
桃太郎を題材に、鬼の血を引く者たちと桃太郎の血を引く者たちの争いを描くTVアニメ「桃源暗鬼」(毎週金曜夜11:00-11:30、日本テレビ系/ABEMAにて先行配信、ディズニープラス・FOD・Hulu・Lemino・TVerほかで配信)の第十一話が9月19日に放送された。たとえ子供でも鬼なら容赦しない冷酷な桃太郎機関戦闘部隊の隊長・桃宮唾切。そうなるに至った過酷な過去が明かされ、視聴者の心を揺さぶった。(以降、ネタバレが含まれます)

■桃宮唾切の意外な過去に揺さぶられる視聴者多数
鬼神の力“炎鬼”を覚醒させた一ノ瀬四季(CV:浦 和希)の攻撃により重傷を負った桃宮唾切(CV:岸尾だいすけ)。薄れゆく意識の中、自身が操る人形であり、かつて上司だった桃部真中(CV:水中雅章)との過去を思い出す。第十一話では、唾切が鬼なら子供でも容赦しない理由が明らかになった。
幼い頃、鬼に両親を殺された唾切。しかし、不思議と悲しみは湧かず、大人になってからは桃太郎機関の研究室で鬼を淡々と解剖する日々を送っていた。そんな中、戦闘部隊の隊長だった真中から強引に誘われる形で彼の部隊に配属される。さらに真中は唾切を妻と幼い娘と暮らす自宅に連日招き、食事を振る舞った。
真中は唾切が失った心の体温を取り戻させようとしていたのかもしれない。実際、唾切の心は真中との交流により、少しずつ変化し始めていた。だが、ある日事件が起きる。真中は情に厚く、自分が殺した鬼にも手を合わせるような人だった。ゆえにある任務で、本来なら始末するべきだった鬼の子を、自分の子と重ねて取り逃がしてしまう。その鬼の子は町へ出た先で暴走し、通行人を殺害。不運にも、そこに真中の妻と娘も居合わせていた。
真中は鬼を殺したが、庇いきれずに妻と娘は絶命。真中自身も致命傷を負い、唾切に「鬼に情を持つなんて間違ってた。もっと常に冷酷でいれば、家族も死なずに済んだ」と後悔を語る。そして「鬼は、即滅殺すべきだ。子供でも容赦しちゃダメだ」と唾切に警告し、自分の死体を使うように命じたのだ。
真中の死体を操り、隊長にまで上り詰めた唾切。以前の彼なら、亡き人の思いを繋いでいくことなどしなかっただろう。鬼に対しては冷酷無慈悲だったが、人としての心はちゃんと持っていたのだ。
最後は、駆けつけた無陀野無人(CV:神谷浩史)によってトドメを刺され、妻と幼い子供を残したまま、享年31歳でこの世を去った。大事なものは自分の弱点になると思っていた唾切が、家族を持ったのは真中の影響に違いない。
誰もが知る童話『桃太郎』を題材とした本作。主人公は鬼で、敵は桃太郎だが、どちらが正義で、どちらが悪かという単純な二元論では語れない複雑さがこの物語にはある。
桃太郎側にも正義があることを実感させるエピソードに、視聴者も「唾切はとことん嫌なヤツだと思っていたのに最後あんなエピぶちこんでこないでよ〜心あるじゃん…ってなったよ〜」「鬼に対して冷酷で思考がヤバい奴みたいな印象だった人が、実は心の底には熱い思いがあったとかしんどすぎる」「主人公が鬼側だからどうしてもそっちの方応援しちゃうんだけど、唾切さんに娘がいるの知って思わず揺らいだ」と心を揺さぶられていた。

■再び学園生活が始まるも、またもや波乱の予感
唾切にかろうじて勝利するも、満身創痍で倒れてしまった四季。無陀野や皇后崎 迅(CV:西山宏太朗)が駆けつけると、なんと花魁坂京夜(CV:木村良平)が治療に当たっていた。花魁坂といえば、第七話で唾切に頚動脈を切られて絶命したはず。だが、鬼の回復力を何倍にも増加させる自身の血を飲み、生き延びていたのだ。これには視聴者から安堵の声が上がっていた。
翌日、四季は鬼が経営する旅館で目を覚ます。羅刹学園の新入生は一人も欠けることなく生き延び、朝を迎えることができた。その一方で、多くの同胞を失った四季たち。芽衣(CV:小岩井ことり)の両親も帰ってはこない。
しかし、羅刹学園に帰る四季たちを見送りにきた芽衣は笑っていた。それは四季が鬼にも幸せになる価値があると訴え続け、かつその幸せのために諦めず鬼と戦う姿を彼女に見せたからだろう。四季もこの京都で、父親を殺した桃太郎への復讐以外に鬼と戦う理由を見つけられたのではないだろうか。
改めて学園生活が始まり、四季たちは寮の部屋決めをすることになる。部屋は2人1組だが、新入生は7人。余った一人は無陀野と同室になることに。それは何としてでも避けたい四季たち。他にも手術岾ロクロ(CV:三浦 魁)と同室になりたい漣 水鶏(CV:愛美)や一人部屋がいい矢颪 碇(CV:坂田将吾)など、各々が好き勝手に主張し、話がまとまらない。結局はくじ引きで決めることになり、よりによって四季は犬猿の仲である皇后崎と同室になった。花魁坂から四季が鬼神の子であることを聞かされた皇后崎は普段よりも喧嘩腰で、「調子にのんじゃねーぞ」と言い残して教室を去っていく。
一方、桃太郎機関では、桃巌深夜(CV:沢城千春)が燃えていた。組織での評価を上げ、かつ目の敵にしている桃屋五月雨(CV:増谷康紀)を引きずり落とすために四季を打ち取るべく動き出す桃巌。再び四季たちに波乱が訪れそうだ。
■文/苫とり子


