
大事なボス戦の最中に、突然の尿意。
「一時停止してトイレに行くべきか、それともこのまま戦うべきか」と葛藤した経験はありませんか。
実はこの“我慢”が、あなたのゲームプレイをわずかに向上させている可能性があります。
オランダ・トウェンテ大学(Universiteit Twente)の先行研究(Psychological Science)で、「膀胱をコントロールしている状態が衝動的な選択を減らす」という意外な結果を報告しているのです。
つまり、オシッコを我慢している状態が、衝動的な意思決定を減らし、ゲームのプレイ向上につながる可能性が指摘されているのです。
目次
- 膀胱のコントロールが「自己制御」に波及する?
- なぜ「我慢」が判断力を高めるのか?
膀胱のコントロールが「自己制御」に波及する?
この研究の出発点は、「身体の欲求は私たちの判断をどう変えるのか」という問いでした。
空腹や性的興奮は衝動性を高めることが知られていますが、逆に“抑える”必要がある欲求はどうなのでしょうか。
研究チームは「抑制のスピルオーバー効果(Inhibitory Spillover)」という仮説を立てました。
これは、ある抑制行動が別の抑制行動にも波及するという考え方です。
実験では、参加者に約700~750ミリリットルの水を飲んでもらい、約40分待機させました。
これは水が膀胱に達する時間です。
その後、「明日16ドルをもらう」か「35日後に30ドルをもらう」かといった、即時小報酬と遅延大報酬のどちらを選ぶかという課題を行いました。
結果は明確でした。
膀胱がより満たされていた参加者ほど、将来の大きな報酬を選ぶ傾向が強かったのです。
つまり、目先の誘惑に飛びつかず、より合理的で長期的な判断をしていたのです。
さらに、排尿に関連する言葉を意識させるだけでも、同様に衝動性が低下する傾向が確認されました。
なぜ「我慢」が判断力を高めるのか?
今回の研究では、膀胱を我慢している状態では、衝動抑制が強化されていました。
研究者らは、排尿の抑制が比較的自動的で無意識的な制御過程であり、抑制に関わる神経ネットワークを活性化する可能性があると示唆しています。
では、これがゲームにどう関係するのでしょうか。
多くのビデオゲームでは、衝動的な操作よりも「待つ」「冷静に判断する」「長期的に有利な選択をする」ことが勝敗を分けます。
焦って突っ込むより、タイミングを見極めるほうが強い場面は多いはずです。
もし膀胱を我慢していることで衝動性が低下するなら、結果として「落ち着いたプレイ」がしやすくなる可能性があります。
もちろん、反応速度が上がるという意味ではありません。
しかし、短期的な誘惑に流されにくくなることで、戦略的判断が安定する可能性は考えられます。
オシッコは我慢すべき?
ここで重要なのは、「オシッコを我慢すればゲームが劇的に上手くなる」という話ではないことです。
研究が示したのは、尿意という身体的抑制状態が、意思決定の衝動性をわずかに下げる可能性があるという点です。
健康面から考えれば、長時間の我慢は推奨されません。
しかし、ボス戦直前に「ちょっと我慢している」状態なら、あなたはいつもより冷静かもしれません。
参考文献
Having to pee makes you scientifically better at video games
https://www.popsci.com/science/having-to-pee-makes-you-better-at-video-games-weirdest-thing-podcast/
Full Bladder, Better Decisions? Controlling Your Bladder Decreases Impulsive Choices
https://www.psychologicalscience.org/news/releases/full-bladder-better-decisions-controlling-your-bladder-decreases-impulsive-choices.html
元論文
Inhibitory spillover: increased urination urgency facilitates impulse control in unrelated domains
https://doi.org/10.1177/0956797611404901
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

