
俳優の宮沢りえが、2月18日に都内で開催された映画「トニー滝谷 4Kリマスター版」公開記念舞台あいさつに、イッセー尾形と共に登壇。作品への思いを語る場面があった。
■村上春樹原作の映画が20年の時をへてよみがえる
同作品は、村上春樹の同名短編小説を市川準監督が2004年製作で映画化したものを、4Kリマスター版としてよみがえらせたもの。3月27日(金)より、東京・角川シネマ有楽町ほか全国順次公開。
トロンボーン奏者(尾形)の息子として生まれたトニー滝谷(尾形・2役)は、生後すぐに母親を亡くし、孤独を抱えたまま成長する。デザイン会社勤務を経てイラストレーターとして独立した彼は、ある女性(宮沢)と恋に落ち結婚する。しかし幸せな日々もつかの間、妻は事故で他界してしまう。孤独を実感した彼は亡き妻によく似た女性(宮沢・2役)をアシスタントとして雇い、買い物依存症だった妻が遺した大量の服を彼女に着てもらうことで妻の死に慣れようとする。
■特殊過ぎる撮影を回顧
宮沢は「『トニー滝谷』は本当に大好きな作品で、自分の映画ってなかなか見返すことがなくて、見返すと粗ばっかり見つかっちゃって楽しむことができないことが多いんですけれど、『トニー滝谷』は何度も見返している作品なんです。こうやってまたスクリーンという、すばらしい環境で見ていただけるということが本当にうれしいです」とあいさつ。
また、「撮影自体、本当に特殊な撮影で、セットはあるんですけれど壁がない状態で、家の中のシーンなんですけど空が映っていたりとか、風が流れるのでその影響があったりとか、そんなことはそれまでになかったことでしたし、シーンとシーンの間をつなぐカメラワークも本当に緻密に計算されていて、“とっても行間が詰まった芝居”っていう感じがすごくすてきですよね」と振り返りながら、「現場でお芝居をしながらナレーションを読むっていうことをしました」と裏話を披露。
すると、尾形も「しました、しました! 突然、監督に言われたんですよね」とうなずき、「(監督の)単なる思いつきだと思います」と明かして笑いを誘った。
■宮沢りえ「100年後まで残ってほしい作品です」
また、互いに2役を演じたことについての話題も。尾形が「僕は外見を変えるという演出が多かったので物理的に変えられるんですけど、りえさんは内面を変えないとできない。ドアの前まで連れてきて、ドアを閉めて待ってなきゃいけないんだけど、待っていたら(宮沢は)一発OK! すごいんですよ」と宮沢の演技を絶賛すると、宮沢は恐縮しながら「作品の魔法みたいなものに、私がかかったんだなって思います」とにっこり。
そんな中、「この作品はご自身にとってどんな作品ですか?」と聞かれた宮沢は「本当に計算された密度の高い余白が、こうして時代を超えたり国境を越えたりして、見てくださる方がその余白を作っていくようなこの作品は、いろんな意味でゼロにならないと芝居が生まれないということも含めて、自分にとって原点」と告白し、「市川監督にお会いできないことが本当に悔しいけれど、『作品って生き残るんだな』と作品の生命力を心から感じていますし、こうやってまた息をし始めることがとってもうれしいし、100年後まで残ってほしい作品です」とコメントした。
◆取材・文=原田健


