
仕事でも勉強でも、ミスをすると胸がヒヤッとして、次は気を付けようと思うものです。
ところが世の中には、失敗してもどこか平然としていて、反省や訂正をほとんどしようとしない人がいます。
実はその差は、気合いや性格の印象論だけでなく、ミス直後に脳が出す“エラー検知の信号”の弱さと結び付いています。
そして英サウサンプトン大学(University of Southampton)の最新研究で、こうしたミスに対する脳の反応が鈍い人ほど、誇大型ナルシシズム(grandiose narcissism)の傾向が強いことが示されたのです。
研究の詳細は2025年12月12日付で学術誌『Journal of Personality』に掲載されています。
目次
- ミスの瞬間に出る「脳のエラー信号」とは?
- 誇大型ナルシシズムとは何か?
ミスの瞬間に出る「脳のエラー信号」とは?
この研究が注目したのは、誤り関連陰性電位(Error-Related Negativity:ERN)という指標です。
ERNは、脳波(EEG)で捉えられる信号で、課題で間違えた直後に現れる「誤り処理(エラー処理)」の早い段階の反応だと考えられています。
そこで研究チームは、サウサンプトン大学の学部生144人を対象にある課題を与え、同時にEEGで脳活動を記録しました。
課題後に、ナルシシズムの度合いを測定する質問紙に回答しています。
結果はまず基本として明快でした。
参加者が誤答(ミス)したときにはERNがはっきり出て、正答のときより強くなりました。つまり、この課題と計測は「ミスに対する脳の反応」をきちんと捉えられていました。
そして本題です。
誇大型ナルシシズムの得点が高い人ほど、ERNが鈍く(負の振れが小さく)なる傾向が見られました。
言い換えると、ミスをした直後の「まずい」という脳のアラームが弱い可能性がある、ということです。
では、誇大型ナルシシズムとは具体的にどのようなタイプのナルシシズムなのでしょうか?
誇大型ナルシシズムとは何か?
誇大型ナルシシズム(grandiose narcissism)とは、自分を特別で優れた存在だと強く感じ、他者からの賞賛や注目を積極的に求めるパーソナリティ特性です。
主な特徴は次の通りです。
・強い自信と自己評価の高さ
・外向的で目立ちたがり
・地位や成功への強い関心
・批判を軽視、あるいは退けやすい
・自己主張が強く、主導権を握ろうとする
周囲からは「カリスマ的」「リーダー気質」「堂々としている」と見られることもあります。
一方で、共感性が低くなりやすく、他者より自分の利益を優先しやすい傾向も指摘されています。
心理学研究では、誇大型ナルシシズムはさらに
・賞賛(Admiration):魅力的に見られたい、称賛されたい側面
・対抗(Rivalry):他者を押しのけ優位に立とうとする側面
に分けて測定されることがあります。
脆弱型ナルシシズムとは何か?
これに対して、脆弱型ナルシシズム(vulnerable narcissism)というタイプもあります。
こちらは、一見すると自信がなさそうに見えるタイプのナルシシズムです。
主な特徴は次の通りです。
・内面的には特別視を求めている
・批判に非常に敏感
・傷つきやすく、防衛的
・不安や劣等感が強い
・対人場面で引きこもりがちになることもある
誇大型が「堂々と自己を誇示するタイプ」だとすれば、脆弱型は「自分は特別であるはずなのに理解されないと感じて傷つくタイプ」と言えます。
ミスへの「感じ方」ではなく「検知の強さ」が分かれ道かも
ミスをしたとき、私たちの中でまず起きるのは反省会ではなく、もっと短い時間スケールの脳の信号です。
その“最初のアラーム”が小さい人ほど、誇大型ナルシシズムの傾向が強いかもしれない。今回の研究は、そんな見取り図を示しました。
もし身近に「失敗しても平気そうで、なかなか修正しない人」がいると、そこには脳内の情報処理のクセが潜んでいる可能性があります。
そして、その人には誇大型ナルシシズムの特性があるのかもしれません。
参考文献
Grandiose narcissists tend to show reduced neural sensitivity to errors
https://www.psypost.org/grandiose-narcissists-tend-to-show-reduced-neural-sensitivity-to-errors/
元論文
Narcissism Is Associated With Blunted Error-Related Brain Activity
https://doi.org/10.1111/jopy.70036
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

