最初から「エレファント」と決まっていた。
だから自分の店には“好き”を詰め込んだ。イタリアンも和食も学んだが、料理は「洋食」が好きだった。今出しているシンプルな味付けだけど、とびきり手の込んだ美味しい洋食だ。店の内外装はスケートもバイクカルチャーもフィットするダイナー風にした。場所はもちろん竹の塚だった。
「実は神保町や北千住あたりでも探したんですけどね。高くて」
店名は最初から決めていた。ゾウが好きだったわけじゃない。
「その亡くなった親友が昔からつけてくれていたんです。『キッチンエレファント』にしろよって」
2017年こうして太田さんはオーナーシェフになった。
最初は苦労した。開店当初こそ大勢が押しかけたが、半年後には人波が途絶えた。「接客ができてない」「お洒落すぎて入りづらい」。薄っすら陰口まで聞こえてきた。
じゃあどうしたか? ひとつずつ塗りつぶしていった。来店する方にはなるべく丁寧に。料理はできるだけ待たさずに。メニューが外からもわかるように外にかかげた。コツコツとヒットを積み重ねると、少しずつお客さんが戻ってきた。陰口に「味」についてのそれがなかったのも救いだった。
潮目が大きく変わったのは、2020年。コロナ禍だった。
「お客さんや町のみんなが喜ぶならとテイクアウトだけ続けたんです。するとお客さんが増えて」
『助かる』『がんばってるね』『やっぱ美味しいわ!』。今度は応援の声がどんどん聞こえてきた。
そして今年もう8年目だ。今では新しい街の住人たちがママ会でこぞって使う「おしゃれで美味しい店」としても知られている。
一方で似たセンスを持つブランドやクラフツマンを呼び、ポップアップイベントも開催。アメリカンカルチャーの発信地でもある。
「メンチカツとチェーン刺繍とか、ハンバーグとピンストが交わるのってココくらいですよね。結構それはね、誇らしかったりします」
きっと常連客も地域の人も天国の親友も同じ気持ちだ。ココは誇らしく、美味しく、優しい。竹の塚を象徴するような店なんだ。
スケートとパンクと洋食が心地よく馴染む、“本物”のスゴみ。

ポップな外観&内観は川口の『BASHI BURGER CHANCE』などを手掛けた本間工務店の仕事。「3カ月の工期中、ずっと隣で仕事をみさせてもらった」の言葉どおり、本間さんとセッションのようにこの店を作り上げた。

窓のロゴは質感たっぷりのハンドペイント。「沖縄のHAND SIGNPAINTERSのヨシさんの手によるものです」

でもって、洋食は六本木『ニコラス』などで修行を積んできた、オーナーシェフ・太田さんのすべて手作りです。

あちこちにある溶けたような意匠は「ピザオブデスに影響されてます」

テーブルを照らすライトシェードにも、手描きのコピーが。粋ですねえ。

見習いコックがカベの向こうに。「これも上もヨシさんが描いてます」