
俳優の松坂桃李と染谷将太が、9月30日に都内で開催された劇場アニメ「ひゃくえむ。」公開御礼舞台あいさつに登場。岩井澤健治監督と共に公開後の周囲の反響などを語った。
■100m走の世界に魅せられた者たちの“狂気と情熱”の物語
同作は、魚豊氏の同名漫画を原作に、一瞬で全てが決まる100m走の世界に魅せられた天才肌の主人公・トガシ(CV:松坂)と、その影響を受けて陸上の世界に足を踏み入れた努力型の小宮(CV:染谷)が、「走り」に没頭していく狂気と情熱を描いた物語。国内外の多数の映画賞で高い評価を受ける気鋭のクリエーター・岩井澤氏が監督を務める。
9月19日に劇場公開されてから11日目になるが、松坂は「陸上をやっていない方が見に行ってくださって熱量のあるメッセージをくれたり、普段連絡をくれないような方が感想をくれたりしてすごくうれしいですね。『実写を見ているような感覚に陥った』と言ってくれる方もいて、うれしかったです」と、周囲の反響を明かす。
一方、染谷は家族で劇場に見に行ったそうで「上映が終わった後、『面白かった』って素直に言葉に出してくださっている方がたくさんいて鳥肌が立ちました。感想を言葉にされる方が多くてうれしいな、とかみ締めましたね」としみじみ振り返り、岩井澤監督も「思った以上に熱狂的に受け取っていただけて、公開してからも熱量のある感想が多いので、本当に作って良かったなと素直に思いました」と、公開後に寄せられた好意的な反応を喜んだ。
本作の中で、大雨が降りしきる中で開催された高校全国大会男子100m決勝のレースシーンは、全尺3分40秒のワンカットで描かれ、制作に約1年間を費やし、総作画枚数は約9800枚(推定)に及んだという監督のこだわりが詰まったシーンになっている。
そのシーンについて、松坂は「あの雨のシーンだけで1年ですよ?すごくないですか?狂気ですよ(笑)」と驚きながら観客に訴えかけつつ、「鳥肌が立ちました。アニメーション作品でこんなカット見たことない!とまず思いました。何だろうこの感覚、初めて味わうというか、変な感じになりましたね。こんな表現ができるんだ!って思って、後半はうれしい気持ちになりました。可能性ってこんなに広がるんだなと。監督すごいですね。スタッフの皆さん、お疲れさまでした」と脱帽するとともに、監督をはじめとしたスタッフ陣にねぎらいの言葉をかけた。

■松坂、“勝負日の前日”は「しっかり備える」
そんな中、さまざまな2択の質問に答える企画も実施。「勝負日の前日の過ごし方は『普段通り』or『しっかり備える』」という質問に、松坂は「しっかり備える」と答え、「本当は普段通り過ごしたいんですけど、例えばクランクイン初日とか、もう1回台本を読んでおこうかなってソワソワして、大体寝不足で初日を迎えるんですよ。遠足前日の小学生のネガティブ版みたいな…(笑)」と独特の表現で説明。
続けて「小学生の遠足の前日は『明日遠足だ!うわ~楽しみで寝られねえ』ですけど、『うわ~明日初日だ、どうしよう?寝られねえ』って。そっちです」と打ち明け、その解消法については「何回か台本を確認して、『まあいいか。う~ん…(悩むしぐさ)』の繰り返しですね」と伝えた。
それを受け、染谷は「すっごい気持ち分かります。自分も心配性で初日の前とか寝られなくなっちゃうんで、普段通り過ごそうと。格好つけて言えば、現実逃避しているというか(笑)。海棠(CV:津田健次郎)みたいに現実を受け止めて逃避しているわけではなく、ただただ逃避して、なるべく普段通りに過ごそうとしています」と松坂の気持ちに理解を示しつつ、自分は「普段通り」過ごしていることを明かした。
岩井澤監督も「普段通り」を選び「ジタバタしてもしょうがないかなって、なるようになるしかないかなと思って」と達観した考えを示すと、松坂は思わず「いやぁ~そういう心持ちになりたい」と羨望のまなざしを向けていた。
また、「燃えるのはどっち?『ライバルとの勝負』or『自分との勝負』」という質問には、3人とも「自分との勝負」という答えを選んだ。
松坂は「やろうとしていることを妨げるのは大体自分だと思うんで。『はぁ~台本読まなきゃ、面倒くさいな、どうしよう』って(笑)。大体邪魔するのは自分なんですよ。どれだけ妨げる自分に打ち勝てるかって感じです。だから“自分の敵は自分”ということですね」と話すと、染谷も「自分に打ち勝たないと前に進まない。桃李くんと全く一緒です」と同調。
そして、その上で「自分と戦って勝てないとカメラの前には立てないという気持ちです。『これは俺にできんのか?』ということと直面したときは、自分に勝つしかないけど、ある種“諦めの境地”で、とりあえずやってみようということもあるかもしれないですね」と、持論を展開していた。
「ひゃくえむ。」は全国公開中。
◆取材・文=月島勝利(STABLENT)


