
試合前のアップで極めて珍しい光景。ダービーで宿敵に完敗。指揮官交代のスパーズは今まさに正念場を迎えている【現地発】
「プッシュアップ! プッシュアップ! プシュアープ!(押し上げろ)」
2月22日に行なわれたトッテナム対アーセナルのノースロンドンダービー。前半、トッテナムのイゴール・トゥードル新監督が、テクニカルエリアで大きなジェスチャーを交えながら叫んでいた。
「最終ラインを押し上げろ──」
その指示の先にいたのは、ミッキー・ファン・デ・フェン、ラドゥ・ドラグシンといった、トッテナム最終ラインの面々。しかし選手たちは監督を一瞥しただけで、ラインを押し上げなかった。するとトゥードル監督は、両腕を広げて「なぜ!?」とジェスチャーで示し、天を仰いだ。トッテナムが組織として機能していないことを象徴する場面だった。
宿敵アーセナルとのダービー。この大一番を前に、トッテナム内部は混乱を極めた。
トーマス・フランク体制のトッテナムは、2月10日のニューカッスル戦で0-2の敗戦。降格圏近くまで順位を下げ、試合翌日にデンマーク人指揮官の解任が発表された。その2日後、元ユベントス監督のトゥードルと合意したと報じられ、14日に今シーズン終了までの短期契約で暫定監督に就任したと正式発表された。
しかし、付け焼き刃では首位アーセナルに太刀打ちできない。5-3-2の布陣で守備を固めたものの、試合序盤からアーセナルに圧倒され、防戦一方となった。
ボール保持率はアーセナルが60.1%。シュート数でもアーセナルの20本に対し、トッテナムは6本と大きな差をつけられた。終わってみれば1-4の惨敗。順位も16位と、依然として降格圏をうかがう位置に沈んでいる。
試合後、トゥードル監督は「アーセナルは世界最高のチーム。我々との間に大きな差がある。アーセナルは手に負えなかった」と話した。相手は地元のライバルチーム。監督会見のセオリーであれば、“選手たちは懸命に戦った”“スコアほど差はない”とサポーター心理に配慮する言葉を並べるものだ。だがトゥードル監督は潔く完敗を認めた。それほど両者の力の差は歴然としていた、ということなのだろう。
細部に目を向けると、とりわけアーセナルの右サイドをまったくと言っていいほど止められなかった。
アーセナルの右サイドは、右MFのブカヨ・サカと右SBのユリエン・ティンベル。対するトッテナムは、左ウイングバックのジェド・スペンスと左CBのファン・デ・フェンで迎え撃った。
ところが、スペンスとファン・デ・フェンの間に膨大なスペースがあり、このエリアをサカに徹底的に突かれた。アーセナルの先制点も、この形から生まれている。
スペンスがティンベルのマークで前方に釣り出され、その背後にパスを通される。フリーでボールを受けたサカから、トッテナムは何度もピンチを招いた。この一点を取っても、トッテナムの準備不足は明らかだった。
さらに、ゴール前での「寄せの甘さ」も目立った。4失点すべてで、スコアラーに対するマークと寄せが甘く、DF陣がいとも簡単にシュートを許した。冒頭に記した選手たちによる指示の“無視”も含め、組織面でも個人面でも、今回のノースロンドンダービーはトッテナムの完敗だ。
気になるのは、トッテナムの補強戦略である。
元主将でクラブ史上最多得点者でもあるFWハリー・ケインをバイエルンに売却したのは23年8月。報道によると、移籍金は1億ユーロ(約158億円)に達した。しかし巨額の資金を手にしながら、ケインに匹敵する実力のストライカーは獲得できていない。
24年夏に獲得したドミニク・ソランキはケインほどの決定力はなく、しかも故障ばかり。25年夏にレンタルで迎えたランダル・コロ・ムアニも実力は未知数だ。マティス・テルについても若手有望株の位置づけで、ケインの代役とは言い難い。
さらに25年夏には、ケインの後を継いで主将を務めたソン・フンミンも退団。左ウイングの後継者も定まっていない。24年夏加入のウィルソン・オドベールは、あくまでも若手の位置づけ。左もこなすテルは、やはりソン・フンミンほどの存在感はない。期待値の高いモハメド・クドゥスの主戦場は右サイドだ。
つまりトッテナムは、即戦力補強によってケインとソン・フンミンの穴を埋められておらず、補強プラン自体に大きな疑問符がつく。23年11月からスポーツダイレクターを務めるデンマーク人のヨハン・ランゲ、先月まで共同SDとして活動していたイタリア人のファビオ・パラティチ(現フィオレンティーナ)の責任は重い。今季の低迷は、編成面の迷走も引き金となっている。
今回のノースロンドンダービーで興味深いシーンがあった。試合前のウォームアップ中、トゥードル監督が見守るなか、トッテナムの選手たちはセットプレー時の「守備の立ち位置と守り方」を、実際にボールを使って確認していた。
毎試合、この方法で確認している可能性はあるが、少なくともプレミアでは、ウォームアップ中にセットプレーの守備を実演する光景は極めて珍しい。新監督が守備に強い不安を抱いていることの表われのようにも映った。
トッテナムは今後、3月15日のリバプール戦を除き、フルアム(10位)、クリスタル・パレス(13位)、ノッティンガム・フォレスト(17位)と、いわゆる中堅、下位勢との対戦が続く。立て直しを図り、降格圏から勝点差を広げたいところだが、ここで結果が伴わなければ、トゥードル新体制には一層厳しい視線が注がれるだろう。
トゥードル監督はこう言う。
「真の薬は、自分たちが自分の姿を鏡で見ることだ。我々一人ひとりが鏡を見て、本気で変わる必要がある」
トッテナムが欧州リーグを制したのは25年5月。わずか9か月前の出来事だが、スパーズは今、まさに正念場を迎えている。
取材・文●田嶋コウスケ
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