
香川照之が2月21日に都内で行われた映画「災 劇場版」の公開記念舞台あいさつに、中村アン、竹原ピストル、監督集団「5月」の関友太郎氏、平瀬謙太朗氏と共に登壇した。
■WOWOWで放送されたドラマを再構築して映画化
本作は、2025年の4月から5月にかけてWOWOWで放送・配信された異色のサイコサスペンス「連続ドラマW 災(さい)」を再構築したもの。現代を生きる罪なき6人。ある日、彼らのささやかな日常が何の前触れもなく不可解な“災い”に襲われる。その災いの周辺にはいつも“ある男”が紛れ込んでいた。
“ある男”を演じた香川は「ホラー映画と言ってよろしいんでしょうか? 朝早くからそういった映画にお時間をいただきありがたく思っております」と感謝の気持ちを伝えた。
そして「『災 劇場版』は6本のドラマを2時間超の作品に編集し直したものです。撮影の前段階から映画にすると聞いていて、監督2人が、めちゃくちゃな順番に編集するということを理路整然とお話されていました。これはすごいな!と(笑)。ドラマの撮影中も映画になるのが待ち遠しいと思っていました」と、劇場版に期待していたと語った。

■香川照之「『役ではなく、現象を演じてください』と監督たちから言われたんです」
香川が演じる“ある男”は、人に災いをもたらす謎の人物。姿を変え、口調や顔つきを変え、全くの別人となって6人の登場人物の前に現れる。どのようにその難役に挑んだのかを聞かれると、「『役ではなく、現象を演じてください』と監督たちから言われたんです。その“現象を演じる”ということがすごく腑に落ちるというか、“役”のほうが狭いように見えて実は難しくて、“現象”というのは抽象的に見えて意外と一つ通じてるものがあったりするので、6つの現象を一つに集めるというのは僕の中で数式が成り立ちました」と、監督からのアドバイスが役だったと明かした。
関監督が「香川さんは引き出しが多くて、たぶん20人ぐらいの“男”を余裕で演じられると思います」と話すと、香川は「そういう意味では、この作品を順撮り(物語の順番通りに撮影を行うこと)でやらせてくださった製作陣の尽力に感謝ですね。(演じる)“男”を一人ずつ演じていって「今日でお別れだね」ってお別れして次の“男”へ。生まれ変わっていくような感じだったので、転生があるのならこういうことなんだろうなと思いながら」と、同時に違う人物を演じることはなく、6人の“男”をバトンリレーするように演じていったと語った。


■中村「なんか、一人になりたいんですよね」
中村は不可解な災いの真相を追う刑事・堂本翠を、竹原は堂本の同僚の刑事・飯田剛を演じる。撮影の時にどんな話をしていたのかをMCに聞かれると、竹原は「雑談らしい雑談もなかったような気がします」と答えると、中村も「そうでした。お互い緊張してたので」と振り返って答えた。
竹原は「アンさんは、たとえば、長い廊下があったとしたら、ずっと行ったり来たりしながらブツブツブツブツとせりふの練習をしてたりするんです。だから話し掛けるタイミングがあんまりなかったような気がします(笑)」と中村の様子と伝えると、中村は「共演者の方に『遠くに行っちゃうから心配したよ』ってよく言われるんです(笑)。なんか、一人になりたいんですよね」と自身の行動について語った。
「でも、竹原さんはずっとこうやってるんです」と小刻みに飛び跳ねる様子を真似すると、竹原は「ボクシングをやってた名残みたいなもので、ずっとやってました」と答えた。それを聞いて香川は「私はセリフをグルッと回って言うタイプですね。だから中村さんは“オニヤンマ”タイプで、僕は“銀ヤンマ”タイプです」と、得意の昆虫にたとえて、会場に笑い声が溢れた。

■「劇場で私の姿を見れるのは最後かもしれない」
最後、香川は「私はずっと役者をやってまいりまして、年齢も60になりました。健康状態とかいろいろ考えるといつまでできるのか分かりません。いつ災いが降りてくるかもしれませんし。自分のキャリアの中盤で、皆さんにとってすごく分かりやすい悪役を『半沢直樹』とかで演じさせていただきました。一方で、今回の“ある男”に通底するような「トウキョウソナタ」や「クリーピー 偽りの隣人」といったフィルムノワールの“陰”な方向の静かな男もやらせていただきました。今回は、その後者の方の集大成だったと思っております」と、これまでのキャリアを振り返りつつ、今作での”ある男”にかけた思いを語った。
「この6役をやればもうやることはほぼないので、もう本当に劇場で私の姿を見れるのは最後かもしれない」と続け、「僕の中では“陽”の方向の悪役と“陰”な方向の悪役の集大成が整ったという感覚でございます。なので一人でも多くの方に見ていただきたいです」と、自信がうかがえる言葉で舞台あいさつを締めくくった。
◆取材・文=田中隆信


