小が大を呑み込むM&Aに成功した試しはない――。
予想通り、2月8日投開票の衆院選で立憲民主党と公明党が結成した『中道改革連合』は壊滅的大敗北。ただし、負けて議席を失ったのは旧立憲民主党系ばかり。反対に旧公明党系は公示前より4議席増加した。
かくてオールドメディアはどうやら最後の「護憲左翼」の希望を創価学会=公明党に託すハラのようだ。
「そもそも、中道は消費税減税が既定路線だったわけではありません。基本政策にしたのは『中道』路線などで、どの世論調査でも有権者の4分の1は消費税現状維持、つまり減税反対です。経済学者にアンケートすれば、8割強が減税反対。形式的に“大勝”した旧公明党系の中道と参議院の公明党は、すでに高市政権と対立関係にあります。消費税問題が“公明VS高市”の争点になるでしょう」とは、ネットメディアで選挙活動を引き受けた関係者の冷静な見識である。
高市早苗首相は「消費税議論は超党派で行う国民会議でやりましょう」と呼びかけているのだが、その場で俎上に載るのは、当然ながら財源論である。
そこで永田町に出回っているのが、「宗教法人に課税すれば、消費税減税分は回せる」という話だ。
この財源論の根拠となる「課税額調査」は、故・北野弘久日本大学法学部教授という税制のエキスパートの協力を得て、筆者が記事化したものが嚆矢である。25年以上前(消費税5%)のこの試算時と現在とでは消費税率が異なるなど、前提条件は違う。
「国税は宗教法人の営利部門をメインターゲットで税務調査に入りましたが、現在は法人も個人もマイナンバーから追跡できるシステムです。地方税=都道府県市町村データと国税データの付け合わせもデジタル化されている。教主など宗教法人トップの個人資産も掌握できます。あとは政治的に止まっている金融機関データとの連携が始まれば、もはや宗教の名の下の資産隠しは不可能になるでしょうね」(国税担当記者)
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マイナンバーで宗教法人トップらの資産も把握
二十数年前の、それこそ粗っぽい調査で出てきた数字は、「日本の宗教法人に課税すると税収は5~7兆円相当」。これは食品減税を行う穴に見合う額である。
他方、マイナンバーでの宗教法人及び教団トップらの資産を把握する外堀は埋まっている。つまり、創価学会を支持母体とする中道の旧公明党系当選議員や参院公明党は、連立離脱→中道大敗北でうかうかしているヒマなどないのだ。
「散々、『政治とカネ』を問題視し、旧統一教会と自民党議員の『癒着』をあげつらった面々へ強烈なしっぺ返しができ得る議席数(316議席)を高市自民党は獲得した。ならば、宗教法人に課税しましょうという展開に、公明系は反対できない。下手を打つと彼らも課税の俎上に載るかもしれない。宗教組織票に辟易している有権者の感覚が、公明党と手を切った自民党への投票となったわけです。折しも3月4日には、旧統一教会への解散命令可否判断が東京高裁で下ります。恐らくは解散可の判断でしょう。これも追い風になる」
宗教問題を数多く手掛ける知己の弁護士は、そう見立てる。無論、とりわけ自民党参院議員が神社本庁や霊友会の強固な支援を受けてきたゆえ「宗教法人には手をつけまい」とする主張はある。
とはいえ、実際の宗教票の効力については疑問だらけだ。麻生太郎党副総裁をはじめ、学会嫌いは自民党内のあちこちにいる。
オールドメディアが触れないのは、今回の自民党候補者たちは「創価学会票なしで、あるいは彼らを敵に回しても勝利し、議席を獲得した」という事実だ。
しかも、小選挙区から旧公明党は候補者を立てなかったわけで、自民党員は余計な労力が不必要だった。仮にこのパターンが旧公明党系で続くなら、自民党候補者は創価学会に遠慮なしの選挙活動が可能となる。
創価学会票恐るるに足らず
「1小選挙区に1~2万の学会票があって、その帰趨如何では勝敗ラインが変わる――それで、中道勝利まで予想したジャーナリストや選挙アナリストなどの信憑性は失墜した。単純な話、学会票恐るるに足らずを絵に描いた展開と結果です」(学会ウオッチヤー)
中道改革連合がどう名称を変えようと、復活はあり得まい。もちろん、自民党の得票数そのものは岸田政権時代での総選挙とさして違わないから、野党の敗北は国民民主党の“多数自爆小選挙区立候補”にもある。
創価学会総本部のある知己の信濃町関係者も複雑な表情でこう言う。
「実際、消費税議論まで読みきれませんでした。旧公明党系は勝つには勝った。とはいっても、野党のコップの中での話です。これまでのように、自民党へ要求して補助金や給付金を出させるとか、給付などの対象者を広げる方法は不可能になりました。次の参院選まで時間はあります。そこで組織を改編・改革するなりしないと。まずは、公明党の顔をどうするかです。もちろん、自民党の参院議員で良好な関係にある山谷えり子さんは有力候補です」
創価学会にとって武器は学会票であり、急所は財務=カネだとかねてから筆者は述べてきた。
前者の衰えは、もはやスピードが増している。後者は、学会のみならず巨大宗教法人すべてに言えることだが、なまじ中道などという政党を作ったばかりに逆風を正面から受け止めるポジションになってしまった。こと宗教法人課税問題ではそうだ。
「国民会議の議論となるだけでも、学会側は不利。たとえば機関紙『聖教新聞』が宗教紙であるにもかかわらず、一般紙並みの軽減税率(8%)の恩恵を受けているとかブラフだけでも効果はありますよ」(前出・学会ウオッチャー)
選挙で勝った公明党系中道議員を待ち受けるのはイバラの道か。
取材・文/ジャーナリスト・山田直樹
『週刊実話』3月5・12日号より
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