となる食材には何味かわからないものは選びません。8割のお客様が美味しいと感じる商品になるように設計していますね」(北村さん)
手作業で詰めるクッキー缶。「売れるから増産」はしない
そして「効率だけを追い求めること」はしません。BAKEのオンラインサイトを見るとしばしば「売り切れ」となっている商品があり、「売れるならもっとたくさん作れば良いのに」と思うかもしれません。しかし現時点で「これが限界」だそうで、大量生産することは諦めているのだそう。
「特に『しろいし洋菓子店』のクッキー缶は複雑な形状で、ひとつひとつ手作業で詰めています。開けた時のワクワクやサプライズ感を妥協すればもっとたくさん作れるかもしれません。でも絶対にやりません。デザインやクッキーの形状は他社さんがマネしようと思えばいくらでもマネできると思いますが、効率を考えるとどこもやろうとは思わないと思います」(北村さん)
近年の食トレンドでもある「体験」を提供するブランドであること、そして味への徹底的なこだわりがテイストの異なるブランドを成功させ続ける秘訣でした。「ただ美味しい」だけでなくワクワクする“体験”時間も提供するBAKEのお菓子であなたも幸せになりませんか?
文・撮影/松本果歩
