党ベテラン「SNSの不適切発言一発で政権を揺るがしかねない」
「2005年の『郵政解散』の際も80人以上の新人が当選して対応に追われましたが、今は当時と違ってSNSがある。不適切な発言一つが瞬時に拡散され、政権全体を揺るがしかねない。派閥の目も届かない中、彼らをどう統率すればいいのか……」
新人のスキャンダルや失言による「炎上」は、政権支持率に直結する。
「もはや野党は脅威ではないでしょう。むしろ、300人以上に膨張した党内のガバナンスをどう維持するか。その内部マネジメントの方が、対野党の攻防よりも遥かに困難なミッションになるだろう」
このベテラン職員の言葉は、独裁的な力を持った巨大与党が抱える、内なるジレンマという最大の弱点を突いている。
対する野党の惨状は、目を覆わんばかりだ。
公示前に167議席を誇り、比較第一党への躍進を掲げた野党第一党「中道改革連合」は、見る影もなく瓦解した。野田佳彦共同代表は「この結果は万死に値する」と述べ、引責辞任を表明。
合流の目玉であった旧公明党側こそ、比例名簿上位の優遇措置により28人全員が当選を果たしたが、旧立憲民主党側は148議席から21議席へと激減。最終的な議席数は49にとどまった。
党内リベラル層の逆鱗に触れた中道・小川代表
かろうじて野党第一党の地位こそ死守したものの、単独では内閣不信任決議案の提出に必要な51議席にすら届かない。野党第一党がこれほどまでに無力化したのは、戦後の憲政史上、初めての事態だ。
漂流を始めた「中道」は、2月13日に代表選を実施し、小川淳也氏を新たなリーダーに選出した。しかし、その船出は初日から荒れ模様となった。
小川氏は就任会見で、自民党が掲げる「憲法9条への自衛隊明記」について問われ、「あり得ないことではない」と言及。文脈を辿れば「思考停止せず議論に応じる」という実務的なスタンスを示したに過ぎないが、これが党内のリベラル層の逆鱗に触れたようだ。
小川氏は、その日の夜に自身のSNSで「9条護憲派の方々をも納得させる、冷静かつ実務的な議論が必要だというのが真意だ」と釈明動画を投稿する事態に追い込まれた。
さらに、沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡っても、党内の足並みは揃わない。中道の衆院議員・有田芳生氏が、沖縄の立憲県連による「辺野古移設反対」の要請書を代表選候補に手渡すなど、移設容認へと舵を切りたい現実派を牽制する。
「中道と銘打ってはみたものの、中身はバラバラ」
「中道と銘打ってはみたものの、中身はバラバラ。内政の小事では一致できても、外交・安保や憲法、基地問題といったイデオロギーが絡む国家の根幹では、融合への道筋さえ見えない。こんな体質で、強大な高市自民と対峙できるのか」
内部からも、そんな諦念にも似た声が漏れる。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、今回の選挙結果を冷徹にこう総括した。
「旧民主党政権の幹部や閣僚経験者が軒並み議席を失った。これで、本当の意味で『民主党時代』の呪縛が解け、一つの区切りを迎えたのだと思う」
小沢一郎、安住淳、玄葉光一郎、岡田克也、海江田万里、枝野幸男……。民主党政権で中枢を担い、下野後も野党共闘の象徴として君臨し続けてきたベテランたちが、一斉に「強制退場」させられた。
本来であれば、ここで一気に世代交代が進むはずだが、その受け皿となるべき期待の若手や中堅までもが落選の波に飲み込まれた。100人以上の落選者を出し、組織としての再生能力さえ疑われる状況にある。
早くも離党を表明した者も
中道の落選者の中には、早くも離党を表明したものもいれば、玉木氏のもとへ合流を打診する電話をかける者が後を絶たないという。
今後の野党は、小川淳也氏(香川1区)と玉木雄一郎氏(香川2区)という、奇しくも同郷の「香川コンビ」が手を取り合い、灰の中から再生の道を探るのか。それとも、圧倒的な物量と政治技術を持つ高市自民の波に呑み込まれ、さらなる分裂へと向かうのか。
安倍政権時代を凌駕するような、苛烈な「一強多弱」の政治。世代交代を余儀なくされた野党が、どのようにしてこの巨大な権力と対峙していくのか。その過程と結果を見極めるまで、今回の総選挙が持つ歴史的な意味は確定しないだろう。
2月18日。招集される国会を舞台に、「決戦の150日間」が幕を開ける。
取材・文/今野忍

