2040年、日本の人口は今よりもさらに減ると言われています。特に地方では、若い世代一人ひとりの存在が、これまで以上に地域の未来を左右する時代がやってきます。
そんななか、兵庫県丹波篠山市にある篠山鳳鳴高校では、2019年から「探究」という学びに本気で取り組んできました。正解を覚えるだけではなく、自分で問いを立て、考え、発表する。その積み重ねの先にあるのが、2026年3月5日に開催される「探究Day」です。
全校生徒が参加するこの発表会は、単なる学校行事ではありません。地域と向き合い、未来を見据えながら歩んできた高校の挑戦が、ひとつの形としてあらわれる日でもあります。
篠山鳳鳴高校がなぜここまで“探究”に力を入れてきたのか。その背景をたどってみると、今の教育が向かおうとしている方向が見えてきます。
問いから始まる未来 篠山鳳鳴高校が選んだ“探究”という道

篠山鳳鳴高校が探究活動に本格的に取り組み始めたのは、2019年からです。人口減少が進み、地域の姿が少しずつ変わっていくなかで、「これからの社会を支える人材を育てるには何が必要か」を学校全体で考えたことが、その出発点でした。
探究とは、あらかじめ用意された答えを覚える勉強とは少し違います。自分たちでテーマを設定し、調べ、考え、意見を交わし、最後は言葉や形にして発表する。時間も労力もかかりますが、そのぶん「自分の頭で考えた」という実感が残ります。
篠山鳳鳴高校では、この探究を一部の選択授業にとどめるのではなく、学校全体の軸に据えてきました。理科や社会といった従来の教科のなかにも探究の要素を取り入れ、「自分事」として学べる授業づくりを進めています。単に知識を得るのではなく、「なぜそうなるのか」「自分ならどう考えるか」を問い続ける姿勢を大切にしているのです。
さらに、文部科学省の普通科改革支援事業の指定を受け、昨年度からは「STEAM探究科」を新設しました。科学や技術、工学、芸術、数学といった分野を横断的に学ぶことで、社会の課題をさまざまな角度から捉える力を育てようという取り組みです。
たとえば、環境問題をテーマにする場合でも、単にデータを調べるだけではなく、技術的な解決策を考えたり、デザインの視点から伝え方を工夫したりと、複数の分野を行き来しながら答えを探していきます。一つの教科だけではたどり着けない発想が生まれるのも、この学び方の特徴です。
また、今年度からは単位制を導入し、生徒がより主体的に学びを選択できる仕組みへと進化しています。「決められた時間割をこなす」のではなく、「自分は何を深めたいのか」を考えながら学ぶ。その積み重ねが、探究活動とも自然につながっていきます。
こうした取り組みを見ていると、篠山鳳鳴高校が目指しているのは、単なる進学実績や知識量の向上ではないことが伝わってきます。変化の大きい時代のなかで、自分の頭で考え、他者と協働し、地域や社会と向き合える人を育てること。そのための土台として、探究という学びを選び、育ててきたのです。
3月に開催される「探究Day」は、こうした日々の積み重ねの延長線上にあります。1日だけの特別なイベントではなく、学校が数年かけて築いてきた教育の姿勢そのものが、そこにあらわれるのだと感じます。
DXハイスクールとして進化する学びの環境

篠山鳳鳴高校の取り組みを語るうえで、もうひとつ見逃せないのが、学びの“環境”そのものが進化している点です。昨年度から文部科学省のDXハイスクール事業の指定校となり、学校内にさまざまな先端機器が導入されました。
3Dプリンタや3Dスキャナ、レーザー加工機、VRゴーグル、データロガーなど、これまで専門的な施設でしか触れることのなかった機材が、日常の学びの中に組み込まれています。さらに、生成AIやデータサイエンスといった分野についても学ぶ機会が用意されているといいます。
とはいえ、機材があること自体が目的ではありません。大切なのは、それらをどう使うかです。自分たちが考えたアイデアを形にするための道具として、あるいは課題を分析するための手段として活用する。その過程で、「知識」と「実践」が結びついていきます。
たとえば、地域の課題をテーマに探究を進める場合、集めたデータを整理し、可視化し、仮説を立て、検証する。その一連の流れを支えるのが、デジタル技術や機器です。アイデアだけで終わらせず、実際に試してみる。その経験は、生徒たちにとって大きな財産になるはずです。
地方にある高校が、こうした先端技術を積極的に取り入れていることにも意味があります。都市部だけが新しい教育を担うのではなく、地域の学校から未来に向けた挑戦が始まっている。その姿勢自体が、これからの教育の一つのモデルになり得るのではないでしょうか。
探究という“考える学び”と、DXという“形にする力”。その両輪がそろっているからこそ、篠山鳳鳴高校の取り組みには厚みがあります。そしてその成果が、一堂に会する場が「探究Day」なのです。
