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後発からモデル地域へ 今治モデルが示す地域連携のかたち

学びで終わらせない――“4ステップ”で行動へつなぐ仕組み

「脱炭素」と聞くだけで、身構えてしまう人も少なくありません。専門的で難しそう、コストがかかりそう、何から始めればいいのか分からない――そんな心理的な壁を越えられなければ、どれほど立派な支援制度があっても機能しません。

今治モデルが工夫したのは、まさにその“最初の一歩”でした。

第1ステップとして用意されたのは、カードゲームを活用したワークショップです。経営者だけでなく、現場の担当者も参加できる形式で、体験を通じて脱炭素を身近なテーマとして考えるきっかけをつくります。難しい講義から入るのではなく、まずは楽しく理解する。ここに、このモデルのやさしさがあります。

第2ステップでは、より具体的な内容へと進みます。自社の温室効果ガス排出量の把握や算定方法、そして今後どのように削減していくのかというロードマップづくりなど、実務に直結する内容を学びます。ここでは東京海上日動の教育プログラムを今治版にカスタマイズした形で活用し、地域企業が実践しやすい形に整えられています。

理解を「知識」で終わらせないことが、このプログラムの重要なポイントです。

第3ステップでは、脱炭素コンシェルジュと呼ばれる専門家が各企業に寄り添いながら支援を行います。それぞれの企業の状況や課題に合わせ、具体的な削減プランを一緒に検討していく伴走型の支援です。自社だけでは気づきにくい改善点を整理し、実行へとつなげていきます。

そして第4ステップでは、プログラム修了者を「今治グリーンフェロー(通称:バリグリ)」として認定します。単に学んで終わるのではなく、推進役同士がつながるコミュニティを育てることで、取り組みを地域全体へと広げていく仕組みです。

意識が変わり、行動に移り、それが仲間へと波及していく。4つの段階が連動することで、脱炭素は特別な挑戦ではなく、日々の経営の延長線上にある取り組みへと変わっていきます。

この設計の丁寧さこそが、今治モデルの大きな強みです。単発のセミナーや一時的な補助制度ではなく、企業の中に根づく仕組みとして組み立てられている。その積み重ねが、今回の評価にもつながっています。

後発から“モデル地域”へ――評価された理由と広がる可能性

こうした取り組みが評価され、今治市と東京海上日動火災保険株式会社愛媛支店は、第5回ローカルSDGs四国表彰で審査員特別賞を受賞しました。

この表彰は、四国地域でSDGsの推進に取り組む事業や活動を顕彰するものです。その中で今治モデルが注目された背景には、単なる環境施策にとどまらない広がりがあります。

講評では、民間と自治体の連携がうまく機能していること、そして他の自治体のモデルにもなり得る取り組みであることが高く評価されました。取り組みの目的やビジョンが明確であり、段階的に行動へと導くプログラム設計がなされている点も印象的だったといいます。

「ゆるやかな座組」と表現されながらも、実際には各主体の役割が明確で、全体の仕組みが丁寧に構築されていること。その完成度の高さが、評価につながりました。

さらに今治市は、2025年に愛媛県内で初となる「脱炭素先行地域」に選定されました。もともとは脱炭素の分野で後発といわれる立場でしたが、ゼロカーボンシティ宣言を契機に取り組みを加速させ、短期間でモデル地域へと進化しました。

2025年度には、環境省のモデル事業として、今治モデルを他自治体へ横展開する枠組みに全国で唯一の採択となりました。すでに愛媛県内の自治体への広がりも始まっており、地域発の仕組みが次の地域へと波及している段階です。

脱炭素は、単独の市町村だけで完結するテーマではありません。だからこそ、再現しやすい仕組みであること、無理なく導入できることは大きな意味を持ちます。既存のサービスを組み合わせ、地域の主体が役割分担して運営できる今治モデルは、その“広がりやすさ”という点でも強みを持っています。

後発からスタートしたまちが、自らの課題と向き合い、仕組みをつくり、評価され、そして広がっていく。今治市の歩みは、地域が主体的に変わることの可能性を示しています。

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