
朝ドラ『ばけばけ』では、セツを演じる女優の高石あかりさん。画像は「高石あかりファースト写真集 幻灯」(東京ニュース通信社刊)発売時の写真。
【画像】え…っ!「高石あかりより和風顔」「賢そう」 こちらが『ばけばけ』ヒロインのモデル「小泉セツ」さんの写真です
第1週から凄い展開になりそう
1890年に来日し、『怪談』『知られぬ日本の面影』『骨董』などの名作文学を残した小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、「怪談」を愛し彼を支えた妻の小泉セツさんの生涯をモデルにしたNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の第1週では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」の幼少期(演:福地美晴)の、明治初期の物語が描かれています。
トキのいる松野家は明治維新によってそれまでの食い扶持を失った典型的な没落士族で、父「司之介(演:岡部たかし)」と祖父「勘右衛門(演:小日向文世)」は武士の誇りをもって暮らしながら何もせず、母「フミ(演:池脇千鶴)」の内職だけで暮らしていました。そして、親戚の「雨清水家」の当主「傅(演:堤真一)」が織物の会社を始めたのを聞いた司之介は、2話の最後で「うさぎ」を使って商売を始めるつもりであることが明かされています。
※この記事では、『ばけばけ』の今後の展開のネタバレになる情報に触れています。
トキのモデルのセツさんが育った家の名前は、稲垣家といいます。セツさんは本当は稲垣家の縁戚の小泉家の出身なのですが、彼女の生まれる前から子供のいない稲垣家に養子に出されることが決まっており、生後7日で養父母に引き取られました。
いくつかの書籍を見ると、モデルのセツさんが育った稲垣家の大黒柱である金十郎さんは、明治維新後に慣れない商売を始めて大失敗をしたことが語られています。うさぎの商売をしたのかは不明ですが、稲垣家は先祖代々の家を追われるほど没落してしまったそうです。
当時はそれまで藩から禄を貰って暮らしていた武士たちが、生きていくために私財を投じて商いを始めるもあえなく失敗してしまう、いわゆる「士族の商法」の事例が多数ありました。『華士族秩禄処分の研究』(吉川弘文館)という書籍では、全国の士族の4分の1が、当時の政府の政策によってそれまで家禄としてもらっていた米の支給額の6か年分を新しい人生の資金として受け取るも、「十人に八、九人」が商売がうまくいかず貧民に転落したことが書かれています。
稲垣家および『ばけばけ』の松野家に待ち受けている運命は、かなり過酷でした。
ちなみに、トキの父の司之介は現在53歳の岡部たかしさんが演じていますが、金十郎さんはセツさんが生まれた1868年当時26歳だったため、『ばけばけ』2話時点でまだ30代前半だと思われます。池脇千鶴さん演じるフミのモデル、トミさんは金十郎の2歳下でした。まだ若くお人よしだったという金十郎さんは、商売を始めるも「狡猾で薄情な手合いの詐欺」にかかってしまったそうです。
そして、稲垣家が何もかも失ったせいで、勉学に優れていたセツさんは当時の義務教育だった小学校下等教科以上に進級できず、11歳で実父の小泉湊さんが経営している機織りの会社で働き始めました。
どこまで史実通りに進むのかは不明ですが、『ばけばけ』ではしばらく主人公たちのつらい日々が続きそうです。
※高石あかりさんの「高」は「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)、『小泉セツ 八雲と「怪談」を作り上げたばけばけの物語』(三才ブックス)、『華士族秩禄処分の研究』(吉川弘文館)
※記事の一部を修正しました(2025年10月1日10時44分)
