
本イベントは、シリーズ30周年を飾るアニバーサリー企画の集大成となる一大フェス。スタジオカラー所属クリエイターの総合演出によって、横浜アリーナを展示周遊エリア「EVA EXTRA 30」と多彩なステージプログラムを公演する「STAGE AREA」にセパレート。エヴァの“これまで”と“これから”を体現した、スペシャルな企画が目白押しとなっている。場内には、周年記念グッズを中心としたSTOREやファンズマーケットもお目見えした。

高橋によるスペシャルライブ「EVANGELION FLASHBACK」は、「暫し空に祈りて」からスタート。会場いっぱいに十字形ペンライトが揺れるなか、「幸せは罪の匂い」、「罪と罰 祈らざる者よ」、「FLY ME TO THE MOON 2020」、「心よ原始に戻れ 2020」、「無限抱擁」、「魂のルフラン」、「what if?」、「赤き月」、「Final Call」と力強く伸びやかな歌声で観客を魅了した。

「洋子、今年で還暦なので」と茶目っけたっぷりに語る場面もあったが、変わらぬ歌声に観客のボルテージは上がりっぱなし。「魂のルフラン」では高橋が曲の後半で槍を掲げて、歌唱。その槍は高く浮かび上がり、「what if?」のラストで客席の方向へと飛んでいく演出が加えられた。ライブの感動を伝えるように大きなアンコールの声が鳴り響き、「よかった。アンコールって(声が)なかったらどうしようかなと。ドキドキしちゃった」と笑顔を見せた高橋は、「夢を見るのはただ。好きなだけ、たくさん夢を見て、たくさん楽しんで。歳を取るのって結構、楽しいということをお伝えしたい」とメッセージ。「Teardrops of hope」、そしてシリーズの映像が流れるなか「残酷な天使のテーゼ」を歌い上げると会場は圧巻の一体感に包まれ、大歓声と共にライブは幕を閉じた。

その後、緒方恵美(碇シンジ役)、林原めぐみ(綾波レイ役)、宮村優子(アスカ・ラングレー役)、三石琴乃(葛城ミサト役)、山口由里子(赤木リツコ役)、石田彰(渚カヲル役)、立木文彦(碇ゲンドウ役)、岩永哲哉(相田ケンスケ役)、岩男潤子(洞木ヒカリ/鈴原ヒカリ役)、長沢美樹(伊吹マヤ役)、優希比呂(日向マコト役)、大塚明夫(高雄コウジ役)、大原さやか(長良スミレ役)、伊瀬茉莉也(北上ミドリ役)、勝杏里(多摩ヒデキ役)、山寺宏一(加持リョウジ役)、庵野秀明、鶴巻和哉、前田真宏がステージに上がった。
緒方は、テレビシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」の放送開始から主人公の碇シンジを演じ続け、シンジの痛みや孤独など、死力を注ぎながら、傷つきやすい14歳の葛藤を体現してきた。高橋のライブを観ていても、特別な心境になったという緒方。「カラオケに行ってそこに私がいると、絶対に誰かが『残酷な天使のテーゼ』を歌う。高橋さんのライブを観ていて、歌もそうですが、『エヴァ』の映像を観る度に、私はいつもひとりでこっそり泣いているんです」と告白した。

「(当時は)心細くて、ずっとスタジオの真ん中にひとりでいて。それを求められる役だったので、ひとりで心を閉ざして、周りの役者さんともあまりしゃべらないようにして。『エヴァ』の映像を観ると、ひとりでそこにいた時間など、いろいろなことがリアルに全身の細胞に返ってくる。いまだにそうです」と高橋の歌や『エヴァ』の映像に触れると、当時の記憶が蘇ってくるという。「普通の人は嫌なことを忘れていくんですが、私はそれを刻んでしまって。『エヴァ』の映像を観るたびに、自分のもうひとつの14歳の記憶。その時の気持ちになってしまう」と声を震わせた。
さらに「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が終わった時にも、『私だけひとり、フィルムの中に取り残された気分だ』と話していましたが、いまでもそうで。この映像のなかに、自分だけがずっと14歳の気持ちのままで残っている。今日もやっぱり、そのことを思い知らされました。これから先も洋子ちゃんの歌を聴くたびに、そして『エヴァ』の映像を観るたびに、もうひとつの14歳の時の自分に戻って。この気持ちをずっと繰り返して、死ぬ瞬間まで持っていくんだろうなと。改めて思いました」としみじみ。「それは私にとっての、エヴァの呪縛」だと表現し、「でもその呪縛があるからこそ、いまでも若いキャラクターをやらせていただけているんだなと思います。いまでもこの気持ちを抱えて、ここに立てる。そういった本音をしゃべっても大丈夫な人たちと一緒にここに立てる」と涙ながらにシリーズへの想い、仲間への想いを打ち明けた。

庵野は「緒方のいい話を聞いちゃうと、茶化すようになるのでやめておこう…」と迷いながらも、「悪かったよ…」と謝罪。「皆さん、悪かったよ。ごめんよ!本当にごめんなさいね。皆さん、ご苦労なさったようで、ごめんなさい」とそれぞれ過酷な運命を背負ったキャラを演じてきたキャスト陣に謝り、これには登壇者も大笑い。「僕もライブを観ていた」と続けた庵野は、「洋子さんもそうだけれど、会場の熱気がすごい。ライブが行われて、新作映像も流れる。30年経っても、そういうことができる作品になっている。『エヴァンゲリオン』というアニメーションは、幸せな作品だと改めて感じました。本当にライブ、すごかった」と感無量の面持ちを見せていた。
今回のフェスでは、キャスト陣と楽屋のフリートークで盛り上がる瞬間もあったという三石は、「あの時、実はこうだったんだよという話が出たりする。『エヴァ』を浴びることは、昔は痛かったり、苦しかったり、辛いんだけれど、いまは“イタ気持ちいい”」と笑顔。林原も、当時は「辛かったなあ。使徒、食べたな…とか、ミサイルを持って行ったけれど、爆発したなとか…」と辛いシーンを回顧。「そういう経験がエンタメとして届けられて、人の歴史のなかに染みて、愛に変わっているのを目の当たりにしている。そうすると本当に、どんな顔をしていいかわからない」とファンとの対面に目を細めると、すかさず緒方が「笑えばいいと思うよ」とシンジの名セリフをお見舞い。息ぴったりのやり取りに、会場もドッと沸いていた。庵野は「三石さんと林原さんは、なかなかいい境地に達してくれてよかった。痛いのがいいというのは、なかなかいい」と話し、さらに登壇者と会場を笑わせていた。

そして最後に、本イベントのために制作された約13分の新作短編アニメーションがお披露目となった。庵野秀明が企画・脚本・総監修となり、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』にて作画監督を担当した浅野直之が監督を務めた。会場限定映像として公開された1本で、上映中は観客が作品を楽しんでいる空気に満ちあふれ、涙する人もたくさん見受けられた。エンドロールが流れると拍手が沸き起こり、庵野が再び姿を現すと一層大きく、割れんばかりの拍手と歓声が送られた。庵野は「お楽しみいただけましたでしょうか。改めて浅野監督、スタッフのみんなに熱い拍手をお願いできますか。浅野監督、ありがとう!」と厚く感謝。涙あり、笑いありのステージは、制作陣、キャスト、そしてファンの尽きることのない“エヴァ愛”がほとばしっていた。
1995年にテレビシリーズの放送が始まり、社会現象を巻き起こした「新世紀エヴァンゲリオン」。2007年からは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズとして再始動し、『:序』『:破』『:Q』の3作が公開されて大ヒットを記録。2021年に公開した完結編『シン・エヴァンゲリオン劇場版』はシリーズ初の興行収入100億円を突破し、大きな話題を集めた。シリーズ30周年の節目となる2025年10月からは期間限定での映画館リバイバル上映「月1エヴァ」企画も始動し、各作品が軒並み週末観客動員ランキングTOP10入りを果たすなど、いまなお本シリーズは多くのファンに愛され続けている。
30周年を記念する初のフェスイベント「EVANGELION:30+; 30th ANNIVERSARY OF EVANGELION」は、2月23日(月・祝)まで横浜アリーナにて開催。
取材・文/成田おり枝
