・若狭ふぐ
なんとも奥まった場所に来ましたね。外界から隔離されてるじゃないですか……! 思わず口に出たファーストインプレッションだ。海はきれいだが、極寒の時期にできることは釣りくらいしか思いつかぬ。コンビニも無い。
こんな超絶ローカルスポットに人が来るのか……? そう思う方もいるだろう。実は阿納には「若狭ふぐ」の養殖業者による宿が複数存在する。
夏場は海水浴場となる正面のビーチの沖に、この辺の宿の人たちが所有するのであろう養殖筏が見える。
あそこで育てた「若狭ふぐ」を、そのまま調理してくれるわけだ。そして今はフグが一番美味い時期。路地では近隣の宿の浴衣を着た観光客の姿をときおり見かけた。
分かっているグルメな人たちが、フグを目当てに来ているのだろう。聞くと、「若狭ふぐ」だけでなく、ブランド養殖魚の「若狭まはた」の他、鯛などの養殖もやっているそうだ。
・極上
そして迎えた夕食の時間。まず目に入ったのはこれだ。恐らく4人分。ふぐ鍋(てっちり)の具材一式だ。
そして、これが1人分の「若狭ふぐ」の刺身。全部1人で食っていいのかい? これだけで腹一杯になりそうな量だ……!
1枚が厚い。弾力がとても心地よく、噛むと染み出てくる旨味が濃い。ふぐは淡白な魚だと思っていたが、ここのふぐは濃い。
おっと、焼きふぐもあるのかい? こいつは絶品だった! 刺身とも鍋で煮られたものとも異なる弾力があり、レア気味で食うと身がジュワジュワで魚肉感が稀薄。この旨味、どこか鹿児島の美味い鳥刺しを思い出させる。
ふぐ料理の主役は刺身で、焼きふぐはサイドキックが限界だと思っていた。しかし、それは東京クオリティの焼きふぐだったようだ。
この焼きふぐはメインを張れる。やっぱ本場は違うな。感心していたら、から揚げも出てきた。
このから揚げは極上だった!! 出てきた全てが凄まじく美味いのだが、から揚げはどこか別格で、思わず宿の人にとても美味いと感動を伝えてしまった。
特濃の出汁で、シイタケすらも ふぐ味に染まった鍋をすすり、旨味の濃い刺身を噛みしめ、焼きふぐとから揚げに唸っていたら、ふぐのヒレ酒が出てきた。
辛口の酒に、美味いふぐの風味が、これでもかと出たストロング仕様。味の濃いふぐ料理を、強いふぐ酒で流し込むという恐るべき所業だ。これを1度味わうと、もう価値観を変えられてしまう。
ここまでメイン食材が「若狭ふぐ」1種類。だが、私の主観ではこの世の全てを味わったかのような満足感がある。ふぐだけで腹八分目を軽く超えるボリュームのところ、最後にふぐ鍋のスープで作る雑炊でとどめを刺された。ふぐに溺れたという感覚だ。
でも、お高いんでしょう? そう思うじゃないですか。お値段を聞いて驚愕しました。こちら「ふぐフルコース」なのだが、オーシャンビューなツインルームの宿泊費込みで、1人当たり25000円前後(部屋毎に異なる。詳細は公式HPを参照)ですって。コスパが凄い。
