午後でも残る、手つかずの斜面
無欲の勝利か。スキー教室の子どもたちが、意図せずパウダー争奪戦に勝ってしまう。パウダーの上を、列をなして優雅にトレインしていく。そんな光景は珍しくなく、午後になっても手つかずの斜面が残っている。慌てることなく、急かされることもなく、極上のパウダーを味わえる。この“余白”こそが、ひだ流葉最大の贅沢かもしれない。

「自然のまま」が一番の魅力に
6年前、管理会社の撤退を機に、このスキー場の経営に関わることになったのが、10年以上市の職員としてスキー場を担当していた新家さんのお父さんの新家行夫さんだ。「なくなるのは寂しい」という地元の声が、その背中を押した。
奥美濃エリアでは、大手資本による人工降雪機の増設などが進む一方、ひだ流葉は自然雪に頼らざるを得なかった。伐採されたままのコース、手を加えられなかった山。
しかしその“やむを得ず自然のまま”だった環境が、いまパウダー人気とともに価値として見直されている。時を経て、時代のほうからひだ流葉に歩み寄ってきたのだ。

夕方、山頂リフトに乗り込む新家さんの姿を見つけた。毎日欠かさず行っているという、リフトクローズと最終滑走者の確認だ。リフトの営業終了時刻を過ぎても、夕焼けに染まる別世界から離れがたく、雪の上に座り込む若者の姿もあった。

営業終了後、事務所に戻ってきた新家さんに声をかけると、まだまだ忙しそうに「これから造雪です」と言って、暗くなったゲレンデへと再び向かっていった。
「大規模な設備投資は難しくても、雪造りやコース整備、お客様対応など、できることを丁寧に続けていきたい」
その背中に、このスキー場の未来が、静かに重なって見えた。
Photo:Tomohiro Watanabe
Editor:Mayumi Hatano
Information
ひだ流葉スキー場
〒506-1154 岐阜県飛騨市神岡町伏方150
公式サイト:https://hida-nagareha.com/
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