
スタメンの大胆変更、判定に猛烈アピール。「僕は正直な人間」“槙野流”で藤枝が初勝利「ミーティングの工夫は60クラブの中で一番やっている」
2026年のJリーグ百年構想リーグで、最も注目されている監督の1人と言えるのが、今季から藤枝MYFCの新指揮官に就任した元日本代表DFの槙野智章監督だ。
2022年の現役引退から丸3年でJFA公認Proライセンスを取得し、いきなりJ2クラブの采配を振るうというのは異例の出来事。その分、周囲の期待も大きい。
ところが、2月8日の開幕・FC岐阜戦は0-2の敗戦。J3のクラブを相手にホームで黒星発進というのは予期せぬ出来事だったに違いない。
「開幕戦では攻撃の課題があった。1つのボールに対して動く質、頭を使ったランニングが足りなかったので、そこをミーティングや練習で落とし込みました。ミーティングは長く話せばいいわけじゃないし、その工夫は60クラブの中でも一番やっている。色のあるミーティングをやっていると思います。
僕は正直な人間なんで、『ダメなことはダメ』と選手たちに伝えました。個別ミーティングもしましたし、映像を出しながら課題を指摘したり、自分の現役時代の映像を見せた選手もいます。僕自身は気持良くなってましたけどね(笑)。効果は選手たちに聞いてみてください」と、指揮官は冗談を交えながら1週間のアプローチを語った。
現役時代の槙野監督に憧れて今回、藤枝への育成型期限付き移籍を選んだという永野修都は「槙野さんの映像を見ました。自分はセンターバックなんで、そのプレーは本当に参考になります」と前向きに言う。
「今の藤枝では、後ろからしっかり攻撃を作ってチャンスにつなげるところを強く求められています。自分もそこには自信を持っているので、より前面に出していこうと思いました」ともロス五輪世代のDFは話しており、3バック中央に陣取ったこの日は、ボールを持ち出したり、ビルドアップに関与するシーンが増えた印象だ。
若手を伸ばすという意味では、スタメン5人変更という大胆起用も大きかった。開幕2戦目でキャプテンの中川創やエースFW矢村健をベンチスタートにするのは、かなり思い切った決断。それでも槙野監督は自分の見る目を信じて、新たな戦力を送り出したのだ。
特に輝いたのが、立正大から加入した大卒新人の左ウイングバック中村優斗。傑出した1対1の突破力は効果抜群で、59分に左サイドでFK奪取、75分にPK奪取。これらを古巣対戦となった新10番・菊井悠介が得点につなげ、終わってみれば2-0の勝利。待望の槙野体制初白星を手にしたのである。
「開幕戦はバックパス、横パスで相手に対する怖さを与えられていなかった。彼の1対1の推進力や切り込む姿勢というのは、間違いなく大きな武器になるなと感じました。本人には『もっとできる、これに満足するな』と伝えましたけど、若い選手は1つの試合、プレーをきっかけに大きく化ける可能性がある。今後が楽しみです」と指揮官はチャンスを活かした新戦力に手応えを感じた様子だ。
もう1つ、槙野監督の立ち振る舞いで興味深かったのが、52分のレフェリーへの抗議。中村優の仕掛けからペナルティエリア内で倒されながらノーファウルで流されたことを不服に感じた指揮官は、オーバーアクションで猛烈にアピール。警告を受ける形になったが、凄まじい気迫と闘争心が選手たちに伝わったのは間違いない。
「外から見ている監督がイエローをもらうくらい戦っていたんで、中の選手ももっともっと戦わないといけないと思いました」と浅倉廉も神妙な面持ちで言う。そういう活力を与えるべく、槙野監督はあえて過剰なほどのアクションを起こしたのだろう。
「スタジアムの空気を変える、流れを変える意味で、少しレフェリーに熱く行こうというのはありました。チームには迷惑をかけましたし、選手にも止められましたけど、スイッチは入ったのかなと。選手たちの方がよっぽど大人ですね」と本人は苦笑していたが、それも槙野流。結果的に待望の勝利を手にしたのだから、藤枝にとってはポジティブだったと言っていい。
こうして選手たちのマインドに働きかけながら、主導権を握り、相手を圧倒するサッカーを体現しようとしている槙野監督。この日は、Jリーグ最多となる860試合目の采配となった石﨑信弘監督との対戦だったが、2戦目の新人指揮官が勝利する形になり、多少なりとも自信が深まったのではないか。
「石﨑さんは、僕の出身地・広島の大先輩でもありますし、Jリーグで名将と言われている方。その方を超えようなんて、まだまだ思えないですけど、自分なりに準備して臨みました。まだ近づけたとも思えませんけど、僕もそういう方々に並べるようになりたい。チームを昇格させ、タイトルを取ることを学んでいかなければいけないですし、自分自身を成長させていきたいと思います」
大先輩の石﨑監督への敬意を払いつつも、新たな闘志を燃やした槙野監督。ようやく1つのハードルをクリアしたわけだが、本当の戦いはここから。百年構想リーグで強固な基盤を作り、26-27シーズンにつなげていくことが肝要だ。38歳の青年監督の一挙手一投足から今後も目が離せない。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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