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〈FIFA内部崩壊〉トランプ大統領に「平和賞」授与の迷走…人権と反差別を掲げてきた組織に何が起きているのか? 国際プロサッカー選手会理事が読み解く

〈FIFA内部崩壊〉トランプ大統領に「平和賞」授与の迷走…人権と反差別を掲げてきた組織に何が起きているのか? 国際プロサッカー選手会理事が読み解く

金のためにW杯を2度開催にしようと画策

山崎「2016年の動きは、疑獄事件の後に大きな危機感を感じていたからそうなったわけですが、結局、FIFAの決定に関与する権利については、その後も選手やリーグに与えられることなく、本質的な改革が行われずに徐々に薄れて行きました。

今、FIFAはガナバンス改革において世界の選手会であるFIFPROや欧州リーグから、歴史上最大の複数訴訟を受けています。FIFAは一見、民主的に運営されているように見えて決してそうではないのです」

ここで山崎は問題は構造的に2つあると指摘した。

山崎「それは、一つのスポーツに一つの競技団体ということで、他の大会が主催されずに独占に陥るということ。もう一つは限られたステークホルダーにしか、決定に関与する機会が設けられていないということ。

FIFAはいわゆる制限民主制なのです。競技人口もビジネスで動くお金もこれだけ大きな規模になっているのに議決権を持っているのは、いまだに各国のサッカー協会だけで、選手や各国リーグの意見が届かないのです」

2021年には、4年周期で行われていたW杯を2年に一度に開催するという提案がFIFAから提出された。2年開催という周期ならばFIFAの収入は劇的に増える。

しかし、年間70試合以上のゲームに出続けている選手のコンディションを考えれば、たまったものではない。W杯予選が加われば、超過密日程になることは自明であり、また大会の価値も低下する。

当然ながら、各国リーグもFIFPROも反発して実現には至らなかった。しかし、荒唐無稽に見えるこのような案がいきなり出てくることからもFIFAのトップダウンが見て取れる。

 山崎「実際に選手に年俸を払っている各クラブや当事者である選手たちの声を聞かずに、FIFAが独断専行で決めて行こうという姿勢にまず大きな問題があります」

――FIFAにおいては、サッカー選手は労働者であるという観点が抜けていますね。

山崎「そうです。選手に給料を払う立場にないFIFAが自分たちの営利活動のために新しい大会を定めてコストも払わずに選手を招集していく。これは明確な利益相反です。

それでも現在のFIFAのガバナンスでは、FIFPROや各国のリーグに相談せずとも全世界211のサッカー協会の賛同さえ取れれば実施できてしまうんです。そこで、FIFPROと世界リーグ団体=WLA(World Leagues Association)が動きました」

WLAは2016年に設立された国際団体で、プレミア(イングランド)、セリアA(イタリア)、ブンデス(ドイツ)、ラ・リーガ(スペイン)、そしてJリーグ(日本)など世界中の48のリーグが加盟している。

目的はリーグ同士を繋げてサッカー界のガバナンス構造の改善を図り、選手の円滑な労使関係を支援することである。そのWLAとFIFPROが協調したという。

山崎「FIFPROとWLAは、選手の労働に関することは、労使交渉で決められるべきだとして、ILOの関与の下で労使協定を締結しました。これにFIFAも加えての三者合意にしたかったのですが、FIFAは参加を拒否しました」

対価なく「国のために戦え」はやりがい搾取

ILO=国際労働機関は1919年に設立された世界の労働者の労働条件の改善を目指す国連の専門機関である。このILOが2020年に「スポーツ界におけるディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)対話フォーラム」を催し、会議の席上で全世界のプロスポーツ選手は労働者であるとの合意形成を成し遂げた。

そして2022年9月にスイス・ジュネーブのILO本部においてグローバル労働協約が結ばれたのである。これで選手の労働組合としての団体交渉権が世界的な規模で認められたが、FIFAはこの労使協約には加わらなかった。

山崎「ILO が全世界のスポーツ選手は労働者であるという定義をしたのは、すごく画期的でそれがスタートラインでした。密なスケジュールの中で国際大会に出れば、ケガのリスクも大きい。

しかし、FIFAは選手の労働によって資産を増やしているにも関わらず、選手に給料を払っている人たちや実際に働いている選手に意見を聞こうとしていない。その構造に慣れてしまっていたからかもしれませんが、おかしなことです。

W杯はFIFAが主催している大会であり、選手の労働を使ってお金を稼いでいるわけですから、その大会については雇い主、つまり使用者の立場になります。それは、ILOの条約の解釈からしても明らかです。しかし、IOC (国際オリンピック委員会)やFIFAは我々はあくまでもレギュレーター(規制者、管理者、運営者)であって使用者ではない、と主張し続けています。明らかに選手の労働を使ってお金を稼いでいる立場にもかかわらず、です。

FIFAは昨年に、リーグやFIFPROとの協議交渉もなく、大規模なクラブワールドカップを行いました。これはいわば労働者と交渉せずに、お前の夏休みは今年からない、働け、と言ってるようなものですし、ましてやそれを選手に給料を払っているクラブをまとめるリーグとの交渉もなく行ったわけです。だからリーグとFIFPROはこれはおかしいだろうということでFIFAを訴えているわけです。

――特にW杯などは、国を背負って戦うのだから、報酬は二の次だと言うカルチャーが根付いていましたね。

山崎「特にヨーロッパにそれは顕著にありましたね。逆にアメリカなどは、例えば野球のメジャーリーグの選手がアメリカ野球連盟に一方的に招集されて国際試合に出なきゃいけないなんていうことは当然ないわけで、クラブや選手の承諾なく、勝手に招集するなんてことはできない仕組みになっています。それはバスケやアイスホッケーも同じで、そう考えると、いかにサッカーが特殊かがよく分かります。

かつては、どの競技もアマチュアスポーツだったわけですが、時代は変わり、プロスポーツの選手を呼んで大きなお金が動くようになった。プロアスリートを使えばそれは労働を使うことで、そこの部分に配慮したま修正が必要となるのは当然の流れです」

プロへの対価を認めずにただ「国のために戦え」というのは、明らかなやりがい搾取である。労使協議、労使合意がない中でFIFAがAマッチデーなど、試合カレンダーも含めてサッカー界の全てを決めていくというのは、明らかに不合理である。

この独占にFIFAの構造的な病巣が見て取れる。W杯出場国は肥大し続け、ついに48ヶ国になった。

――そこで昨年行われたインファンティ―のによるトランプへの平和賞授与ですが、これはFIFA内部ではどのように見られているのでしょう。トランプが親イスラエル政府であることは、知られていますが、FIFAにはムスリムのボードメンバーも多々いるわけですし、トランプに高圧的に恫喝されているイランのみならず中東諸国のNF(国内競技連盟)にすれば、度し難い暴挙です。

米国は1月4日に主権国家であるベネズエラに対して侵略戦争まで始めて死者まで出している。さらにトランプはグリーンランド問題で、米国の領有権獲得に反対するヨーロッパ8カ国に関税をかけて、武力行使の奪取もほのめかしている。平和とは対極にいる人物なのに、FIFAは言及もしないし、平和賞について取り下げもしない。

山崎「トップが暴走し始めてしまって誰も止めようがないという状況です。もうステークホルダーとの関係が台無しになるようなことが、次々と会長によって行われているわけですから。私も知っているFIFAの人々はインファンティーノがアンコントローラブルになったことを嘆いています。

平和賞については、政治家の特定の政治的思想に肩入れして、そこを称賛するということをしてしまった。今までも世界中で起きている政治や紛争のイシューについては、FIFが公正中立でいられたのかという議論はあったのですが、ただ今回は具体的に賞を新設して与えたというのが、 1番大きな違いです」

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