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デ・ブライネを「遊軍」として起用するコンテ監督の狙い、ナポリが目指すべき到達点は――「いまはまだ、試行錯誤を重ねている段階」【現地発コラム】

デ・ブライネを「遊軍」として起用するコンテ監督の狙い、ナポリが目指すべき到達点は――「いまはまだ、試行錯誤を重ねている段階」【現地発コラム】

開幕4連勝で首位に立ち、今シーズン最初のビッグマッチであるミラン戦。敵地サン・シーロに乗り込んだナポリだったが、開始31分で2点のリードを許したうえ、PKで1点差に迫り相手DFの退場で11人対10人になったラスト30分にもゴールを奪うことができず、初黒星を喫した。

 敵地での1-2の敗戦という結果そのものに関しては、2失点のいずれもが、最終ラインに故障者が相次いだために今シーズン初めて出場機会を得た若いCBルカ・マリアヌッチのミス絡みだったことなど、情状酌量の余地もないわけではない。

 しかし、それを差し引いたとしても、重要な新戦力を加えた新シーズンのチームの完成度という点で、対戦相手のミランと比べてやや遅れが見られることは否めなかった。それは、今シーズンの新戦力の目玉というべき2人のワールドクラス、ケビン・デ・ブライネとルカ・モドリッチをチームにどのように組み込み機能させるかという一点に、象徴的に表れていた。

 ナポリを率いて2年目のアントニオ・コンテ監督は、昨シーズンの優勝チームの構造に手を加える形で、デ・ブライネの居場所を作り出そうとしている。とは言っても、数字で表した基本システムそのものは、昨シーズンと実質的な変化はない。この試合でコンテがピッチに送り出した布陣は以下の通り。

ナポリ(4-1-4-1)
GK:メレト
DF:ディ・ロレンツォ、マリアヌッチ、ファン・ジェスス、グティエレス
DMF:ロボトカ
OMF:ポリターノ、アンギサ、マクトミネイ、デ・ブライネ
FW:ホイルンド

 昨シーズンと比べると、ジョバンニ・ディ・ロレンツォを除く最終ラインのレギュラー3人(アミル・ラフマニ、アレッサンドロ・ブオンジョルノ、マティアス・オリベラ)、そしてCFロメル・ルカクが故障欠場して控えと入れ替わっている以外、つまり本来レギュラーたるべきメンバーとして新しいのは、左サイドのデ・ブライネただ1人だ。昨シーズンはここに当初フビチャ・クバラツヘリアが入っていたが、冬の移籍マーケットでパリ・サンジェルマンに移籍。後半戦は左利きウイングのダビド・ネーレスが起用されていた。

  とはいえ、チームとしての組織的なメカニズムにおけるこのポジション(名目的には左ウイング)の役割は、昨シーズンとははっきりと異なっている。昨シーズンここでプレーしたクバラツヘリア、ネーレスが担った役割は、専らラスト30mの攻略に関わるものだった。ビルドアップ時には敵中盤ラインの背後で大外に開いて幅を取るか、あるいはやや内に入ってハーフスペースに位置するか、いずれにしてもボールのラインより上でパスの受け手となり、そこからゴールに向かって仕掛ける仕事が求められていた。

 しかし今シーズンのデ・ブライネは、ビルドアップ時には左サイドからアンカーのスタニスラフ・ロボトカと並ぶ低い位置まで下がり、最終ラインからパスを引き出して前方に展開する、いわば「第2のレジスタ」とでも言うべき機能を担っている。もちろん、そこからの展開でチームが敵陣に進出した後は、デ・ブライネも自由に前線に攻め上がって本来の持ち味である質の高いラストパスや高精度のシュートでフィニッシュにも絡んで行くことが想定されているはずで、実際に開幕からの4試合では、そうした動きをしばしば見せてフィニッシュにも絡んでいた。

 外野の見方からすると、デ・ブライネの持ち味を最大限に引き出そうとするならば、むしろ現在スコット・マクトミネイが担っているインサイドハーフとセカンドトップを足して二で割ったような役割を委ね、よりゴールに近いところで決定的な違いを作り出すことを期待する方がいいようにも思える。しかし誰にでも思いつきそうなこの解決策をコンテ監督が採用せず、より低い位置で起用する道を選んでいるとすれば、そこには相応の理由があるはずだ。

 おそらく指揮官は、昨シーズンに確立された攻撃のメカニズムにおいて、右サイドで幅を取ってそこから1対1突破やクロスで決定機を作り出すマッテオ・ポリターノ、積極的に2ライン(DFとMF)間に進出し、豊富な運動量で攻撃のボリュームを作り出すだけでなくプレス強度も高いアンドレ・アンギサ、CFと並ぶ最前線までポジションを上げて「ツインタワー」として機能しながらフィニッシュにも絡んでいく(そしてやはりプレス強度も高い)マクトミネイ、前線でDFを背負い縦パスを収めて攻撃の基準点となるルカクという4人が担う機能のいずれも、犠牲にしたくなかったのだろう。

 だとすれば、これらを維持したうえで、そこにデ・ブライネを組み込むために考案されたのが、ビルドアップ時にはレジスタ、ラスト30m攻略時には攻撃的MFとして、いわば「遊軍」的に機能する現在の役割である、ということになるだろうか。ピッチ上を広く動き回る自由を保証することによって、デ・ブライネが持ち味を発揮できる状況を自ら作り出すことが期待されているわけだ。

  ただ、この起用法はひとつの避けがたいリスクも孕んでいる。左サイドに本来いるべきウイングがいない左右非対称の陣形になるため、すでに完成されていたチームの全体構造がバランスを失いかねないというのがそれだ。このミラン戦では、その側面がより強く表面に出た感があった。

 攻撃が右サイドに大きく偏って、右WGポリターノからのクロス以外に危険な場面を作り出す攻め手がなくなった一方で、バランスを取るためにボールのラインよりも後ろに留まる時間が長くなったデ・ブライネは、肝心のラスト30m攻略において半ば蚊帳の外に置かれるような格好になってしまったのだ。

 オープンプレーからのシュートは、ブロックされたエリア外からのミドルシュート1本、ペナルティーエリア内へのパスも、前半40分に右ポケットに走り込んだディ・ロレンツォに送り込み、惜しいチャンスを作り出した1本だけにとどまった。相手が10人になり一方的な攻勢に立っても、なかなか決定機が作り出せなかった70分過ぎ、コンテ監督がラスムス・ホイルンド、マクトミネイとともにデ・ブライネも交代させた事実は象徴的だ。

 10日ほど前に行なわれたチャンピオンズリーグのリーグフェーズ第1節、古巣マンチェスター・シティ戦では、開始わずか20分過ぎにディ・ロレンツォが一発レッドで退場になった際、代わりのDFオリベラを投入したのと入れ替わりでベンチに下げられるというアクシデントもあった。この2つの交代劇が物語っているのは、少なくとも現時点において、デ・ブライネはチームにとって絶対不可欠な存在になってはいないということだ。

 とはいえもちろん、彼を「遊軍」として起用するコンテ監督の狙いが、既存のチーム構造との兼ね合いの中で、彼がチームに不可欠な存在になっていく道筋をつけるところにあることは間違いない。デ・ブライネを中心に周囲の流動性が高まり、常に全体のバランスを保ちながらも、彼がより高頻度でラスト30m攻略に絡んでいくような状況を作り出すことが、目指すべき到達点だろうか。開幕からCLを含めて6試合しか消化していない今はまだ、そこに向かうためのすり合わせ、試行錯誤を重ねている段階と見るべきなのだろう。

  デ・ブライネ自身、現在直面している状況に小さくないストレスを抱えているであろうことは、交代で下がった際に苛立ちを隠し切れず、コンテ監督と挨拶を交わすことなくベンチに直行したことからも推察できる。試合後の記者会見で、デ・ブライネのこの振る舞いについてコメントを求められたコンテ監督の言葉は、かなり辛辣なものだった。

「デ・ブライネが交代に苛立ちを見せたのは試合結果のせいだと思いたい。もしそうでないのなら、彼は怒る相手を間違えている」

 交代させた自分に矛先を向けるのは見当違いだ、というこのコメントは、コンテがデ・ブライネのパフォーマンスに満足していないという明確な含みを持っている。こうした形で選手との間に緊張関係を作り出し、それが起爆剤になるよう仕向けるというのは、コンテがしばしば使うマネジメント手法だ。

 新しい環境で新しい監督のやり方に直面したデ・ブライネが、今後どう自らのパフォーマンスを高めていくのか、それに伴ってナポリというチームがどのように成長していくのか(あるいはどこかで大きな転換点が訪れるのか)。引き続き注目していく価値は十分にある。

文●片野道郎

【動画】デ・ブライネのPKで1点差に詰め寄ったナポリだったが、敵地でミランに敗戦

 
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配信元: THE DIGEST

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