私のホームスーパーである「西友」が、九州の小売の雄「トライアル」の傘下になってから、チーム刷新よろしく、乾物コーナーの「そば棚」の商品が少し変わった。半分くらいはそのまま、半分くらいは一新といったところ。
その中でも、私の中で大きすぎる変化としては、あの「池森シリーズ」がレギュラーとして鎮座していること。
池森シリーズとは、無類のそば好きとして知られる音楽グループ「DEEN」の池森秀一氏が監修・コラボした干し蕎麦シリーズのこと。過去にも何度かとりあげているが、それらが大挙して私のホームへ雪崩れ込んできたのである。
【動画】実食時の動画もあるぞ。食べた瞬間、完全にヤラれてる……!
私が愛してやまない “福島の宝” こと奈良屋の乱切り蕎麦が、池森陣営とコラボしていることは、かなり前から知っていた。そして、今回取り上げる商品が「かなり美味いらしい」という情報も、実は得ていた。
しかしながら、それは、なかなか私の前には現れなかった。わざわざ、こちらから迎えに行くような真似はしたくなかった。あくまでも偶然の出会いこそが、当連載「家そば放浪記」のモットーだからである。
だが、奴は、来た。ついに、私の面前に現れた。商品名、パッケージに記されている文言をすべて書き起こすとこうなる。
「池森秀一 x 奈良屋 奥会津・池森そば 二八の裁ちそば」
表面には「池」と「奈」の赤ハンコが並んで押されている。それを見て、なぜだか私は嫉妬していた。愛する奈良屋が、池森さんと付き合っている……。そんな感情が心の中で渦巻いていた。
だからこそ、私は “あえて迎えに行かなかった” のかもしれない。知っていながら、知らないふりをしていたのかもしれない。彼らの熱愛を、見たくなかったから。でも──。
目の前に、彼らがいる。トライアルが送り込んだ、私への試練。いつまでも目を逸らし続けてはいけない。現実に立ち向かわなければならない。
私は、逃げない──!
デカい鍋に湯を沸かし……
4分ゆでて……
冷水(氷水)で冷やし……
完成。
して、そのお味は──
悔しいが、極上にうまい。
まず何から語ろう。
乱切りか。
乱切りは乱切りでも、もっとも “ちょうど良い” と私が思う1.9mm、2.4mm、3.5mmの組み合わせ。
そんな不揃いの麺の中で、突出した存在感を示しているのが、極太3.5の平たい麺。食感が実に楽しい。
次に味。
さんざん食感や喉越しで楽しませたあと、確実に伝わる “蕎麦の味”。最後の最後に、舌の上に蕎麦の味が残る感じだ。
乱切りの食感の時点で楽しいのに、蕎麦そのものの食感も見事。やはり氷締めしたからだろうか。コリっとした噛みごたえが、存分に「お店感」を醸している。
そう、「家そば」も「外そば」もない。これはもう「店そば」だ。それも極上の店そばだ。家にいるのに、「独創的な乱切り蕎麦屋」に来た気分だ。
1人前なんて少なすぎる。正直ペロリ。できることなら2人前いっちゃいたい。きっとそれもペロリであろう。
正直ヤラレタ。まいりました。なんだろう、この感情。恋人だと思っていた奈良屋を、池森という男に取られた感じ。でも……
うまいからOKです。
そう言える男に、私もなれた。正直、池森には、いろいろ思うこともあった。だが、こんな上出来な蕎麦を作られたら、そんなのどうでもよくなった。
こんな極上の作品が、西友で手に入るという世界線。福島に行かずとも、アンテナショップに行かずとも、近所の西友で「池森x奈良屋」が買えてしまう日常。
西友の店内では、いまだ「西友はトライアルグループになりました」みたいなアナウンスが流れている。西友は西友だが、品揃えをはじめ、着実にリニューアルした。
そんな変化の中でも、最大かつ、革命とも言える変化が「そば棚の一新」。トライアル傘下になった西友は、スーパーではなく「蕎麦屋」になった。
執筆:干し蕎麦評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24
