私の愛車「XR1000」は、ホモロゲーションを得るために急造された“いわくつき”のハーレー。簡単にいえば、トラブルの多さで知られる「ショベルヘッド(アイアン)」の腰下に、レーシングマシンである「XR750」のヘッドをビッグバルブ化して搭載するという、まさに突貫工事で作られたエンジンだ。そのため、本当にたくさんの構造的欠点を抱えた“問題児”なのである。故に、これを手に入れて実際に走らせると次々とトラブルに襲われる“修羅の道”が待っているのだ。
雨宮武|いわゆるエンスー的なバイクとカスタムが大好物な本誌副編集長。基本的にスポーティに走れるバイクを好みつつも腕にはまったく自信なし。
高回転まで一気にフケる、刺激的なエンジンが復活
それらを一つひとつ地道に改善し、数々のオリジナル対策パーツを生み出し、XRオーナーから神と崇められているのが「サンダンス エンタープライズ」代表の柴﨑“ZAK”武彦さん。その凄まじさは対策パーツだけでXRのエンジンを1基作れるほど(!)で、そのノウハウからオリジナルのXRをはるかに凌駕する「スーパーXR」が誕生したというのも有名な話だ。
私もXRオーナーになり、ロッカーシャフトの破断といったお約束の試練は経験済みだが、今度はタペット粉砕という洗礼を受けた。事件はサンダンスにお邪魔して、さぁ帰ろうと愛車のエンジンをかけたとき、その場に偶然居合わせたZAK柴﨑さんが異音に気づいてくれたことで判明した。
「タペット音が出ているから乗らないほうがいい。診ておくから今日はXRを置いていって!」
真綿で首を絞めるようにジワジワと音が大きくなっていったのか、通勤に取材に買い物にと、日々のアシとしてXRに乗っているのに、その異変にまったく気がつかなかった。言われてみれば「やけに遅いな」と感じたことはあったが、その時点で既に壊れていたのだろう。
原因はタペットの破損で、聞けばXRの持病だという。このあと紹介する純正タペットを縦に割った写真を見れば一目瞭然だが、ペラペラに肉薄で、走り込めば自然と割れてしまうことが多いそうだ。しかもすでに純正は廃盤なので、入手するにも四苦八苦……。
しかし、サンダンスはその対策パーツも用意しているからすごい。レーサーXR750と同形状で強度の高いクロモリ鋼からのワンピース削り出し。その厚みのある断面(左写真)を見れば、もう強度は十分に感じるが、さらに焼き入れをし、摺動部には硬質クロムを施して圧倒的な低フリクションも実現。また、純正にはないローラーベアリングを保護するためのシムは、オイルを浸透させるために特殊な歯車型とするなど弱点を熟知しているからこその最強仕様だ。
修理完了の報告を受け、実際に乗ってみると、いままでとは雲泥の差があるのはもちろん、スロットルを捻れば淀みなく高回転までフケ上がっていく。フィーリングは文句なしに過去イチの気持ちよさ。新車というか、完調のXRに乗った経験はないが、それよりも走るのでは? というほど速くなったし、エンジンも静かになった。何より耐久性が高められたことがうれしくて、以前よりエンジンを回して走るようになってしまった。いわゆる普通のスポーツスターとはひと味違う荒々しい加速からは、レーサーのDNAを感じる。そんな醍醐味を味わうことができるのも、サンダンスの技術があればこそだ。やっぱり神ですよ、神。
これが……

バラバラに粉砕!!

通勤で毎日走らせているとはいえ、常に高回転を使うなど負荷をかけていたワケではないのにタペットが砕け散っていた。XR1000の純正タペットは強度が不足しており乗り込むうちに割れてしまうケースが多いという。消耗品か!?(純正品は廃盤)


フロントインテークのタペットが粉砕したまま走行し続けてしまったため、2次被害がカムにも及んでいた。山が写真でもハッキリわかるほど削れて虫食いになってしまったので、カムは丸ごと交換。

左がサンダンス製。右がノーマル。

肉薄なうえにキャップと胴体がはめ込み式の純正に対し、クロモリ鋼から削り出した一体型とし、焼き入れ後に摺動部の表面に硬質クロムを施したサンダンス製タペットに交換。圧倒的な低フリクションと耐久性を実現。

「オレのXRってこんなに速かったっけ!?」というぐらい回転上昇が軽やかになって、4000回転以上回して走るのが超絶気持ちいい!! 加えて以前よりエンジンノイズが小さくなった気も……。いま、かつてないほどに絶好調です。
(出典/「CLUB HARLEY 2024年10月号」)