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五輪スキークロス・須貝 龍-Ryo Sugai-|北京での悔しさを強さに変えて

世界の壁と取引

VAL DI FASSA,ITALY,07.FEB.25 -FIS World Cup,
Photo: Aflo/GEPA Mathias Mandl

須貝龍は、2018年まで海外に拠点を置いて、FIS W-CUPのダウンヒルやスーパー大回転、大回転などの高速系種目で戦っていた唯一の日本人だった。2018年、W-CUPポイントも初めて獲得したが、平昌オリンピックへの出場は叶わなかった。

「自分にとってアルペン選手として一番キャリアハイの年だったからこそ、わかったんです。これ以上今までと同じやり方をしても夢のオリンピックには届かないんだって。そんなとき、全日本コーチの皆川賢太郎さんから『スキークロスをやってみないか』っていう誘いがあって。

じゃぁ、4年間だけやります! って言ったんです。平昌を逃した、でもオリンピックには出たい。だからスキークロスに転向して4年でメダルをとって、好きなアルペンに戻ってこようって。それが当初の計画だったんですけどね(笑)」

そこまでアルペンにこだわる理由はなんだったのか。

「スピードです。僕、スピードが大好きなので。それとトレーニングやサポートの環境的に、世界とは大きな差があった。海外の強い国にはコーチが複数いて、サービスマン、トレーナーやフィジオ、ドクターまでいたりする。環境面でどうにも太刀打ちできないんです。悔しいけれど自分一人の力でこれ以上やっていくことに限界を感じていました。当時、初めて本格的なスキークロスのチームを立ち上げることになっていて、スキークロスなら万全のチーム体制でやれるという条件にも惹かれました」

限られた時間と資源をいかにうまく使って夢に近づくか。須貝龍にとって金メダルへの最速のライン取り、それはスキークロスという取引だったのだ。

「でも、実はスキークロスなんてそれまで一度も見たこともなかったんです、僕(笑)。スキークロスって2000年くらいからX-Gamesで始まった競技なのですが、自分がやることになるまで18年間、どんな競技か知りもしなかったんです。だからもう初めてのことだらけ。スタートの仕方すら知らなくて、海外の遠征でいきなり試合に出されて、全部がぶっつけ本番でした(笑)」

しかし、転向後1年を待たずに初めてのW-CUPで15位。アルペンで培ったスピードと高い滑走技術は世界トップを狙うに不足ないどころか、須貝は持ち前の爆発力で、瞬く間に世界でマークされる存在となった。

スキークロスの魅力

4人による熾烈なヒートは戦略が交差する白いF1とも。先頭が須貝龍
Photo: Aflo/GEPA pictures/Mathias Mandl

須貝龍にとってスキークロスの魅力とはなんだろう。

「勝てない選手に勝てること。単走では体が大きいほうが圧倒的に速いけれど、スキークロスはそれを戦略やデータ分析で補える。駆け引きです。いま表彰台に上る選手は190cm・100kg超えが普通。僕は177cm…だから、ないものを補うために工夫するんです。僕にとっては戦略がすべてなんです」

須貝は世界トップの選手たちの詳細なデータを収集し、深く分析する。個々の得意・不得意・クセ・レース展開や結果など、あらゆるデータを分析し、コース形状と掛け合わせて数値化する。確率的に見ることで客観視し、冷静な対処や戦術につなげるのだ。分析は体力トレーニングにも落とし込む。その熱量と研究量は周囲が舌を巻くほどだ。

「分析から導いた戦略に必要な体力やテクニックをつけて、雪上で試して正解かを確かめる。そのトライ&エラーをずっと繰り返してきました」

須貝の成長と強さの背景には、こんな工夫があったのだ。もちろんそれだけではない。

「純粋にすごく楽しいスポーツなんですよ。ジャンプありクラッシュありのエキサイティングなヒートは、アトラクションみたいな感覚なんですよね。それに、この瞬間に自分がいま一番だ、とか遅れてるのがわかるのが面白い。アドレナリンが沸きますね」

配信元: STEEP

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