
付き合って何年もたつのに、「結婚」という言葉を出すと空気が少し重くなる。
そんな恋愛は珍しくありません。
「好きなのに、どうして結婚には踏み切れないの?」と感じたことがある人もいるでしょう。
では、結婚に前向きになれる恋愛関係には、どんな共通点があるのでしょうか。
トルコのイノニュ大学(Inonu University)の研究者は、若年成人を対象に、恋愛の満足度と結婚に対する態度の関係を調査しました。
その結果、両者をつなぐ心理的な要素として「認知的柔軟性(cognitive flexibility)」が関わっていることが示されています。
この研究は2025年12月22日付の『BMC Psychology』に掲載されました。
目次
- 恋愛と結婚を繋ぐのは大切な要素は「柔軟な思考」だった
- 「まあいいか」と言える力が、未来の選択を変えるかもしれない
恋愛と結婚を繋ぐのは大切な要素は「柔軟な思考」だった
若いころの恋愛は、そのときの楽しさだけでなく、「この先どうしたいか」という将来像にも影響を与えます。
これまでの研究でも、恋愛関係の満足度が高い人ほど、精神的な幸福感や人生満足度も高いことが知られていました。
しかし、「恋愛がうまくいっていること」が、どのように「結婚に対する前向きな態度」と結びついているのか、その仕組みはあまりはっきりしていませんでした。
そこで研究チームが目を向けたのが、「認知的柔軟性」です。
これは、物事を一つの見方に固定せず、状況に応じて考え方を切り替えたり、複数の解釈や対応策を思いついたりできる力を指します。
たとえば、ケンカをしたときに「やっぱり合わないのかも」と即断するのではなく、「今日はお互い疲れていたのかもしれない」と別の可能性を考えられる、心の中の“余白”のようなものです。
研究では、トルコ在住の18歳から29歳までの若年成人436人を対象にオンライン調査を行いました。
参加者はすべて恋愛経験のある人たちです。彼らには次の3つを測る質問紙に回答してもらいました。
- 恋愛関係の満足度
- 結婚に対する態度
- 認知的柔軟性
そのうえで、統計モデルを用いて、3つの指標の関係をまとめて分析しました。
その結果、恋愛関係の満足度が高い人ほど、結婚に対して前向きな態度を持つ傾向があると分かりました。
また、恋愛満足度が高い人ほど、認知的柔軟性も高い傾向が見られました。
そして、認知的柔軟性が高い人ほど、結婚に対しても前向きでした。
つまり、「恋愛がうまくいっていること」と「結婚に前向きであること」は直接つながっているだけでなく、そのあいだを“考え方の柔らかさ”が一部橋渡ししている、というパターンが見えてきたのです。
では、この柔軟さは具体的にどのように影響しているのでしょうか。より詳しい結果とその意味を、次で見ていきましょう。
「まあいいか」と言える力が、未来の選択を変えるかもしれない
詳しい分析の結果、認知的柔軟性は、恋愛満足度と結婚態度の関係を「部分的に」説明していることが分かりました。
これは、恋愛がうまくいっている人が結婚に前向きになる理由の一部は、柔軟な思考によって説明できる、という意味です。
ただし、すべてを柔軟性だけで説明できるわけではありません。
認知的柔軟性を統計的に考慮しても、恋愛満足度と結婚への前向きさのあいだには、なお強い結びつきが残っていました。
つまり、「いまの恋愛がうまくいっている」という体験そのものが、結婚を前向きに感じさせる大きな要素であり、その一部を柔軟な考え方が後押ししている、と考えられます。
では、認知的柔軟性は、どのような場面で効いてくるのでしょうか。
結婚は、幸せなイメージと同時に、不確実性や責任も伴う選択です。
お金のこと、仕事のこと、家族との関係、将来の変化など、予測しきれないことがたくさんあります。
認知的柔軟性が低い場合、不確実性は「失敗するかもしれない」という不安として強く感じられやすくなります。
「一度決めたら後戻りできない」「完璧にうまくいく確信がないと踏み出せない」といった考えに縛られてしまうこともあるでしょう。
一方で、認知的柔軟性が高い人は、「状況は変えられる」「問題が起きても話し合えば調整できる」といった見方をしやすいと考えられます。
小さな衝突を“関係の終わり”ではなく、“二人で調整するチャンス”として捉えやすくなります。
実際の恋愛でいえば、柔軟性は次のように合われるかもしれません。
たとえば相手からの連絡の返信が遅れたときに、どう考えるでしょうか。
「相手は冷めてしまったに違いない」と一つの悪い解釈だけに飛びついてしまうでしょうか。
それとも「忙しいのかな」「あとで理由を聞いてみればいいか」と、柔軟にいくつかの可能性を考えられるでしょうか。
また、ケンカをしたときにも柔軟性が試されます。
「もう無理」と決めつけるのか、それとも「今日はたまたまぶつかっただけかもしれない」「まあ、こういうこともあるか」と一度クッションを置くでしょうか。
この“ワンクッション”の違いが、長期的な関係や結婚のイメージにも影響している可能性があるのです。
とはいえ、この研究は一度きりのアンケート調査にもとづいているため、限界があります。
さらに、参加者はトルコの若年成人に限られており、文化や価値観が異なる社会でも同じ結果になるかどうかは、今後の検証が必要です。
研究チームは、時間をおいて同じ人を何度も追跡する縦断研究や、認知的柔軟性を高める心理教育プログラムの効果を調べる研究の必要性を指摘しています。
それでもこの研究は、「結婚に前向きな人」に共通する大切なポイントを教えています。
ケンカしても「まあいいか」と一度受け止め直せる、その小さな思考の余白と柔軟性が、結婚という未来の選択を少しだけ前向きにしているのかもしれません。
参考文献
Cognitive flexibility mediates the link between romance and marriage views
https://www.psypost.org/cognitive-flexibility-mediates-the-link-between-romance-and-marriage-views/
元論文
Romantic relationship satisfaction and marriage attitudes in young adults: the mediating role of cognitive flexibility
https://doi.org/10.1186/s40359-025-03901-8
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

