海外移籍が加速する金銭事情
新日本プロレスの契約更改は毎年1月末になっていて、そこで合意に至らなかった選手の退団が続出している。
「1・4東京ドーム大会」でウルフアロン選手のデビュー戦の相手を務めたEVIL選手、そしてジュニアを牽引していた高橋ヒロム選手が離脱を表明。IWGP世界ヘビー級王座のベルトを巻いたこともあるSANADA選手も年明けから欠場を続けていて、これで人気を博していたユニット「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」のメンバーのほとんどが、新日本プロレスを離れることになった。
EVIL選手、高橋ヒロム選手は海外団体への移籍が噂されているけど、この流れは止められないね。なんといってもカネが違う。2年前にオカダ・カズチカ選手がAEWに移籍したけど、そのときの契約金が3年で20億円といわれていた。このスケールに日本のプロレス団体は太刀打ちできないよ。
事実上、カネの力で選手が引き抜かれているわけで、もはや日本のプロレス界はアメリカの団体の養成所のようになってしまった。プロ野球でも同様のことが指摘されているけど、なかなか難しい問題だね。
レスラーにとって、契約金や年俸と同じくらい重要なのは権利関係なんだよ。海外の団体は売りだしたグッズや映像使用料などの権利をきっちり計算して、選手に配分するシステムが出来ている。逆に言えば、日本のプロレス団体は、このような権利問題に対してまだまだ整理されてない部分がある。
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グッズ・映像使用料が不透明
例えば、俺の昔の試合映像をテレビで使ったとする。映像の著作権はテレビ朝日と新日本プロレスが持ってるんだけど、肖像権は俺にある。だから、放送するなら俺にひと声かけないといけないんだけど、これがウヤムヤになっている。
これは写真も同じ。プロレス雑誌やスポーツ新聞などが、かつて撮った試合写真をテレビ局に貸し出したとする。出版社や新聞社にその使用料が入ってるはずなんだけど、俺にはなんの連絡もない。
テレビ局側から支払われることはあるんだけど、本当は使用料を受け取っている貸し出し側が、写真を撮ったカメラマンの著作権や俺の肖像権に対して利益を分配しないといけないはずだよね。
この前、女子プロレス団体のマリーゴールドが、以前に別団体に所属していた選手の当時の写真を使ったグッズを販売したことで注意勧告を受けていたけど、これも権利に対する認識の甘さが露呈した騒動だよね。
昔の新日本プロレスはどんぶり勘定が横行するような興業会社だったけど、オーナー企業が移ったことで内部の経理的な部分の改革が進んだ。けれど、選手に対する契約や権利、正当な利益の分配という点では、まだアップデートできていないんじゃないかな。
それこそ昔は契約書に「辞めても1年間は他団体への出場禁止」みたいなことも盛り込まれていた。破ったときの違約金は、契約金の3倍とかね。
こういった一方的な縛りや法外なペナルティーのある契約は、法律的には違反になるらしい。最近はどうなっているのか分からないけれど、会社と選手は平等という原則は守っていてほしいね。
今の時代、下手な小細工をしないで、正々堂々と契約条件を整えたほうが、結果的に選手の流出も防げると思うよ。
「週刊実話」2月26日号より
1963年シアトル生まれ。84年に新日本プロレス入団。「nWo JAPAN」を率いるなど〝黒のカリスマ〟として活躍し、2010年に退団。現在はプロレス関係の他に、テレビやイベントに出演するタレント活動、「救急救命」「地域防災」などの啓発活動にも力を入れる。
