
「一緒にいるとなんだか疲れる人」はいませんか。
会うたびにどっと消耗し、なぜか体調まで崩れやすくなる相手です。
もしその感覚が単なる気のせいではなく、あなたの“生物学的な年齢”にまで影響しているとしたらどうでしょうか。
米デューク大学(Duke University)による最新研究は、こうした疑問に真正面から挑みました。
テーマは「ネガティブな人間関係は老化を加速させるのか」です。
目次
- ストレスは本当に体を老けさせるのか?
- 老化が1.5%速く進むという衝撃
ストレスは本当に体を老けさせるのか?
これまでの研究で、慢性的なストレスは体にさまざまな悪影響を及ぼすことが分かっています。
炎症の増加や免疫機能の低下、さらには老化の加速です。
研究者たちは、DNAメチル化に基づく「生物学的老化時計」という手法を用いました。
これは、遺伝子の化学的修飾パターンから、その人の“体の年齢”を推定する方法です。
対象となったのは、インディアナ州在住の2300人以上の成人です。
チームはまず、参加者それぞれの社会的ネットワークを調査しました。
そして、日常的に強いストレスや困難をもたらす人物を「ハスラー(hassler)」と定義しました。
過度に敵対的、常に受動攻撃的、あるいは意図的に厄介な態度を取る相手です。
さらに唾液サンプルを採取し、生物学的年齢を測定しました。同時に健康状態や精神的健康についての質問票も実施しています。
つまりこの研究は「主観的に嫌な相手がいる」という話で終わらせず、その影響が体のレベルにまで及ぶのかを検証したのです。
老化が1.5%速く進むという衝撃
結果は明確でした。
参加者は、自分の人間関係のうち平均8.1%を「ハスラー」と認識していました。
全体の28.8%が少なくとも1人、10%は2人以上の有害な人物がいると報告しています。
分析の結果、ハスラーが1人増えるごとに、老化の進行が1.5%速くなることが示されました。
実際、有害な人物がいる人は、同じ実年齢でそうした相手がいない人よりも、生物学的年齢が平均で約9カ月高かったのです。
さらに興味深いのは、影響の強さの違いです。
有害な家族や友人は、有害な配偶者よりも老化への影響が強い傾向が見られました。
研究者は、結婚がもたらす孤独感の軽減などのポジティブな側面が、悪影響を一部緩和している可能性を指摘しています。
また、有害な人がいることは老化指標だけでなく、炎症レベルの上昇とも関連していました。
つまり「なんとなく疲れる」という感覚は、単なる気分の問題ではなく、体内で測定可能な変化として現れていたのです。
ハスラーとの付き合いをやめる勇気を
私たちはアンチエイジングのために運動や食事に気を配ります。
しかし今回の研究は、人間関係そのものが老化速度に影響しうることを示しました。
支え合い、安心できる関係は健康を守ります。
一方で、慢性的なストレスをもたらす関係は、静かに体を老けさせていく可能性があります。
もちろん、この研究は関連性を示したものであり、すべての人間関係を単純に切り捨てるべきだと結論づけるものではありません。
それでも「一緒にいると消耗する相手」が自分の体にどのような影響を与えているのかを見直すきっかけにはなるはずです。
参考文献
Toxic People Make Us Age Faster
https://www.psychologytoday.com/us/blog/the-asymmetric-brain/202602/toxic-people-makes-us-age-faster
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

