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数百年の維持が可能、「自己修復」材料を開発

数百年の維持が可能、「自己修復」材料を開発

自己修復する繊維強化プラスチックを開発。イメージ / Credit:Canva

飛行機や自動車も、人間の皮膚のように自己修復できるなら、より長期間の使用が可能なはずです。

そんな発想を現実に近づける研究成果が、米国のノースカロライナ州立大学(NCSU)の研究チームによって報告されました。

研究者たちは、繊維強化プラスチックの複合材料に自己修復機能を組み込み、理論的には数百年にわたって使い続けられる可能性がある技術を開発したのです。

論文は2026年1月9日付の『Proceedings of the National Academy of Sciences』に掲載されました。

目次

  • 自己修復する「繊維強化プラスチック」を開発
  • 1000回の修復実証と「ゆっくり衰える」回復力

自己修復する「繊維強化プラスチック」を開発

航空機の翼や風力発電ブレード、自動車の構造部材などに使われているのが、繊維強化ポリマー(Fiber-Reinforced Polymer:FRP,繊維強化プラスチックとも呼ばれる)の複合材料です。

これはガラス繊維や炭素繊維といった強靭な繊維を、エポキシ樹脂などのポリマーで固めた層状構造を持ちます。

軽くて強いという特徴から、現代の構造材料の主役とも言える存在です。

しかし、この材料には昔からよく知られた弱点があります。

それが「層間剥離(そうかんはくり)」です。

層と層の間に亀裂が入り、繊維の層が樹脂から剥がれてしまう現象で、内部でこっそり進むため見つけにくく、進行すると一気に強度が落ちてしまいます。

この問題は1930年代から指摘されてきましたが、決定的な解決策はありませんでした。

そこで研究チームは、「壊れにくくする」だけでなく、「壊れても直せるようにする」という方向に発想を転換します。

彼らが導入したのは、材料内部で再び接着を起こす熱的再接着(thermal remending)の仕組みです。

具体的には、繊維層の間に熱可塑性の修復剤を3次元プリンターで配置しました。

この層は通常時には構造を補強し、層間剥離への耐性を2~4倍に高めます。

そして材料内部には炭素系の薄いヒーター層も埋め込まれており、電流で発熱し、修復剤を溶かします。

溶けた修復剤は亀裂内部へと流れ込み、ポリマー鎖が再び絡み合うことで界面を再接着します。

外部から接着剤を注入するのではなく、内部の分子構造が再び結び直されることで強度を回復するのです。

では、この自己修復機能によって、どれほど耐久性が向上するのでしょうか。

1000回の修復実証と「ゆっくり衰える」回復力

今回の研究で特筆すべきは、修復の「回数」を徹底的に検証した点です。

研究チームは50ミリメートルの層間剥離を人工的に作り、引張負荷で破壊させ、その後に電気加熱で修復するという工程を自動化しました。

この破壊と修復のサイクルを、40日間にわたり連続で1000回繰り返したのです。

これは従来の自己修復材料の記録を一桁上回る規模です。

性能の推移も詳細に測定されました。

初期段階では、自己修復後の破壊抵抗は非修復型複合材料の175%に達しました。

つまり、もともとの材料よりも高い耐性を示したのです。

その後、繰り返し修復を重ねると性能は徐々に低下し、1000回後には約60%まで下がりました。

なぜ回復力は落ちるのでしょうか。

論文では、主に二つの要因が挙げられています。

一つは、繰り返し破壊により繊維が微細に砕け、その破片が溶融した修復剤内に蓄積することです。

これが再接着面を物理的に妨げます。

もう一つは化学的な相互作用が徐々に弱まることが原因であり、物理的損傷と化学的変化の両方が影響していると考えられます。

ただし重要なのは、回復率が無秩序に低下するのではなく、ある程度決まったパターンに従って変化している点です。

研究チームは、材料のばらつきを表現する統計モデルを使って計算。

その結果、回復率はゆっくり下がっていくものの、長い目で見ると40%以上の力を保ったまま落ち着く可能性が高いと予測されています。

つまり、完全に修復能力がゼロになるのではなく、長期的にも一定の自己修復機能が残り続けるという見通しです。

そしてこれらの結果を実社会に当てはめると、四半期ごとに修復を行えば125年以上、年1回の修復であれば約500年にわたり層間破壊への対処が可能と推定されました。

ここでの125年や500年という数字は、今回の実験データとモデルにもとづく理論的な見積もりであり、実際に数百年待ったわけではありません。

それでも従来のFRP設計寿命である15~40年を大きく上回る可能性を示しています。

研究者らは、こうした長期的な化学・物理メカニズムをより詳しく理解し、モデル化していくことが今後の課題だと述べています。

参考文献

Self-healing composite could allow machines to last for centuries
https://newatlas.com/materials/self-healing-fiber-reinforced-polymer/

Self-Healing Composite Can Make Airplane, Automobile and Spacecraft Components Last for Centuries
https://news.ncsu.edu/2026/01/healing-composite-lasts-centuries/

元論文

Self-healing for the long haul: In situ automation delivers century-scale fracture recovery in structural composites
https://doi.org/10.1073/pnas.2523447123

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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